0から100までを作ったものを120に
──「進む」のあとの「Pillow」と「Run」の2曲は全編英語詞ですが、日本語と英語の書き分けはどのように行っているのでしょう?
基本はメロディから作ってますね。僕は歌詞よりも音、メロディ、アレンジを中心に考えて曲作りを始めるのですが、仮歌を作るときに英語で歌うか、日本語で歌うかが自然と決まります。英語じゃないとスムーズに聴こえないメロディもあれば、英語があまりピンとこなくて日本語のほうがハマるメロディもあって。
──曲を作るときに、詞が先にあることはないんですか?
「進む」のように、こういうことを言いたいというテーマがあれば先に歌詞を書くこともありますが、具体的な歌詞が浮かんでそれにメロディを付けることはあまりないですね。でも、「Pillow」ではサビのメロディと同時に英語の歌詞が出てきました。
──「Pillow」は疾走感あふれるアコースティックナンバーですね。
「Pillow」は知り合いのミュージシャンたちと一緒にレコーディングした曲なんです。去年の年末ぐらいから大橋トリオさんのサポートを務めていて、今年の春に4カ月間ツアーをやったときにほかのサポートメンバーと仲よくなって。いつか彼らに僕の曲でも演奏してもらいたいという願いをこの曲で実現できました。いろんなミュージシャンのサポートを務めている人たちなので、すごく刺激になりました。
──一緒にレコーディングされていかがでした?
僕は基本的に曲を作るときは1人で宅録するんですけど、彼らも自分の家で宅録できる環境を持っているミュージシャンたちなので、「自分のパートは自分の家で録ってください」と言って音源を送ってもらったんです。少しずつレコーディングされた音源が集まってくるのが楽しかったですね。
──集まってきたものをTHE CHARM PARKさんが1つにしたと。
はい。今はそれができる時代なんですよね。ミュージシャンが録音する楽器の音って独特で。エンジニアとはまた違う音作りだし、それぞれの好みや人間性が出るのでまとめるのは大変でしたけど、すごく面白い体験でした。
──ミュージシャンたちに何かオーダーを出したんですか?
仮でアレンジした曲のデモを渡して、それを聴いてもらってから自由に作ってもらった感じです。自分で0から100までを作ったものを120まで持っていきたくて、ほかのミュージシャンにお願いしました。120じゃなくて、もっとかもしれないですね。
マニアックなことはやりたくない
──いただいた資料によると8曲目の「Make it Okay」の音作りは「Motown」「90年代ポップ」「ポール」に影響されたとのことですが、この「ポール」というのは……。
ポール・マッカートニーですね。「Make it Okay」ではこの3つの要素がとても自然にまとまりました。異なるジャンルの音楽を合体させることによって、まったく新しいものを生み出したかったんです。サビはアラニス・モリセットとか、1990年代のポップスのコード感で、パーカッションやストリングスが入ってるところはモータウンぽくて、曲のノリにはポールの雰囲気があって。でも意図してそうしたと言うよりは、できあがった曲を聴いてこの3つの影響を感じたんです。なのでパクったわけではないです(笑)。
──そうなんですね。続く「Favorite Songs」のアウトロでは、バークリー音楽大学でギターを専攻していたというTHE CHARM PARKさんの強烈なギターソロを聴くことができます。途中でフェイドアウトしてしまって、個人的にはもっと聴きたかったという気持ちもあるのですが……。
THE CHARM PARKでは 、マニアックなことをあまりやりたくないという思いがあって。マニアックな方向に行こうとしたらいくらでも行けるんですが、誰にとっても聴きやすい、わかりやすい音楽が僕の好きな音楽なので、バランスを常に考えています。でも僕はもともとギタリストなので、思いっ切りギターを弾きたいという気持ちを制限するのもなかなか難しいんです。ギターソロを絶対に入れようと決めて「Favorite Songs」をレコーディングしたら、すごく熱くなってしまって(笑)。音源を聴いたら「これはちょっと違うな」と思って、自己満足な作品にしたくないし、全体のバランスを考えて結局ソロの途中でフェイドアウトさせました。でも、ライブでは思いっ切りギターソロを弾こうと思っています。
──ライブを楽しみにしています! ギターソロがフェイドアウトしたあとには、アルバムのリード曲である「Lost」が「さまよい続けて知らない街へ」という歌詞と共に始まります。この曲には、7年前にアメリカから来日したときのご自身の心情が描かれているのでしょうか?
そうですね。人種も文化も違って言語が通じない場所で、何者でもない自分がどのくらいまっすぐ立つことができるのかを歌っています。日本で暮らす中でつらかったことや、ショックなこともありましたけど、すごくいい経験になっています。
──この曲は最初、英語詞だったんですよね?
はい。最初は英語のほうがスムーズに聴こえるメロディだと考えていたんですけど、日本語で聴いてほしいと思ったんです。日本で活動しているので、このメッセージを伝えたいという言葉があればなるべく日本語で歌いたいですね。
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邦楽と洋楽の間に線はない
- THE CHARM PARK「THE CHARM PARK」
- 2017年11月8日発売 / TOWER RECORDS
-
[CD]
3024円 / TRJC-1070
- 収録曲
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- Lights
- Fly Free
- ディスク
- 進む
- Pillow
- Run
- Starry
- Make it Okay
- Favorite Songs
- Lost
- Dreamers
イベント情報
- THE CHARM PARK GRAND OPEN TOUR -OSAKA-
2017年12月14日(木)大阪府 BananaHall
- THE CHARM PARK GRAND OPEN TOUR -TOKYO-
2017年12月18日(月)東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
- THE CHARM PARK(チャームパーク)
- 韓国・ソウル生まれ、アメリカ・ロサンゼルス育ちのシンガーソングライター・Charmが歌、ソングライティング、演奏をほぼ1人で行うソロプロジェクト。マサチューセッツ州ボストンにあるバークリー音楽大学でギターを専攻したのち来日した彼は、2015年11月に1stミニアルバム「A LETTER」を発表し、叙情的で美しい楽曲とオーガニックかつダイナミックなサウンド、緻密なメロディで注目を集めた。2016年12月リリースの2ndミニアルバム「A REPLY」は、Apple Musicが新人アーティストを毎週1組ピックアップする企画「今週のNEW ARTIST」に選出された。2017年にはメナード「薬用ビューネ」のCMソングを担当し、V6のアルバム「The ONES」に表題曲を提供。同年11月に初のフルアルバム「THE CHARM PARK」をリリースしたのち、12月に東京と大阪でワンマンライブ「THE CHARM PARK GRAND OPEN TOUR」を開催する。自身のソロ活動のほかに大橋トリオのツアーサポートや、南波志帆のサウンドプロデュースなども行っている。