ザ・クロマニヨンズ史上初の試み「SIX KICKS ROCK&ROLL」始動!甲本ヒロトが今の思いを語る

ザ・クロマニヨンズによる6カ月連続シングルリリースプロジェクト「SIX KICKS ROCK&ROLL」が始動。第1弾となるニューシングル「ドライブ GO!」が8月25日にCDとアナログ盤でリリースされた。

2021年7月23日より“出現”15周年イヤーに突入したザ・クロマニヨンズ。「SIX KICKS ROCK&ROLL」は、すべてそろえるとアルバムになるシングルを6カ月連続で発売するというバンド史上初の試みで、第1弾シングルのアナログ盤には6枚のシングルを収納できるBOXが付属している。

音楽ナタリーでは、このプロジェクトに連動した特集「SIX TALKS ROCK&ROLL」を6カ月連続で展開。音楽ライター・小野島大による各シングルのレビューに加えて、ザ・クロマニヨンズにまつわる人物へのインタビューを毎月掲載する。第1弾にはバンドのフロントマン・甲本ヒロト(Vo)が登場。異例の試みの意図を聞きつつ、コロナ禍で以前のように活動できない今の思いを語ってもらった。

取材・文 / 大山卓也撮影 / 森好弘

ザ・クロマニヨンズ「ドライブ GO!」ジャケット

第1弾シングル「ドライブ GO!」レビュー小野島大

イントロ一発でザ・クロマニヨンズとわかる。閃光のようなギターリフ、性急なビート、そしてヒロトの力強いボーカル。「ドライブ GO!」は、一見何の変哲もないシンプルでオーソドックスなロックンロールなのに、ザ・クロマニヨンズ以外ありえない個性が漲っている。「突っ走れ」「ぶっ飛ばせ」を繰り返すだけのリリックがまた最高だ。こんな簡潔な歌詞なのに、「古い地図にはない 新しい道だ」のひと言で、彼らのアティチュードを鮮やかに示している。きっちり3分で終わる潔さにもシビれる。この短い時間にヒロトのブルースハープまで聴ける。ロックンロールのエッセンスが見事に凝縮している。

カップリングの「千円ボウズ」もまた、楽曲のあちこちに「ザ・クロマニヨンズ」というサインが書き込まれているような痛快な曲だ。“「千円ボウズ」ってどういう意味だ?”“なぜ「千円くれ」なんだ?”なんて考えてはいけない。「梅は咲いたか 桜はまだか」という小唄の1フレーズから展開していく言葉の連なりの気持ちよさ、小気味よさにただ身を任せればいい。ライブで観客全員が「千円! 千円!」と大合唱する図が目に浮かぶようではないか。これぞザ・クロマニヨンズである。

6カ月連続でシングルをリリースする「SIX KICKS ROCK&ROLL」の第1弾。このまま最後まで「突っ走れ」「ぶっ飛ばせ」だ。

甲本ヒロトインタビュー

シングル用に作った曲はない

──6カ月連続でシングルをリリースするというアイデアはどこから生まれたんですか?

甲本ヒロト

アイデアというか、僕らはできた曲をレコーディングして発表するだけなんで、そこはいつもと変わりないんです。ただ例年だったらライブ三昧の日々だけど今年はポッカリ空いた時期ができたから、じゃあ発表の仕方を工夫してみようかということになって。

──じゃあレコーディングはいつもと変わらず?

そうです。毎年6月には全曲できあがっていて、その年の秋とか冬に発売するんだけど、今年はそれを夏から出しちゃえっていうだけ。

──でもアルバムを1枚出すのとシングルを6枚出すのはやはり違いますよね。いわゆるシングルらしさみたいなものは意識しましたか?

そういうのはないよ。

──あ、ないんですね。

だって曲を作るときに「これはシングル用」とか思って作るわけじゃないもん。全部できてから「ラジオでかけてもらう曲どれにする?」みたいな感じで決めるだけ。どれでもいいんだ。それに“シングルっぽい曲”ってのも考えたらちょっとおかしな話でさ。そんな基準はないんです。もしもシングルっぽいっていう言葉が、さらっと聴けてなんとなくとっつきやすいもの、という意味で使われているなら、なんかつまらないです。

──曲の良し悪しとはまた別の話ですもんね。

そうそう、そういうことなんです。どの曲もそうだけど、アルバム用に作った曲もないしシングル用に作った曲もないんです。ただ日々できる曲を並列でポンと並べて1枚のアルバムにするだけ。その中からたまたまシングルカットした曲があるだけ。そこはずっと変わんないです。シングル曲が代表曲ってわけでもないしね。

甲本ヒロト
甲本ヒロト

アルバムの曲順の決め方

──第1弾としてリリースした「ドライブ GO!」「千円ボウズ」の2曲はCD盤のアルバムでは1曲目と2曲目になるんですか?

たぶんならないんじゃないかな。わかんない。そこにこだわりはないです。

──発表する順番はそれほど重要じゃない?

なんとなくさらっと決めました。最初からコンセプトがあったりはしない。でも面白いもんで、適当にやってある程度決まってくると「じゃあここはこうしよう」みたいにバランスも取りたくなってくるんだよね。

──普段アルバムの曲順を決めるときもそういう感じですか?

アルバムの曲順はね、最近定着してきたやり方は曲を作った本人たちではなくて、まずコビー(小林勝 / B)とカツジ(桐田勝治 / Dr)に案を出してもらうんです。コビー案とカツジ案を両方もらって僕がiTunesに取り込んでその曲順で聴く。そのあと最初にいいなと思った曲の並びをいくつか固定した状態でシャッフルする。それを聴きながら「うん、これでいいかな」みたいな案を僕が作ります。最後にみんなに聴かせてみんながOKって言ったらそれで決まり。

──マーシー(真島昌利 / G)さんは自分の案を出さないんですか?

甲本ヒロト

マーシーは誰の案でもだいたいOKって言うよ(笑)。

──なるほど。あと細かい話ですけど、いつもアルバム12曲以外に、シングルのB面に1曲入ってますよね。あれもほかの曲と一緒に録ってるんですか?

うん、レコーディング中は全曲同じように作業してます。最終的にアルバム12曲を選んで、1曲シングルB面に持っていく。だからいつも13曲録るんです、最初から。

──アルバムの流れからはみ出す曲がシングルのB面になるということ?

それもあるかもしれないし、基本的にアルバムの曲は僕とマーシーが6曲ずつ持ってくることになってて、シングルも2人の曲を1曲ずつ入れたいから、例えば今回シングルA面が僕の曲になりそうだってときはマーシーに「もう1曲余分に持ってきておいて」と言ってシングルのB面にマーシーの曲を入れる。その逆もあります。「この6曲がアルバムでこの1曲はシングルのB面」って決めるのは曲を持ってきた人です。

──その結果シングルもアルバムも2人の曲が半分ずつになるわけですね。そのバランスは取らなきゃいけないものなんですか?

僕らがバランスを取ってるわけじゃなく、聴く人の中で生まれる自然なバランスに委ねるのが面白いんじゃないかな。そろえるのは数だけです。


2021年9月29日更新