ザ・クロマニヨンズが6カ月連続シングルリリースプロジェクトの第6弾となるシングル「ごくつぶし」と、連続シングル全曲を収めたCDアルバム「SIX KICKS ROCK&ROLL」を1月19日に同時リリースした。
音楽ナタリーでは、プロジェクトに合わせた6カ月連続特集「SIX TALKS ROCK&ROLL」として、小野島大による各シングルのレビューと関係者へのインタビューを6カ月連続で展開。そのラストとなる今回はシングルタイトル曲すべてのミュージックビデオを制作したMargt(マーゴ)のArata、Isamuへのインタビューを掲載する。常田大希(King Gnu、millennium parade)が主宰するPERIMETRONのメンバーでもある2人に映像制作を始めたきっかけ、MV制作のプロセス、撮影時に実感したザ・クロマニヨンズの魅力などについて語ってもらった。
取材・文 / 森朋之撮影 / フジイセイヤ
第6弾シングル「ごくつぶし」レビュー
小野島大
6カ月連続でシングルをリリースする前代未聞の企画「SIX KICKS ROCK&ROLL」もいよいよ大団円。大トリ第6弾はこれぞザ・クロマニヨンズというパワフルなロックンロールで締めくくられる。
「ごくつぶし」とは、普段家族からそう言ってなじられている筆者には耳が痛いタイトルだが、「ああ、生まれてよかった」という一節に救われてしまう。これ以上ないほどシンプルで力強いギターリフ、無駄のない曲構成、甲本ヒロトの泥臭く野太いブルースハープ、中域に分厚くエネルギーが固まった録音など、一部の隙もなく完成されたザ・クロマニヨンズ流ロックの真髄だ。
その名もずばりの「イエー! ロックンロール!!」は、彼らにしては珍しく、チャック・ベリー・スタイルのオールドスクールな50's風の曲調。レトロスペクティヴだが決してノスタルジーにならないのは、時代に棹さして走り続ける彼らの意識が常に前を向いているから。そしてロックンロールの本質がエルヴィス・プレスリーやチャック・ベリーの昔から変わっていないという信念の表れでもある。今、日本でこれほど迷いなく、力強く深い確信を持って「ロックンロール!」と叫べるのはザ・クロマニヨンズしかいない。
これで「SIX KICKS ROCK&ROLL」の全12曲がそろった。これら12曲をまとめ、さらにボーナストラック2曲を加えた通算15枚目のCDアルバム「SIX KICKS ROCK&ROLL」も同時発売。2022年は最高の年になりそうである。
なんとなくニューヨークへ
──Margtのお二人は、今回クロマニヨンズが6カ月連続リリースした「ドライブ GO!」「光の魔人」「大空がある」「もぐらとボンゴ」「縄文BABY」「ごくつぶし」のMVすべてを制作しました。6曲すべてのMVを撮ることになったときは、どう思いました?
Isamu めちゃくちゃアガりましたね。
Arata もともと好きだったんですよ。大学時代に金沢のEight Hallでクロマニヨンズのライブを観たことがあって。そのとき一緒に行った友達に今回のMVを手伝ってもらったんですけど、話を持っていったらビックリしてましたね。
Isamu クロマニヨンズのライブを観るのは去年のフジロックが初めてだったんですけど、めちゃくちゃカッコよかった。甲本さんが曲名を叫んでから演奏するのもカッコよくて。
──King Gnuの常田大希さんが主宰するPERIMETRONのメンバーとして音楽シーンの最前線で活躍するMargtですが、クロマニヨンズのファンの中にはお二人のことをよく知らない方もいるかもしれませんので、まずユニットの成り立ちについて聞かせてください。Arataさん、Isamuさんはお二人とも兵庫県出身ですが、学生の頃から知り合いだったんですか?
Arata 共通の友達はいっぱいいたんですけど、直接は知りませんでした。実際に会ったのはお互いに社会人になって、東京に来てから。それで2人の共通の友達だったUCARY & THE VALENTINEのMVを初めてノリで撮らせてもらったんですけど、今観るとクオリティが……。エモい作品ではあるんですけど(笑)。
Isamu 何も知らなかったからね(笑)。
Arata Isamuがカメラ買ったんだっけ?
Isamu そう。パナソニックのGH3を中古で買って。
Arata ロケハンもせず、スケボーで適当に移動しながら、「ここで撮れんじゃね?」みたいな感じで撮影しました。照明も持ってなくて、街灯の下で撮ったり。
Isamu あとは懐中電灯(笑)。
──完全にDIYだったんですね。撮影は独学なんですか?
Arata 俺は完全にそうですね。美大に行ってたから、そこでちょっと勉強したくらいで。東京で出会ったあと、2人でニューヨークに移住したんですけど、Isamuはそこで学校に通ってました。
Isamu ニューヨークフィルムアカデミーに1年間在籍して、撮影の基本なんかを教わりました。
──なるほど。2人でニューヨークに移住したのは、どうしてなんですか?
Arata 就職した会社が合わなくて、すぐ辞めちゃったんですよ。やりたいことがやれそうになくて。あと人の言うことを聞くのがキツかった(笑)。で、ニューヨークでも行くかと。それが2015年かな。
Isamu うん。僕も会社をすぐ辞めちゃって。なぜか「ニューヨークに行きたいんだよね」ってお互い言ってたんですよね。
Arata たまたまなんですけどね。特に目的があったわけではなく、俺は漠然と服が作りたいなと思っていて、1人でミシンを踏みながら、グラフィックや映像も作って。
Isamu 僕も明確な目的はなくて、周りのミュージシャンの知り合いに「映像とかやりたいんだよね」って話してたら、「よくわかんないけど、ニューヨークとか行ってみたら?」と。学生時代に旅行したときも面白い街だなと思ったし、とりあえず行ってみようかなって。
──ブルックリンに住んでたんですよね?
Arata はい。しかもグリーンポイントという、いい立地で。「金はないけどいいところに住む」という芸人魂みたいなもんですね(笑)。家はボロボロだったけど。
Isamu お金なかったよね。
Arata 物価も日本の1.5倍くらいなんで、マジで大変でした。最初は1年半くらい住む予定だったんですけど、それが延びて。そのうち貯金を食いつぶして、親のスネもかじって「これはまずい」という状況になって。その後はバイトしながら作品を作る日々でしたね。Isamuは、映像クリエイターのアシスタントとかもやってて。
Isamu あとは地元のライブハウスに行って、カッコいいなと思ったバンドに話しかけたり、「MV撮らせて」ってメールを送ったりもしてました。ほぼほぼ返事はなかったけどね(笑)。
Arata スポ根的な活動だよね(笑)。駅でいきなり黒人のラッパーに話しかけて、MV撮らせてもらったりもしました。まずは仲よくなるしか方法がなかったので。
──でも、Tempalayの「New York City」のMVなど、ニューヨーク時代からすでにMV制作の活動を始めてますよね?
Arata TempalayのMVを撮ったきっかけは、AAAMYYYなんです。渡米する前から知り合いだったんですけど、彼女がTempalayのサポートをすることになって、SXSWに出演したときに「ニューヨーク行くから遊ぼうよ」って連絡が来て。そのときにメンバーと仲よくなって、MVも撮ることになったんです。
Isamu Tempalayも仲よくなるほうが先でしたね(笑)。
Arata 俺らの仕事、ほぼそういう感じなんですよ。PERIMETRONのメンバーと最初に会ったのは2019年の初めくらいかな? ちょうどその頃、日本に戻っていて新木場STUDIO COAST(現USEN STUDIO COAST)でKing Gnuのライブを観たんじゃなかった?
Isamu 最初はCOASTだったね。
日本に戻り、さらに大きな規模で活動
──日本を拠点にしたのはいつ頃からですか?
Arata 2020年の2月ですね。
Isamu コロナになる直前です。当時はまだ「アジアでひどい風邪が流行ってるらしいね」くらいのテンションだったんで。
Arata 実はビザを5年延期して、もうちょっとニューヨークでがんばるつもりだったんですよ。そのタイミングでPERIMETRONのメンバーから「日本で一緒にやらないか」とオファーをもらって、迷いましたけど、日本に戻ることにしたんです。デカい決断だったけど、いい判断でしたね。
Isamu 絶妙のタイミングだったよね。
Arata うん。そういう運だけはあるんですよ、俺ら。やってることはずっと変わらないんですけどね。
Isamu そう、ニューヨークでやってたことを日本でもやってるだけなので。
Arata 規模は大きくなりましたけどね。ニューヨークにいた頃は、全部2人でやってたんですよ。撮影や編集はもちろん、美術とかスタイリングも。日本に戻ってきて、「え、やってくれる人がいるんですか?」って(笑)。
Isamu 関わってくれる人も増えて。
──これまでのキャリアを生かしつつ、さらに大きい規模で活動がスタートしたと。ちなみにArataさん、Isamuさんが影響や刺激を受けたMVは?
Arata いろいろあるんですけど、まずはThe Chemical Brothersの「Star Guitar」ですね。あとはスパイク・ジョーンズが撮ったAppleのHomePodの映像とか。映像に興味を持ったきっかけは、地元にいた頃、兄貴が見てたMTVかな。Red Hot Chili Peppersとかが流れてて、「気持ち悪いな」と思いながら観てました。
Isamu わかる。子供の頃は気持ち悪いって思ってた(笑)。
Arata 家にマイケル・ジャクソンの「スリラー」のMVのビデオテープもあって。あれ、親父が買ったのかな? 怖いなと思いながら、繰り返し観てました。あとはCANADA(スペイン・バルセロナを拠点にしたディレクター)の作る映像が好きで。
Isamu ちょうどニューヨークに行った頃によく観てたよね。
Arata だから余計に印象に残ってるのかも。
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クロマニヨンズはめっちゃ優しかった