戸松遥|愛知県出身、戸松が歌う名古屋愛あふれるアニメ「八十亀ちゃんかんさつにっき」主題歌

「とっきんとっきん」のハートでグッサリいく

──1番サビの最後の1行「冷たくされたらCHIN-CHICO-CHINの魔法をかけるから」の「CHIN-CHICO-CHIN」は、アニメ「八十亀ちゃん」の第1話で登場した「ちんちん」という名古屋弁のバリエーションですか?

はい。「ちんちん」と「ちんちこちん」はどちらも「すごく熱い」という意味の方言なんですけど、「ちんちこちん」は長いのであんまり言わないですね。

──「ちんちん」は若い人も使うんですか?

いや、やっぱり若い人が使うとちょっと笑われます。意味は全然通じるんですけど、私たちの親世代が使う古い言葉になりつつあるので。逆に言うと私の親は今でも使ってますね。ちなみにうちは少数派の「ちんちこちん」派だったので「それちんちこちんだから触っちゃいかん!」みたいな。

──2番サビの「ヨソ見はダメだよTOK-KIN-TOKIN ハートで射ち抜いて」とラスサビの「遠く離れてもYAT-TO-KAME 再会の合言葉」のローマ字部分も名古屋弁ですか?

LINEスタンプ「戸松遥のスタンプ」より。

そうです。「とっきんとっきん」は「すっごい尖ってる」という意味で、「とっきんとっきんの鉛筆」みたいに使いますね。これは私もめっちゃ使うんですけど、東京では絶対に通じないとわかってるので言うのは控えてるんですよ。心の中では「とっきんとっきんだなあ」って思いつつ。ただ、LINEスタンプを作って地味に広めようともしています。

──なるほど、めっちゃ尖ってますね。

だから「TOK-KIN-TOKIN ハートで射ち抜いて」という歌詞は、こういう鋭利なハートでグッサリいくっていう、安藤先生の遊び心ですね(笑)。

──擬態語の名古屋弁って、ほかにもあります?

東京で通じなくてけっこうショックだったのが、「しゃびしゃび」ですね。

──しゃびしゃび?

「薄い」とか「水っぽい」という意味で、「しゃびしゃびな味噌汁」とか「しゃびしゃびのカレー」みたいに言うんですよ。

──「ちんちこちん」や「とっきんとっきん」に比べればギリギリ通じそうな気もしますけどね。「やっとかめ」は?

「ひさしぶり」という意味ですね。八十亀ちゃんの名前の由来になっている方言なんですけど、これも80歳オーバーの方しか使わない言葉で、昔おじいちゃんに言われたときに「え?」ってなりました(笑)。

私にとっての名古屋の味

──2番の歌詞では「水族館のシャチ」「動物園のコアラ」「星が見える科学館」「オモチャ箱の遊園地」と、名古屋の観光スポットと思しき場所が出てきますね。「水族館」は、名古屋港水族館のこと?

戸松遥

そうですそうです。日本の水族館でシャチがいるのは、名古屋港水族館と千葉県の鴨川シーワールドだけらしいんですよ。あと「動物園のコアラ」は東山動植物園でしょうね。最近はコアラよりも“イケメンゴリラ”のシャバーニくんが有名ですけど。「星が見える科学館」は世界最大のプラネタリウムがある名古屋市科学館で、「オモチャ箱の遊園地」はレゴランド・ジャパンだと思います。

──同時に名古屋めしも隠されていますよね。「HITS! まぶしい STAR☆」は「ひつまぶし」ですし。

よくお気付きで(笑)。そういう言葉遊びになっている部分、例えば「A→B Flying↑↑」と「想いってば先回り」も、歌うときは「エビフライ」と「手羽先」に聞こえるように意識しましたね。

──「ギュッと抱きしめ」は「きしめん」?

そうか! そこは見落としてましたね。「なごやかに進め WILL ROAD」の「ういろう」には気付いたんですけど。

──うまいこと言葉をハメますよね。「なごやかに進め」も……。

そう、「“なごや”かに」ね。ホントに隙あらば名古屋ワードを詰め込んでいくスタイルで(笑)。

──ちなみに戸松さんは数ある名古屋めしの中で何が一番お好きですか?

うーん……ここはやはり王道で、そして昨日も食べたこともあって、矢場とんの味噌カツですね。カツが味噌ダレにズブズブに浸かって全然サクサクしてなくて、ほとんど味噌の味しかしないんですけど、それがおいしいんです。矢場とんは愛知では知らない人はいないと言われていて、東京でも銀座と東京駅に店舗を出しているので、ぜひ食べていただきたいですね。

──へええ。覚えておきます。

ツアーで名古屋に行ったときも帰りの新幹線で矢場とんのお弁当を食べることが多くて、お弁当では味噌ダレが別の容器に入ってるんですけど、その量が尋常じゃなくて。でも、カツはもちろんキャベツもひったひたになるぐらいビッシャーって味噌ダレをかけるんです。そうじゃないと矢場とんじゃないんですよ。

──ご飯が進みそうですね。

そうそう。カツより先にご飯がなくなっちゃうくらい進みます。私も地元を離れて東京に来てから気付いたんですけど、この赤味噌ベースの濃くて甘辛な味が、名古屋の味なんだなと思いますね。