THE YELLOW MONKEY新作「Sparkle X」に秘めた遊び心と真摯な思い、音楽系動画クリエイターみのが解き明かす (2/3)

やっと俺のすごさが言語化されただろ

──収録曲の中でもめっちゃオモロいな、と思ったのが「ラプソディ」なんですよ。この曲は小学生的な下ネタというか、一見キャッチーでポップな内容ですけど、吉井さんの状況もかなり投影されているのかなと。この歌詞はいかがですか?

吉井 歌詞は正直悩んだんですよ。治療中で歌も歌えない状況で、キーの設定すらうまくいかなくて。「SHINE ON」もそうなんですけど、イントロやリフがそのまま歌メロになってるんですよね。そうせざるを得ないくらい歌えなかったし、勘でやらないといけなかったから「サビが作れねえ」と悩んでて。そんな時期にカフェでお茶をしていたら、小さい男の子がお母さんに「おっぱい、おっぱい」ってお乳をせがんでたんです。それを見てたら頭の中で「おっぱいおっぱい」が鳴っちゃって。“おっぱい”に限定すると自分にないメロディができるな、と(笑)。それでボイスメモに「おっぱいおっぱい」って……。

吉井和哉(Vo, G)

吉井和哉(Vo, G)

──こっそりと(笑)。

吉井 こっそり録って(笑)。とりあえずこれは使おうと思ったんですけど、さすがに「おっぱい」じゃまずいじゃないですか。平均年齢58歳のバンドが(笑)。それでそのままずっと悩んでたんですが、アルバム制作の最後の最後に「クラリネットの歌(『クラリネットをこわしちゃった』)に出てくる歌詞が確か“オパ”じゃなかったか?」と気付いて、僕の壊れた声帯もクラリネットというモチーフとして辻褄が合い。あと、僕は幼少の頃に親父が早死にしてるんですけど、母親が怒ると仏壇から取り出した親父の喉仏を突き付けて「お父さんに謝れ!」って言うんですよ(笑)。

アニー 笑ってるけど怖いですよね?(笑)

ヒーセ めっちゃ怖い(笑)。トラウマになる。

吉井 そのトラウマがあってできましたね(笑)。

──歌詞の入り口は下ネタとして聞けて、クラリネットの歌も入って、吉井さんのご病気のこともあって。あとさらに思ったのは「これ、インポテンツの曲だよな?」と。

吉井 そうです。みんなぼんやり思っていたのを初めてちゃんと言語化してくれた(笑)。

アニー 全部を汲み取ってくれててすごいね(笑)。

──大変な状況をこういうユーモアで乗り切っていこう、みたいな。“ロックの不能”っぽいコンセプトもカッコいいし、めっちゃ痛快な歌詞だなと。

吉井 うれしい! さすがみのさん! 自分の病気をさらけだしながら、さらに上の下ネタにいくっていう(笑)。

──そこもいいなと思って。例えば12歳が聴いても1つ目の下ネタしかわからない(笑)。大人が聴いたら両方わかる。そこがシャレてるなと。

ヒーセ 子供が気に入るような曲調もそうだし、言葉選びも“ママ”とか“パパ”とか、子供が言っているような「柔らかいの」「閉じるの」「震えているの」とか。

廣瀬洋一(B)

廣瀬洋一(B)

吉井 言い回しではアウトな曲になっちゃうから、子供言葉にすることで乗り切って。このインタビューでやっと俺のすごさが言語化されただろ(笑)。

アニー 感動したもん、ホント。

吉井 もう書けないよこれ。この先再発でもしないと(笑)。

ヒーセ 笑えねえ(笑)。

アニー やば(笑)。でもロビン(吉井)は本当に強いよ。

吉井 なったら歌詞にするしかないよ、実際。

今までとは死の捉え方が変わってきた

──「ラプソディ」はユーモラスな部分も含めた吉井さんのリリシストとしての面が垣間見える楽曲ですが、そうなってくるとアルバムを締めくくる「復活の日」。これは真正面から重厚に歌詞を堪能できるリアルな内容ですが、一方でサウンドはロックファンがニヤッとしてしまう瞬間が……(笑)。

吉井 これはヒーセとアニーが語ってください(笑)。

──こういうネタは誰か1人が発信するわけではなく、みんなでやる感じですか?

ヒーセ まあ、デモ音源の状態で「その方向でいこう」という提示を感じられたので「そっちの路線ね」と(笑)。今までのTHE YELLOW MONKEYではこういうアンセム的なことはやってそうでやっていなくて。でも僕らのルーツには確実にある。それを形にするにあたってのドラムの音色とか、ダブルトラッキング?

アニー そう。途中のブレイクで出てくるね。

ヒーセ そういうのも今までやってないっちゃないしね。

アニー いろんなリズムアレンジの仕方はあると思うんですけど、デモが素晴らしかったのでそれを崩したくないなと。あと最初の「ドーン、タン」っていうのをドラムでやるのか? 足踏みでやるのか?みたいな(笑)。でも足踏みでやっちゃうと寄りすぎちゃうしね。

菊地英二(Dr)

菊地英二(Dr)

吉井 デモでは生ドラムを使って。「これをアニーのうまいプレイでやってね」と。

アニー 元のやつもよかったけどね。

ヒーセ タイトルも最初から「復活の日」だった。仮タイトルの曲も数曲あったんだけど。

吉井 なんなら冒頭の「Wow Wow」はデモのままですしね。

ヒーセ あっ、そうだよね!

──あそこの答え合わせをしてもいいですか? デヴィッド・ボウイの「Sons of the Silent Age」?

吉井 そうですね(笑)。

一同 ははは。

──1問目正解(笑)。あれも7拍子になるんですよね。そこのひねり!

アニー そうそう! さすがだな。

──(笑)。アルバム全体でも「復活の日」がハイライトになるのかなと思うんですが、この歌詞を書いた経緯はどういう感じですか?

吉井 この曲は「ラプソディ」と同時進行くらいで歌詞を書いていて……それもどうかと思うんだけど(笑)。「復活の日」というタイトルがまずあって、そこからメンバーが素晴らしい演奏で曲を仕上げてくれたところで、うちのスタッフが「この曲は東京ドームで流すべきだ」と。歌詞ができていなくてもいい曲になる予感がしたんでしょうね。「ドームで5万人が聴いてくれるならみんなで復活したい」という気持ちで書いたらこういう内容になりました。あと、同時期にいろんな同世代のアーティストが亡くなったり、僕の知っている人もコロナで急に亡くなったりして、今までとは死の捉え方が変わってきたからそれも書いてみたいという感じですね。

2024年6月7日更新