吾妻光良 & The Swinging Boppers×EGO-WRAPPIN'|世代を超えて交流を続ける2組が初対談 (3/3)

21年ぶりに出演したフジロックを振り返って

──今夏の「FUJI ROCK FESTIVAL'25」にはバッパーズもEGO-WRAPPIN'も出演して、現地はもちろん、配信で観覧した人の間でも評判を呼びましたね。

渡辺 フジロックは実に21年ぶりだったんですよ。

吾妻 よくぞメンバーみんな無事に生きて来られたなと。ロックフェスということで、King Crimsonの「クリムゾン・キングの宮殿」をひさびさに演奏しました。

 前にライブであの曲を聴いたときは衝撃でした。すごい曲をカバーしはるなーと。

渡辺 あの曲は、井出靖さんがプロデュースした「アンファン 2」(1987年)というオムニバスアルバムに参加したときにカバーしたんだよね。

吾妻 当時はまだ頭が柔らかかったんだろうな(笑)。我々もロックフェスやジャズのメッカであるブルーノートさんにも呼んでいただけたりするようになり、多少はファン層が広がったのかな。

左から渡辺康蔵、吾妻光良。

左から渡辺康蔵、吾妻光良。

渡辺 最近、若いお客さんが増えてきたのは喜ばしいね。EGO-WRAPPIN'は我々より若いから、お客さんもまだまだ元気だよね。

 特に野音のライブは飲んで踊って、楽しく観てくれてる人たちが多いですね。

──野音の売店は、EGO-WRAPPIN'の日はいつもより大量にアルコールを用意しているという都市伝説もあります(笑)。

吾妻 それは頼もしい(笑)。EGOさんは演奏中はたしなまないの?

中納 飲まないですね、誰も。

渡辺 普通はそうだよ(笑)。

中納 吾妻さんは、お酒を飲んで、よく声があれだけ出るなあと感心します。

吾妻 フジロックでもあんまり暑いのでワインを少したしなみましたが、酒より猛暑のほうが体に堪えたね。

渡辺 今年のフジロックの出演者の中では俺たち高齢だったけど、山下達郎さんは歳上だし、佐野元春さんは吾妻と同い歳なんだよね。

吾妻 でも、俺は会社勤めを終えて“プロ入り宣言”したのが2021年だから(笑)。プロフェッショナルな音楽家としてはEGOのほうが大先輩ですよ。

 とんでもないです(笑)。“プロ入り宣言”して何か変わりました?

吾妻 “プロ”になってからはライブにペンを必携するようになりましたね。大切なことをメモする知恵をつけました(笑)。

左から渡辺康蔵、吾妻光良、中納良恵、森雅樹。

左から渡辺康蔵、吾妻光良、中納良恵、森雅樹。

みんなで集まって、せーので音を出すのが何より気持ちいい

 バッパーズの楽屋にカメラを置いてみたら、めっちゃ面白いと思いますよ。メンバーそれぞれの動きとか個性的で。それをうまくまとめているのが吾妻さんだということがわかる。

吾妻 EGOはバンドのまとめ役は?

中納 森くんやな。

 そうなるんかな。

中納 森くんはリズムがすごく気になるみたいで、ドラムの指示とかめっちゃ細かい。私は鍵盤のほうが気になるんですけどね。

吾妻 曲をこういう感じにしようというのは2人の中である程度イメージができているんですか?

 そうですね。

森雅樹

森雅樹

吾妻 うちはとにかく合奏してみないとどうなるか分からない。演奏してみたら「なんだ、これ?」とかよくあるから。

渡辺 「このアレンジじゃ音が出ないよ」とか昔はよくあったな。

 メンバー12人ともなるとスケジュールを合わせるのも大変ですよね。

吾妻 大変です。大丈夫なのか、渋公は?

渡辺 うちはリハーサルも本番の日にするだけだからね。

吾妻 今、渋公のリハーサルができるかできないかが風前の灯火になってる。

渡辺 まだ1日しかリハーサルのスケジュールが取れてないんだよね。

吾妻 私を含め会社勤めを卒業したメンバーもいますが、まだ仕事が忙しい人もいるので。メンバーのスケジュール調整は私が担っていて、こう見えて事務処理は得意なんですよ。

渡辺 ツアースケジュールは“吾妻ツアーズ”にお任せだから。

 “吾妻ツアーズ”は打ち上げの手配とかすべてされているんですか?

渡辺 そう。予算をとことん切り詰めることでおなじみの“吾妻ツアーズ”なんで(笑)。打ち上げも昔からメンバー全員同じものを食べて割り勘にするのが習わし。

渡辺康蔵

渡辺康蔵

吾妻 バンドの統率とガバナンスを考えているんです(笑)。最近はライブの本数も増えて、情報伝達が行き届いていないという不満の声も。

渡辺 広島のフェスで山道をバスで1時間も揺られてホテルに着いたとき、宿の隣が老人ホームでさ(笑)。

吾妻 こっちに入れられるんじゃないかって皆がおびえた(笑)。そんなところでも打ち上げの店だけはきっちり押さえている(笑)。

中納 何度かバッパーズの打ち上げにご一緒しましたけど、人数が多いバンドならではの楽しさがありますよね。

 そういえば僕は以前、地元の友達の飲み屋を手伝っていたんですけど、そのお店に吾妻さんとドラムの岡地曙裕さんが飲みに来てくれたことがありましたね。吾妻さんに書いてもらった店の壁のサインは、店がなくなった今も大切に保管してあります。

吾妻 まあ、なんのためにバンドをやっているのかといえば、8割、9割は打ち上げで飲むためですよね。

──最新アルバムのタイトルを「Sustainable Banquet」=「持続可能な宴会」としたのも説得力があります。

吾妻 1979年の結成から現在に至るまで、ライブのたびに打ち上げで飲んでいるわけですからね。昔も今もライブが一番楽しいんですよ。みんなで集まって、せーので音を出すのが何より気持ちいい。それで45年続いてしまった。

ステージは大きくても、いつものサイズ感で楽しくいきたい

──最後に、LINE CUBE SHIBUYAでの単独公演に向けた意気込みを聞かせてください。

渡辺 ワンマンでは過去最大規模だからね。動員できるかな?

吾妻 塩水に卵が浮くように、現状維持できればと思ってバンド活動してきたんですが、今回はいろんな方々の力添えでホール公演を実現する運びとなりました。ここはEGO-WRAPPIN'さんの力も借りて。

渡辺 百戦錬磨のライブの覇者に華やかに盛り上げてもらいたい。

中納 バッパーズで歌うのはめちゃめちゃ気持ちいいので今からすごく楽しみです。

吾妻 あと、LINE CUBE SHIBUYAはお酒が売ってないようなので、「お客さんは先に飲んできてください」と書いておいてください(笑)。

渡辺 かつては渋谷公会堂から日本武道館というのがメジャーのアーティスト道だったね。

吾妻 我々はそれを目指さなくてもいいのが楽だね(笑)。当日は、よっちゃんのような歌姫がステージから下りたあとの草木も生えないような寂しさを補う演出とか考えたほうがいいのかね?

渡辺 EGO-WRAPPIN'のホールツアーでは、ステージに電飾が飾ってあったよね。

吾妻 ウチもカタカナで「アポロシアター」って電飾飾るか?(笑)

渡辺 ヘタに照明に凝っても、俺たち譜面が見えなくなるから、老眼で(笑)。

吾妻 まあ、ステージは大きくても、いつものサイズ感で楽しくいきたいね。

左から中納良恵、渡辺康蔵、吾妻光良、森雅樹。

左から中納良恵、渡辺康蔵、吾妻光良、森雅樹。

公演情報

CLUB QUATTRO presents 吾妻光良 & The Swinging Boppers 45th Anniversary "SPECIAL BANQUET"

2026年1月11日(日)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
OPEN 16:00 / START 17:00 ※途中休憩あり
ゲスト:EGO-WRAPPIN' / 福嶋“タンメン”岩雄 / 藤井康一 / 松竹谷清 / Leyona

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プロフィール

吾妻光良 & The Swinging Boppers(アヅマミツヨシアンドザスウィンギンバッパーズ)

1979年に結成されたジャンプブルースバンド。1983年に1stアルバム「Swing Back with the Swinging Boppers」を発表、以降マイペースながらも9枚のアルバムを発表している。最新アルバムは2024年11月にリリースされた「Sustainable Banquet」。さる7月に開催された「FUJI ROCK FESTIVAL」に21年ぶりに出演して話題を呼んだ。2026年1月11日には東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて、結成45周年を記念したワンマンライブ「CLUB QUATTRO presents 吾妻光良 & The Swinging Boppers 45th Anniversary “SPECIAL BANQUET”」を開催する。

EGO-WRAPPIN'(エゴラッピン)

1996年、中納良恵(Vo)と森雅樹(G)によって大阪で結成。1999年の2ndミニアルバム「SWING FOR JOY」や2000年の3rdミニアルバム「色彩のブルース」、2001年の2ndアルバム「満ち汐のロマンス」などで多様なジャンルを昇華した独自の音楽性を示し、人気を集める。最新アルバムは2019年5月リリースの「Dream Baby Dream」。ライブパフォーマンスにも定評があり、2001年に東京・東京キネマ倶楽部でスタートさせた「Midnight Dejavu」、2012年に東京・日比谷野外大音楽堂で初開催した「Dance Dance Dance」はいずれも恒例イベントとしてファンに定着。2025年7月2日に12inchアナログ「Treasures High / AQUA ROBE」と7inchアナログ「Sunny Side Steady / Sunny Side Dub -Prince Fatty Dubwise-」を同時リリースした。またオダギリジョーの脚本・監督・編集・出演を担った映画「THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE」の主題歌として、新曲「phosphorus」を提供。本作は9月26日より全国で公開される。