高橋枠のオーディション、1人しか来ないから落とせなかった

──今回は高橋さんが作曲した「START!」も収録されていて。スピード感のあるパンキッシュなナンバーですが、これはさわおさんが高橋さんに依頼したんですか？

山中　いや、そんなわけないでしょ。

高橋　ハハハハハ（笑）。

山中　高橋くんに「曲を書いて」なんて言わないよ（笑）。本人が「作曲してみていいですか？」って言うから、「もちろんいいよ。大歓迎」って。ただ、歌詞を書くにあたっては、自分でもよく把握できてない気分とかフィット感みたいなものがあるから、「何曲か出してくれたら、1曲くらいフィットする曲があるかもね」って言っておいたんだよね。でも、1曲しか書いて来ないっていう。

JIRO　ハハハハハ（笑）。

山中　ちゃんと言ったんだけどね。高橋くんは作家としては素人だから、10曲くらい書いてくれたら、1曲くらいは使おうかなって。マネージャーから「1曲しか来てません」って聞いたときは「嘘だろ？」って思ったよ。

高橋　いやいやいや……（笑）。

山中　THE PREDATORSの高橋作曲枠をオーディションで選ぼうと思ってたのに、1人しか来ないから落とせないっていう（笑）。なんなんだよ、この図々しさは。

高橋　限界だったんですよ。1曲だけでリミットに達したみたいで（笑）。自分の曲がCDになるのは初めてだったんですけど、それをさわおさん、JIROさんにやってもらえて。達成感はありますね。

山中　そりゃそうだよ。一流ミュージシャンですから、ハッキリ言って（笑）。

──しかも「START!」ってドラムがすごく目立ちますよね。

高橋　そこを一番に考えてしまったのかも（笑）。

山中　イキイキしてたからね、デモの段階から。ああいうツービートって1度もやったことがないから、ギターもどう弾いていいかわからなかったんだよね。イニシアティブが俺にない感じというか。高橋くんに「こんなのでいいの？」って聞いても、「ウッス。OKッス」しか言わないし（笑）。ただ、JIROくんが曲の印象付けになるフレーズを弾いてくれたし、高橋くんは「ウッス」って言ってるから、これでいいのかなって。

──確かにJIROさんのベースラインによって、THE PREDATORSの曲として成立しているイメージはありますね。

山中　まあ、トリオバンドはそういうもんだよ。ベースが大事。ギターがメロディを弾いちゃうとスカスカになっちゃうしね。ホントは俺もいろいろやりたいんだけどさ、トリオバンドだからコードを弾くことに徹してるんですよ（笑）。

THE PREDATORSではメッセージ性のあるものをリード曲にしたい

──1曲目の「Nightless City」はまさにRamonesを想起させるようなナンバー。作曲はJIROさんですが、曲を作ってたときからRamonesを意識してたんですか？

JIRO　いや、作ったときはそこまでイメージしてなかったですね。僕、わりとこういう感じの曲調を作るんですよ。4曲目の「WALK ON THIS WAY!」もそうですけど、少ないコードのポップなロックンロールみたいな曲が多いので。

山中　今までのアルバムにも、そういうタイプのJIROくんの曲は入ってるよね。

JIRO　そうですね。「Dizzy Life」（1stアルバム「Hunting!!!!」）もそうだし、「SHOOT THE MOON」（2ndアルバム「牙をみせろ」）も。

山中　前作のタイトル曲「Monster in my head」もそうだよね。

──今回のリードトラックを「Nightless City」にしたのはどうしてですか？

山中　いい歌詞が書けたと思ったのかな。例えばもしTHE PREDATORSがサブバンドではなくメインバンドで、毎年シングルを出しているとしたら、いろんな傾向の曲を選ぶと思うんだよ。でも、2～3年ごとに活動ってことになると、ある程度はメッセージ性のあるものをリード曲にしたくなるんだよね。メッセージ性という意味では「START!」も上手く書けたんだけど、高橋くんの曲は絶対リード曲にしたくないから（笑）。

高橋　ハハハハハ！ ヤバいっすね。

──（笑）。さわおさんが「Nightless City」に込めたメッセージ性というのは？

山中　この曲もデモの段階でJIROくんの歌詞が乗ってたんだよ、厳密に言うと。JIROくんの歌詞ではサビが「High voltage」だったんだよ。さっき言ったみたいにもうちょっとピッタリくる言葉を探したんだけど、それが「High society」だったんだよね。そこから「セレブリティをとりまく世界」を書いてみようと思ったのかな。あとね、自分の作詞パターンの1つに「リチャード・コリー方式」というのがあって。Simon & Garfunkelの曲なんだけど、サビのフレーズはずっと同じで、Aメロの歌詞を変えることでストーリーが動いていくっていう歌で。そうすることで、自分が伝えたいメッセージが皮肉も込めてより伝わるっていうのが、面白いなって思ってるので。

──確かに「Nightless City」のサビの歌詞はすべて同じですね。

山中　セレブリティは憧れの存在で、一般の人たちは「不夜城で幻想と踊り続けたいんだ」と思っていて。でも、人間は複雑怪奇だから、どんなに人から羨ましがられるセレブであっても、自殺してしまう人もたくさんいるんですよね。この曲でも華やかなセレブは自殺してしまうんだけど、それでもサビでずっと「憧れの世界に行ってみたい、いつまでもそこにいたい」と歌ってるっていう。まあ、そういうことかな。