THE YELLOW MONKEY|4人が語る2019年のTHE YELLOW MONKEY

“バンドのグルーヴ”を再確認

──「9999」のアンサンブルはすごくシンプルだし、音数が少なくて、1つひとつの音が太い。日本のバンドは音数を増やして、緻密に構築することが多いですが、そこはかなり違いますね。

吉井 (日本のバンドは)日本の風土に合ってるから、いいと思うけどね。

アニー もともと自分たちが好きだった音楽も、そういう、音数が少なくて骨太な欧米のロックだから。そういう音は、自信と強さがないと出せないと思うんですよ。

ヒーセ うん。

アニー 自分の丸裸のグルーヴを押し出して、それが少しヨレていたとしても、「カッコいいだろう」と言える強さがないと。再集結からの3年間は、それを得るための時間だったと思うんですよ。

廣瀬洋一(B)

ヒーセ 最初からそこまで確信を持っていたわけではないんですけどね、俺は。アレンジするうえでも、細かいことまでいろいろと考えて、「これはいらないな」と引き算して。ただ、LAに行くときは、ベースは1本しか持って行かなかったんですよ。なんと言っても向こうは本場だし、レンタル楽器の中にもいいものがいっぱいあるって以前行ったNYで経験済みだから、「いざとなったら借りればいいや」と思って。結局、LAのレコーディングでは持っていった自分のベースで全曲弾きました。もちろんアンプのトーンだったり、指弾き、ピック弾きも試したけど、最終的には自分の太い幹の部分を残せたかなと。最初に録った「ALRIGHT」から最新の曲までは3年あるけど、統一感があるというか。もちろん、マスタリングのよさもあるけどね。

吉井 機材の試行錯誤もかなりやりましたね。レコーディングが1つ終わるたびに楽器店に行って、いろいろ試して。それは自分たちの趣味でもあるんだけど、「いったい、いつ音が固まるんだろう?」というのはありましたね。最後に残ったのは一番ベーシックな音だったし、それはロックのベーシックでもあるなと。今ヒーセは「ベース1本でやった」と言ってたけど、次はたぶん、自分の口でベースラインを歌うんじゃない?

ヒーセ ハハハハハ(笑)。

──ギターのダビングも必要最小限ですよね。

エマ なるべくシンプルにやろうと思ってました。音数が少ないほうがグルーヴは強くなるので。今思い出したんですけど、鶴というトリオバンドと一緒にレコーディングしたことがあって。“せーの”で一発録りで、クリックを使ってるのに、ぜんぜん合ってないんです(笑)。でも、聴いてみるとすごくカッコいいし、「やっぱりバンドのグルーヴって、こういうことなんだな」と。

吉井 なるほどね。

菊地英昭(G)

エマ 今回のアルバムのレコーディングでも、すべてクリックに合わせるのではなくて、「ここはドラムに合わせる」「ここはベースに合わせる」「ここではギターに合わせてもらう」という意識でやっていて。そのほうがバンドとしてのカッコよさが強調されるんですよね。

吉井 エンジニアのケニーは裏プロデューサーみたいなところもあって。「我々が恥ずかしいと思っている音は、ファンが聴きたい音なんだ」って言うんですよ。遠慮してズレている音はダサいけど、一生懸命にやってズレてしまった音は宝だと。声がひっくり返っても、ドラムが走っても、それがフックになるんだっていう。実際、ケニーがチョイスした自分の歌は、恥ずかしいところばっかりなんです(笑)。でも、それが魅力なんですよね、実は。考えてみると、自分たちが洋楽を聴いてるときもそうだったんですよ。リズムがヨレてるところとか、間違えてるところが楽しみというか。これまではなかなか「それこそがカッコいいんだ」というところまでは行けなかったけど、これからは楽しんでズレようと思います(笑)。

自分たちがTHE YELLOW MONKEYの新譜を聴きたかった

──再集結以降のライブの影響もありそうですね。

ヒーセ うん、すごくありますね。再集結はまずツアーから始まったし、そこで感じたことは制作にも反映されて。アリーナツアーのあとに「砂の塔」のレコーディングがあって、再レコーディングしたベスト盤(「THE YELLOW MONKEY IS HERE. NEW BEST」)を録って、東京ドーム公演があって。最初にも言ったけど、それぞれのミッションを次のクリエイティブな活動に落とし込めたんですよね。音作りもそうだし、プレイもそうだし。

アニー ライブの規模でいうと、東京ドームの公演はフックになってますね。あのクラスの会場だと、細かいことをやっても伝わらないというか、大きなグルーヴを出さないと説得力がないんです。1音の大切さを痛感したし、それが次の「天道虫」の制作につながって。あの曲のドラムは本当にシンプルですからね。

──吉井さんはどうですか? THE YELLOW MONKEYとしてオーディエンスの前に立つことで、作品に対する影響もあったと思うのですが。

吉井和哉(Vo, G)

吉井 それはもう大変ですよね。パニックですよ。ただ、アルバムを完成させることができたし、「再集結です」と大手を振って言えますからね。気分的、精神的にだいぶ解放されて、パフォーマンスも変わってくるんじゃないかな。やっぱりね、「新しいアルバムを出さないと、再集結とは言えない」という思いはみんな持ってたんですよ。我々も聴きたかったしね、THE YELLOW MONKEYの新譜を。

──だからこそ、納得できるアルバムを作る必要があったと。すごく高いハードルですよね。

吉井 高いですよ。だから言ってるじゃないですか!

一同 ハハハハハ!(笑)

吉井 「何がセルフカバーベストだよ。その曲は知ってるから、早く新譜出せよ」って言われましたから、ファンに。

ヒーセ ロックバンドの一番基本的な活動ですからね。作品を作って、ツアーをやるっていう。先にツアーをやったけど、再集結のパズルを完成させるためには、どうしてもニューアルバムというピースが欠かせなくて。それが完成したわけで、自分たちのテンションも全然違いますよね。