「THE CAMP BOOK」はラインナップがカッコいいフェス
──以前ユアソンが「THE CAMP BOOK」に出演されたのは2018年でしたが、そのときの印象を教えていただけますか。
まずは、家族連れの皆さんがいっぱいいらっしゃって、すごくリラックスした雰囲気のフェスだなあっていうのが現場入りした時の第一印象でした。どうも会場に大学時代の同級生が来ていたらしいんですよ。現場では会えなかったんですけど、家族で来ているってSNSに書いていて。長い時を経て、今同じ空間にいるんだなあと不思議な感慨深さがありましたし、そういうのシンプルにいいな、と。そんな感じで、大人も子供もリラックスしている印象でした。バンドとしても、すごく楽しく演奏できた記憶があります。そんな中、ちょうど僕らの前にトミー・ゲレロが出ていて、演奏を少し袖で見ることができたのもうれしかったです。そういう意味では、ほかの共演者のラインナップが絶妙だったのも楽しかったですよね。あと現場入りして最初に観れたのがeastern youthで。そのライブがめちゃくちゃカッコよくって、自分も「いいライブしたい」って鼓舞されました。素晴らしかったです。
──そういうのって、フェスやイベントならではの相乗効果ですよね。
ひさしく味わっていない感覚だなって思いつつ、まさにそうでしたね。なので、改めて出演者のラインナップがカッコいいフェスっていう印象があります。
──家族みんなで遊びに来られる環境やアクティビティだけではなく、音楽自体にも注力している印象がありますよね。
そうですね。ちなみに僕、キャンプは素人なんですけど、2018年に出演したときに、とにかくまずはキャンプを楽しみに来ているっていうムードが会場内にあふれていたんですよね。さっきのリラックスした雰囲気っていうのは、そこから来ているんですかね。で、そういういい感じのスタイルがありつつ、そこに音楽好きの嗜好が反映されたこだわりの出演者もいる、っていうバランスが面白いんでしょうね。ゆえの「こういうことがやりたい」というのがかなり明確にあるフェスといいますか。演者としては、改めてそこに混ぜてもらえるのは光栄ですね。
──ユアソンは開かれたパフォーマンスをするバンドですけど、根底にはパンクスピリッツがあるじゃないですか。そういう意味でも、共鳴するところは大きいのではないでしょうか。
そういう話になると……だから、ますます変なライブはできないっていうことになりますよね(笑)。呼んでもらえて光栄なだけに。
──なるほど。自分たちの芯の部分も見られて呼ばれたことがわかるからこそ、ですよね。
これはただ呼んだんじゃないな、ステージだけじゃなくて、過ごし方含め全部を見られているっていう話ですかね(笑)。もちろん、どのフェスでも変なライブはできないんですけど(笑)。
──より気が引き締まるというか、応えたいというか。
ありがたい話なので、そういう気持ちは、あります。
(「THE CAMP BOOK」PR・古郡充彬氏) ファミリー層のキャンプフェスと謳いつつも、ブッキングはファミリーに寄せ切れていないんです(笑)。どちらかと言うと昔から音楽を好きなヘッズたちがブッキングしたラインナップになっちゃっているんですよね、結果的に。
なるほど(笑)。それが絶妙なバランスなんでしょうね。もともと音楽が好きな感じと、家族と過ごすいい時間が融合された貴重なフェス、ということですね。実際、その2つを融合させるのって、なかなか難しいじゃないですか。
──そうなんですよ。単純に、子供をライブハウスに連れていくのは大変ですしね。
ですよね。そういう意味では、実は僕も父親になって今3年目で、ファミリーバイブスの大事さもしっかりわかったので、きっと2018年に参加したときより「THE CAMP BOOK」にしっかりとハマるパフォーマンス、または過ごし方、そしてありがたさも理解できるような気がしてます(笑)。
──お子さんが生まれてから、まだフェスに連れていったことはないですか?
やはりコロナ禍になってしまったので、全然行けてないんです。だから家族で行けたらいいなと思っているんですけど。
──音楽も家族も大好きな人たちにとっての、いい居場所になると思います。
きっと、そうでしょうね。
(古郡氏) ブッキング担当者の中には、スカを好きな人間も、ハードコアを好きな人間もいて。だからごちゃ混ぜなラインナップになっているっていうのもあります。何社かが合資している実行委員会形式ではなく、1つの会社がやっているっていうのも大きいでしょうね。
──でも、筋が通っている感じはしますよね。
なるほど。いろいろなスタイルの出演者が混ざっている気がしつつも、一貫性がある印象があるんですが、それは作っている皆さんの純度が高いからというか、1つの会社でやっているからこそのスタイルだったわけですね。皆さんの人生の音楽との関わり方が、如実に投影されているところがあるんですかね。それはとても面白いですよね。2018年に出演させてもらったときに感じた、またほかのフェスとも異なる個性的な感覚っていうのは、そういうところにあったんですね。
ツネくんを迎えて、また違うユアソンのライブを
──ちなみにジュンさんは、今年のラインナップの中で楽しみなアクトはどなたですか?
全部ですよね(笑)。素晴らしい皆さんが集まっている気がします。知っている人がいっぱいるのもうれしいです。ちなみに自分の出演は日曜日ですが、前日の土曜日も相当バラエティに富んでいますね。また同じ日にeastern youthがいるのも、うれしいです。大トリが民謡クルセイダーズっていうのもヤバいですね。あとは、復活したDOPING PANDAもいるし。
──ドラマがありますね。
皆さんきっといろいろあってこの日を迎えるんでしょうね。以前はタイミングが合えば自然と会えていた人たちでしたけど、またこうやって一緒になれる場があるっていうだけでも、シンプルにうれしいです。
──オーディエンスも、こういう時期だからこそ、純粋な音楽好きが集まると思うんですよ。すごくいい場が生まれるような気がします。
音楽好きの皆さんもそうですし、いわゆる「THE CAMP BOOK」というフェスのファンの皆さんも、今回のひさびさの開催は本当にうれしいでしょうね。そういった皆さんとピュアに楽しめたら、きっと最高だと思います。
(「THE CAMP BOOK」オーガナイザー・樋口大貴氏) コロナ禍でのフェスは我々も初めての経験なので「ここまではやらないといけない」というところはあるんですけど、その一方でお客さんの気持ちに委ねたいところもあって。これまで開催してきた4回で生まれてきたグルーヴはお客さんに感じてほしいので、そこを損なわないような運営をしていきたいですね。アーティストさんたちにものびのびやっていただけるような体制にして、「THE CAMP BOOK」の雰囲気で包み込むチャレンジをしたいと思っています。コロナ禍での最上級の楽しみを模索していきたいですね。
(古郡氏) アーティストもお客さんも一緒に作るっていう思いは強いですね。共同作業になっている感覚が、今年に関しては特にあります。
これまでと違うのはまさにそこですよね。お客さん、演者、スタッフ、全員にとってもなかなかない体験ですし、とても有意義なものになるんじゃないかと思います。きっとこの2年の経験を生かせると思いますし、バンド的にもいろいろと協力していきたいと思ってます。
──ユアソンの今回のライブそのものは、どんなふうになりそうでしょうか。
今回、出順が1番目。日曜日の朝イチ10時にオンステージなんですよね。で、この間のカクバリズム20周年の野音でも思ったんですが、出順1番目のYOUR SONG IS GOOD、これがけっこういい感じなんですよ(笑)。メロウな感じで始まって、ジワジワとアゲていく流れで、皆さんのその日1日のバイブスの調整を担当したいと思ってます(笑)。それから、今回は特別な編成で、ライブに参加できないドラムのタナカさんの代わりに、サポートでHi-STANDARDのツネくん(恒岡章)にお願いしています。そこのレアさも見どころだと思います。
──ツネさんバージョンのユアソンはいかがですか?
面白いです。演奏が素晴らしいというのはもちろんですが、それこそやっぱりバイブスが素敵です。それで、ツネくんには、今までのバンドの演奏をそのまんまやってくださいというお願いはしていなくて、ぜいたくにもツネくんと僕らメンバーとが一緒にグルーヴを探って、作り上げていくようなやり方でトライさせてもらっています。なので、これまでとはまた違ったノリであったり、スリリングさであったり、といったものが味わえる、とても面白い仕上がりになっていると思います。その感じを「THE CAMP BOOK」の朝イチの気持ちのいい時間帯に、皆さんと再会するという特別な場でやれるというのが、本当に楽しみです。
プロフィール
YOUR SONG IS GOOD(ユアソングイズグッド)
1998年1月に結成されたインストバンド。初期はエモやポストロックなどからの影響が強くあったが、次第にスカ、カリプソ、レゲエなどのヴィンテージサウンドのテイストを打ち出したダンスサウンドへと移行、現在はさらにハウス、バレアリック通過後の感覚を活かした生演奏でのダンスミュージックを追求している。2002年にミニアルバム「COME ON」を、2004年にはフルアルバム「YOUR SONG IS GOOD」をカクバリズムより発表した。2019年3月に結成20周年を記念したアルバム「Sessions」、2020年5月に続編となる「Sessions 2」をリリース。現在はサイトウ“JxJx”ジュン(Organ, Vo)、ヨシザワ“モーリス”マサトモ(G)、ハットリ“ショーティ”ヤスヒコ(Tb)、タカダ“ダータカ”ヒロユキ(B)、タナカ“ズィーレイ”レイジ(Dr)にサポートメンバーの松井泉(Perc)、後関好宏(Tsax, Flute)を加えた7人体制で活動中。個々の活動にも精力的で、フロントマンのJxJxはDJやMCとしても活躍している。