怜次の声で始まる物語
──2月にリリースする2ndアルバム「vacaTion」は、新体制になって1発目の作品ですよね。まず驚いたのが、楽曲提供をしている作家陣の豪華さ。
桜庭 僕たちもありえないくらい驚きました(笑)。
──大黒摩季さん、TRICERATOPSの和田唱さん、wacciの橋口洋平さん、SANABAGUN.の岩間俊樹さん、山崎あおいさんなどそうそうたるメンツで。結成3年目のグループがこれほど名の知れた方々に楽曲をお願いできたことがすごいなって。
前川 話を通してくれたスタッフさんもそうですし、オファーを受けてくださった皆さんに感謝ですよね。
──ここからは収録曲順にお話を伺います。「Vacation」はインストナンバーですね。
佐藤 ブレーメンの音楽隊的な感じです。怜次の声が入ってるよね。
坂垣 そうだね。インストが流れた最後に、僕の「TFG! Let's get it on, Vacation!」というセリフがあるんですけど、「これから6曲の物語が始まるよ!」という気持ちを込めて言わせていただきました。
桜庭 怜次の声が入ることで、出だしからすごいテンション上がるよね。
──「PA! PA! PA! Party Love!」は、SANABAGUN.の大林亮三さんがベースで参加しているファンクナンバーです。
赤澤 これはタイトル通り、めちゃくちゃ楽しい曲です。こういうご時世だからこそ生まれた曲と言いますか。
桜庭 物理的なソーシャルディスタンスは保ちつつ、心の距離は近くなれるような「みんなでパーティを楽しもう!」という楽曲だよね。
前川 歌詞から「つらいこともあるけど、楽しんだほうがよくない!?」というメッセージを感じて、素敵な考え方だなと共感しました。何があっても、しんみりするより明るくしたほうがいいですもんね。
赤澤 振り付けもそうだしね。ライブでお客さんも一緒に踊ってくれたらうれしいです。
燃え上がるような恋とピュアな恋
──「¡ Hola ! ¡ Hola ! ¡ Hola !」ですけど、これってどう読むんですか?
堀田 「オラ! オラ! オラ!」です。「Hola!」はスペイン語で「こんにちは」「やあ」という挨拶を指す言葉なんです。作詞が大黒摩季さんで作曲と編曲が徳永暁人さんなんですけど、すごく情熱的な曲調で個人的にも大好きです。
前川 ジャンルで言うとラテンだよね。
堀田 うん。歌詞にもスペイン語が盛り込まれていて、その発音にすごく苦戦しました。舌を巻くように言うんですよ。ネイティブに近い歌い方なので難しかったんですけど、完成した曲を聴いたら雰囲気が出ていてうれしかったです。
前川 これまでにも「Dance with Me」「With You」など明るい曲は多かったけど、「¡ Hola ! ¡ Hola ! ¡ Hola !」はもう1段階上に行った感じ。楽しいよりも燃え上がるようなエモーショナルさがあります。なんと言っても、大黒摩季さんがコーラスにも参加してくださったんですよ。
堀田 去年11月に大黒さんとお会いして。その日に一緒にスタジオに入って、レコーディングしたばかりの大黒さんのコーラス音源を聴きました。めちゃくちゃセクシーな歌声に鳥肌が立ったよね。
桜庭 録った直後に聴かせていただけるなんて本当に贅沢だよね。しかも大黒さんご本人と一緒に聴いたからね。
坂垣 大黒さんの声が入ることで、格段にカッコよくなった。改めてパンチのある歌声にやられましたね。
──「恋の変換点」はTRICERATOPSの和田唱さんが作詞、作曲、編曲をしています。
佐藤 かわいくてオシャレな曲調で、歌詞では恋愛経験の少ない主人公の純粋な気持ちを表現してます。
前川 「¡ Hola ! ¡ Hola ! ¡ Hola !」が情熱的に女性を抱きしめる印象だとするなら、「恋の変換点」には女の子と手もつなげないようなピュアさがある。
坂垣 和田さんはすごい優しく指導してくれたよね。しかもノリもいい方だった。
前川 レコーディングが終わったあとに「よかったよ!」と、さっと手を差し出してくれてね。ああいう熱い心を持っていらっしゃる人って、本当にカッコいいと思ったもんなあ。
──ということは、和田さんがレコーディングのディレクションもされたんですか?
赤澤 そうです。歌い方で迷ったら瞬時に的確なアドバイスをくださったり、一方的に指示するんじゃなくて、僕らの意見も聞いてくださったり、一緒に曲を作ろうとしてくれる姿がすごく印象的でした。
大ファンのwacciが気持ちを汲み取ってくれた
──「瞬間」はwacciの橋口洋平さんが作詞作曲を担当していますけど、前川さんが橋口さんと打ち合わせをしながら曲を作っていったんですよね。
前川 普段からwacciさんをヘビロテするほど大ファンなんですよ。そんな橋口さんに曲を作っていただける時点で幸せのピークだったから「こんな曲がいいです」と提案するのもおこがましい気がしちゃって。ぶっちゃけ「いただいた曲を一生懸命に歌わせてもらいます」という気持ちなんですけど、それだと橋口さんも困ると思うので、僕が普段考えていることや、何を伝えたいと思って音楽をやっているかを1時間くらいお話しして。それで橋口さんが「わかりました。今の話を踏まえて曲を作ってきます」と。
佐藤 じゃあ、ゼロの段階から打ち合わせをしたんだ?
前川 そうそう。俺の話によってはラブソングだったかもしれないし、楽しいポップソングになっていたかもしれないけど、それよりも心からファンの方へ伝えたい気持ちをお話しした。特に感動したことがあって……歌入れ直前で歌詞が一部変わったんですよ。橋口さんから「前川くんのブログとかインタビューの記事を読んだら“瞬間”とか“一瞬”って言葉をよく使ってて、大切にしていると思ったから、この歌詞にしたんだよね」と言われて。橋口さんの言葉で泣きそうになった。
赤澤 あ、そうだったんだ!
前川 “瞬間”や“一瞬”を多用しているのは無意識だったんですよ。だけど曲を聴いたら、本当に自分が大切にしていることが歌詞の中に詰まっていたので、素敵な曲を書いていただけたなって。
赤澤 人の気持ちを汲み取る力がすごいよね。あとレコーディングでも僕たちのことを褒めてくださったのが印象的でした。
──なんて言われたんですか?
赤澤 「いい声だね」って。そのひと言で一気にテンションが上がりましたね。何より「瞬間」を通して、レコーディングがうまくなった気がします。「この歌詞を伝えるにはどういう歌い方がいいのか」とか「橋口さんの意図を感じよう」とか、曲の解釈を深めながら歌いました。
佐藤 結成当初のレコーディングってさ、俺は一生懸命歌っているつもりでも聴いてみたら棒読みなことが多かった。ピッチやテンポを外さずに歌えた気がしても、客観的に聴くと「全然ダメじゃん」って。
桜庭 音程を取るんじゃなくて、ちゃんと感情を込めて歌うことが大事なんだよね。
赤澤 前後の脈絡とか、歌詞の主人公はいつどこで誰に発した言葉なのかを考えるのが大事で。ディテールをしっかり作り込んで、歌詞じゃなくてセリフのように歌ったらどう響くんだろうとか。僕はミュージカルで歌わせていただくことが多いんですけど、それと同じ向き合い方でアルバムのレコーディングに取り組みましたね。しかもストーリー性のある歌詞が多いので、すごく入り込みやすかったです。
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桜庭考案の「好きになってしまったんだよ」