戸松遥|アスナと一緒に戦う歌

もっと楽しい歌になる

──ご自身で作詞した曲のレコーディングは、いつもと違いました?

違いました、違いました。うん、違いましたね。

──3回言うほど違ったんですね(笑)。

例えばスフィアでの作詞は部分的なものだったし、みんなで書いたという感覚だったのでそこまで気恥ずかしさは感じなかったんですよ。でも「ラスタート」はものすごく恥ずかしくて、「ひえええ、私が書いた歌詞を歌ってる」「自分で歌うとこうなるんだ!?」みたいになって、どうやって感情を乗せたらいいかわからなかったんです。

──戸松さんって、意外と照れ屋ですもんね。

戸松遥

そうなんです。しかも、もともと最初はキーが合わなかったので半音上げるところから始まって、さらに「ラスタート」には仮歌がなかったので、譜割りとかも当日ディレクターさんと相談しながら決めていったんです。だからある意味で自由度が高いというか、自分で一から構築していく感じのレコーディングでもあったんですけど、ようやく譜割りやリズムがつかめてきて「あ、歌として成り立ってきたかな」と思ったところで、レコーディングが終わっちゃったんですよ。

──そこでディレクターさんからOKが出たということ?

そう。ディレクターさんは私に集中力がないことも、粘りすぎてもよくないこともよく知っているので、正しい判断ではあるんです。でも、私としては不完全燃焼というか消化不良というか……たぶん自分で作詞した影響もあったんでしょうけど、ディレクターさんに「今のだと私、仮歌さんみたいじゃないですか?」「この歌はもっと楽しい歌になると思います」と言い張って。そしたら「じゃあわかった。つるっとオケ流すから、通して歌ってー」と。

──雑に扱われてません? 大丈夫ですか?

大丈夫です(笑)。もう10年一緒にやっているディレクターさんだし、そういうときのほうがいいテイクが録れることが多いので。結果、この「ラスタート」も「こっちのほうが全然いいじゃん!」と言ってもらえました。

──おおー。実際にとてもナチュラルで柔らかい歌声ですよね。「Resolution」が緊張感のある歌だっただけに、ホッとします。

「Resolution」はアスナの気持ちを戸松遥が背負っている感じの表現の仕方だったんですけど、「ラスタート」は自分の気持ちを自分の言葉で表現しているので、なんというか、日記を読んでいるような……いや、日記書いたことないんですけど。

──ないんですか(笑)。

あと、それこそ「色彩日記」の作詞をしてくださった古屋さんには、ほかにも私の気持ちを代弁するかのような歌詞をたくさん書いていただいているんですけど、それらと比較しても歌うときの感覚がまったく違っていて。「ラスタート」は一番、素の戸松で歌ったかもしれません。そこに少し気恥ずかしさもあったんですけど、また1つ新しい経験ができました。

戸松遥(30)の初お披露目はスフィアの全曲ライブで

──戸松さんも30歳というのを1つの区切りとして意識されているんですか?

正直、ことさら強くは意識してないんですよ。少なくとも20代が名残惜しいという感覚はなくて、むしろ30歳になったほうが楽だろうなと思うんです。私の同級生もみんな、29歳のほうが「うぇーい、あと1年で20代終了!」とか言われてつらいって(笑)。

──ああー。

それが「20代最後の年を、悔いの残らないように過ごさなきゃ」みたいなプレッシャーになることもあるし。あと、人に年齢を聞かれて「29歳です」と答えると、まだ20代であることをアピールしているように受け取られてしまう場合もあって。「はいはい、ギリ20代ね。わかったわかった」みたいな(笑)。でも30歳を迎えれば、自動的に30代の中の最年少になるわけだし、潔く自分の年齢と向き合えるんじゃないかなって。なのでさっきも言ったように、自分がどんな“30代・女性”になるのかけっこう楽しみなんですよ。

──さて、今年もぼちぼち終わろうとしていますが、年内の戸松遥としての発表は?

少なくとも音源のリリースはないです。これでまた出したら“20代終わる終わる詐欺”になっちゃう(笑)。

──そうでした(笑)。

でもスフィアとしては、年明けになりますけど2月15日と16日の2日間にわたって全曲ライブ「LAWSON presents Sphere 10th anniversary Live 2020 “スフィアだよ!全曲集合!!”」があります。

──ということは、その初日のステージが30歳の戸松さんの初お披露目に?

そうだそうだ。ライブの日程はスフィアの結成日である2月15日に合わせているのでたまたまなんですけど、この日、戸松遥(30)として初めて皆さんとお会いできると思います。

──今年はそのスフィアの10周年イヤーということもありお忙しかったと思いますが、戸松遥としての活動も両立されていますね。

ありがたいですね、ホントに。すでに「Resolution」はスフィアのツアーで歌わせてもらっていて。初披露の日はまだアニメのオープニングで1回流れたぐらいのタイミングだったので、フル尺で聴いてもらうのも初めてだったんですよ。だからすごく緊張したんですけど、皆さんが盛り上げてくださって感激しました。やっぱり新曲を初披露するときの景色って一度きりしか見られないので、これからもそういう景色をたくさん見るためにも、30歳になっても引き続き全力でがんばります!

戸松遥