TeddyLoid×ちゃんみな対談 | 「SILENT PLANET」の物語の鍵を握る“若き女帝”の存在

無理やり吐き出した剥き出しのリリック

──では、「You Made Me」がどんなふうにできあがっていったのか、詳しく教えてもらえますか?

ちゃんみな 最初はトラックの候補が2曲あったんだよね。

TeddyLoid そう。まずは僕がタイプの違う2つのトラックを用意していたんです。1つは今回「You Made Me」として完成させた、トラップとヘヴィメタルをクロスオーバーさせたトラックでした。もう1つはかなりハードなダブステップで、ずっとウォブルベースが鳴っているようなトラック。その2つをちゃんみなちゃんに聴いてもらって、一緒に選びました。

ちゃんみな 正直、そのどっちにするかもとても迷ったんですよ。

TeddyLoid スタジオに来てもらって、ひとまず両方とも声を入れてもらったんです。ダブステップ色が強いトラックのほうは「ダイキライ」の続編みたいな感じの曲で、「メンヘラ」をテーマにしてそれはそれで面白い曲になりそうで。

ちゃんみな そうそう(笑)。

TeddyLoid でもそれだと「ダイキライ」の延長線上でしかなくて、ちょっと普通だな……と感じてしまって。一方の「You Made Me」は、トラップを基調にしつつもギターサウンドがたくさん入っているし、サビは彼女に歌い上げてもらうイメージが最初からあったんです。それで、こちらのほうが斬新な曲になるんじゃないかと思って「You Made Me」を選びました。もともとラウドロックやヴィジュアル系などのロックバンドのアレンジの仕事をしていたり、やはりアトランタトラップとデスコアメタルのクロスオーバーだったKOHHくんの「Die Young」をプロデュースして以来、自分にとってもハードなロックサウンドとダンスミュージックの融合はテーマだったので、その集大成にしたかったというのもあります。

左からTeddyLoid、ちゃんみな。

──ちゃんみなさんのスキルが進化していたからこそ、「ダイキライ」と同じような曲を作っても面白くない、と感じたということでしょうか。

TeddyLoid そうですね。まったく違うアプローチで、今の彼女のポテンシャルに応えようと思ったんですよ。

ちゃんみな 実は私、もともとロックが好きだったんです。ヒップホップと同じくらい好きなんじゃないかと思うくらいで。しかもその頃、ちょうど「ロックがやりたい!」って言っていたんですよ(笑)。そこにTeddyくんからロック色の強いトラックが送られてきたので、「来た。これ、やりたいやつだ」って。Teddyくんは「一緒に作っていこう」というタイプで、テーマ的なものは事前にはもらっていなかったので、私の方でもアイデアを持っていこうと思って、家のレコーディングスペースでいろいろと考えてから向かいました。

TeddyLoid スタジオでそれを聴いて「めちゃくちゃいいじゃん!」と思ったので、今回バースのラップパートは全部お任せしました。サビは僕のスタジオでメロと仮歌を軽くセッションして、あとはちゃんみなちゃんがレコーディング当日までに仕上げてきてくれた感じですね。

ちゃんみな いい意味でお互いの個性がぶつかるような感じになったと思います。リリックに関しては、Teddyくんの曲では性格が悪い感じになるので……。

TeddyLoid ハハハハハ(笑)。

ちゃんみな 私の黒い部分を全面に出していこうと思っていましたね。それで、ひたすら嫌だったこととかを思い浮かべながらスタジオに向かわせていただきました(笑)。私はこもってリリックを書くタイプなんですけど、その頃はちょうど多忙な時期で「書く時間がない。どうしよう」というくらいでした。

TeddyLoid ライブ制作があって、同時にアルバムも作っていたんだよね。

ちゃんみな

ちゃんみな そうなんです。自身の楽曲制作でLAにも行かなければいけなくて。だから……「You Made Me」のリリックは無理やり吐き出したみたいな感じです(笑)。

──何のブレーキもかけずに出てきた、かなり剥き出しのリリックだったんですね。

ちゃんみな 「ゔわぁぁああああ!!!!」って(笑)。きっと、「ウザイウザイ、キライキライ!!」という気持ちが溜まっていたんでしょうね。それもあって、リリックはかなり楽しく書かせてもらいました。

TeddyLoid その雰囲気が、今回のハードなトラックにすごく合っていると思ったんです。だから、彼女にもらった歌詞については、今回僕は一切口出しをしていないんです。

ちゃんみな ちゃんと聴くと、日本語も英語も正しくはないのですが、逆にそれがいいのかな、と思ったんですよね。だから「勢いで出た言葉」というイメージですね。

TeddyLoid そこに「ダイキライ」へのオマージュも加わっていたりして。

ちゃんみな そうそう。「ダイキライ」からちょっと成長して「ダイキライなあなたに幸あれ」って言っていて(笑)。そう考えるとちょっと成長しているんですよね。ちょっと。

TeddyLoid いや、だいぶ大人になってるでしょ!(笑)

LAのテラスで2時間

──Teddyさんのトラックは、もともとちゃんみなさんに歌ってもらうことを想定して書いたものだったんですか?

TeddyLoid もともとロックっぽいトラックはけっこう作っていたんですけど、今回彼女にオファーするときにはもう「ちゃんみなちゃんこそ、ヘビーなロックが絶対似合うだろうな」と思ってました。そこで、ヘヴィメタルとトラップのクロスオーバーでなるべく斬新なトラックを作って託しました。ロックは“スター感”が大事な音楽ですよね。僕にとってちゃんみなちゃんは単なるラッパーではなきく、もっとスケールの大きいスター性を強く感じているので、「You Made Me」はロック、それもロックの象徴の1つ、ヘヴィメタルを取り入れたセンセーショナルなサウンドにしようと。それに、僕自身のルーツもJusticeやDaft Punk、The Bloody Beetrootsのようなロック色の強いエレクトロなので、今回の音ならお互いにバッチリだと思っていました。

ちゃんみな トラックもトラックなので、スタジオでは声を潰したり、広げたりといろいろ試したんですけど、その時点ではまだTeddyくんが加工する前の生の声なので「大丈夫かな」とも思っていて。でも、最終的にできたものを聴いてみると、全然大丈夫でしたね。

TeddyLoid 僕の場合、レコーディングは楽曲制作の最終工程では全然なくて、そこからいろいろとエディットしたり、声を変えていったりするので。今回もちゃんみなちゃんの声に合わせて、ビートを少し変えたり、ドラムの位置を変えたり、ブレイクを作ったりしました。ちゃんみなちゃんの声は存在感があるからこそ、今回はあくまで彼女のボーカルがメインで、トラックはそれを支えるようなイメージでした。「ダイキライ」はお互いの声とトラックの応酬でしたけど、「You Made Me」は、彼女の声とキャラクターを最大限に生かす楽曲にしたんです。

左からTeddyLoid、ちゃんみな。

──なるほど。そこで、ちゃんみなさんがサビでラップではなく歌を披露しているんですね。

TeddyLoid 洋楽っぽさも出しつつ、同時にちゃんみなちゃんのルーツでもあるK-POP的な要素も落とし込みたいと思っていたので、歌えるようなメロディに仕上げていきました。

ちゃんみな その歌がちょっとエモい感じなんですよね。そしてバースに入った瞬間に、めちゃくちゃ悪い感じになる(笑)。その切り替えがすごくTeddyくんらしいと思いました。「You Made Me」の完成形が送られてきたのはLAにいたときで。夜に届いて、次の日は朝からセッションの予定だったんですけど、テンションが上がって2時間ぐらいテラスで聴いてました(笑)。

TeddyLoid うれしいなあ。僕もその直前にLAに行っていて、ちゃんみなちゃんと入れ違いで日本に帰ってきていたんですよね。そういうタイミングだったこともあって、アメリカのメジャーなロックっぽい空気感になったのかも知れません。ちゃんみなちゃんに関しては、新曲のアイデアが今も尽きないので、早くまた2人で一緒に曲を作ってみたいです。

ちゃんみな わー、楽しみ!

完結する「SILENT PLANET」の物語

──今回の「You Made Me」はジャンルの異なる2人のアーティストによるコラボ曲になったと思いますが、そもそもアルバム「SILENT PLANET」は、音楽や感情が禁止された惑星に降り立ったTeddy少年の代替アンドロイド=TeddyLoidが、さまざまなジャンルのアーティストと出会い、レジスタンスとして音楽や感情を解放していく姿を描いた作品でした。だからこそ、ちゃんみなさんのように自分とは異なるジャンルのアーティストを迎えることは、「SILENT PLANET」シリーズにとって重要なことなのかもしれませんね。

TeddyLoid

TeddyLoid はい。「SILENT PLANET」はドームのような場所で人々が管理されていて、そこは音も感情もない世界なんです。そんな場所で、音楽によって感情を解放していくための戦いを描いたのが、2015年のアルバム「SILENT PLANET」でした。だからこそ、ここでは物語の最後に、巨大な黒いピラミッドの前でレイヴが行なわれるという結末を用意していたんです。今回の「SILENT PLANET: RELOADED」と「SILENT PLANET: INFINITY」は、その後日談、スピンオフとして、そのあとまた新たな問題が発生したことを受けて、これまで力を貸してくれた盟友たちや、新たに加わってくれた仲間と共に再び宇宙空間に戻る、というストーリーになっていて、これは次作へのイントロダクションでもあるんです。

ちゃんみな へええ、そんなストーリーがあるんですか!?

TeddyLoid その中にはかつてアルバムに参加してくれたメンバーもいれば、今回新たに参加してくれたLAのバーチャル・ライオットという超ヤバいプロデューサーや、俳優の鈴木福くんもいて……世界各地からさまざまな人々が集まってくれているんですよ。

ちゃんみな 福くん!? マジですか!? 福くん、強そう……! これは負けてられないな。

TeddyLoid (笑)。「SILENT PLANET: RELOADED」「SILENT PLANET: INFINITY」は、いろいろなジャンルから、僕が考える最強の人たちを集めたアルバムです。

TeddyLoid
「SILENT PLANET: RELOADED」
2018年11月14日発売 / EVIL LINE RECORDS
TeddyLoid「SILENT PLANET: RELOADED」

[CD] 3024円
NKCD-6849

Amazon.co.jp

収録曲
  1. Reloaded(Intro)
  2. Guardians of the Universe feat. Virtual Riot
  3. Bring It Back feat. TRIΔNGLE
  4. Two Dawgz and The Ape feat. Paloalto & SALU
  5. Lion Rebels(RELOADED)feat. JUN 4 SHOT from FIRE BALL & N∀OKI, NOBUYA & KAZUOMI from ROTTENGRAFFTY
  6. Break The Doors(RELOADED)feat. アイナ・ジ・エンド(BiSH)
  7. Vibraskool(RELOADED)feat. 近田春夫(Professor Drugstore a.k.a. President BPM)& tofubeats
  8. Shout It Out(RELOADED)feat. Kダブシャイン
  9. Venom
  10. ダイスキ(RELOADED)feat. DAOKO
  11. Just Gone
  12. TL will return(Interlude)
  13. You Made Me feat. ちゃんみな
TeddyLoid
「SILENT PLANET: INFINITY」
2018年11月28日発売 / EVIL LINE RECORDS
TeddyLoid「SILENT PLANET: INFINITY」

[CD] 3024円
NKCD-6850

Amazon.co.jp

収録曲
  1. Game Changers(LAST BOSS Mix)with 中田ヤスタカ(CAPSULE)
  2. ME!ME!ME!(INFINITY)feat. DAOKO
  3. To The End(INFINITY)feat. アイナ・ジ・エンド(BiSH)
  4. Forever Love(VIP Mix)
  5. Foolish feat. 元・天才
  6. N.U.L.L. feat. kradness
  7. Grenade(INFINITY)feat. 佐々木彩夏 from ももいろクローバーZ & サイプレス上野
  8. Invisible Lovers(INFINITY)feat. IA, 鈴木福 & MASAKing
  9. Sleeping Forest(INFINITY)feat. ボンジュール鈴木 & TORIENA
  10. Searching For You(INFINITY)feat. 柴咲コウ & DECO*27
  11. Above The Cloud(INFINITY)with 小室哲哉 feat. マーク・パンサー
  12. もののけ姫 2018 feat. 米良美一(TeddyLoid EDM Remake)
  13. 魂のルフラン(TeddyLoid 2014 Remix)
  14. Winners feat. Reol & Giga
TeddyLoid(テディロイド)
TeddyLoid
1989年8月23日生まれの男性アーティスト / 音楽プロデューサー / DJ。18歳でMIYAVIのメインDJ / サウンドプロデューサーとして13カ国を巡るワールドツアーに同行し、2010年には☆Taku Takahashi(block.fm / m-flo)と共にTVアニメ「Panty & Stocking with Garterbelt」のサウンドトラックを担当。翌2011年には柴咲コウ、DECO*27とともにgalaxias!を結成しアルバムを発表。2013年のももいろクローバーZ「Neo STARGATE」のサウンドプロデュース、そしてライブでの共演をきっかけに、キングレコードEVIL LINE RECORDSより2014年9月に1stアルバム「BLACK MOON RISING」を発表し、ソロアーティストとしてメジャーデビューを果たす。2015年9月にはももいろクローバーZ初の公式リミックスアルバム「Re:MOMOIRO CLOVER Z」を手がけ、12月には中田ヤスタカ(CAPSULE)、HISASHI(GLAY)、小室哲哉、志磨遼平(ドレスコーズ)、佐々木彩夏(ももいろクローバーZ)等の豪華ゲスト12組を迎えた2ndアルバム「SILENT PLANET」をリリース。2016年にはKOHH、ボンジュール鈴木、ちゃんみな、アイナ・ジ・エンド(BiSH)、Kダブシャインらを迎え、その続編となる「SILENT PLANET 2 EP」の配信リリースをスタートさせた。プロデューサー、リミキサーとしては、the GazettE、KOHH、HIKAKIN & SEIKIN、Crossfaith、米良美一ら多岐にわたるアーティストを手がけているほか、短編映像シリーズ配信企画「アニメ(ーター)見本市」の吉崎響監督作品「ME!ME!ME!」、専門学校HALの2016年度テレビCM「嫌い、でも、好き」篇の音楽をDAOKOと共に担当。そのほか、PlayStation4ソフト「Destiny 2」のプロモーションムービー「『Destiny 2』Live Action Dance Trailer "Freestyle Playground"」、SONY「EXTRA BASS」シリーズ、宮本亜門演出の「WRECKING CREW ORCHESTRA」による公演「SUPERLOSERZ SAVE THE EARTH 負け犬は世界を救う」など多岐にわたる分野で音楽を担当している。2018年11月、「SILENT PLANET」シリーズの完結編となる2枚のアルバム「SILENT PLANET: RELOADED」「SILENT PLANET: INFINITY」をリリース。
ちゃんみな
ちゃんみな
1998年生まれのラッパー / シンガー。父親が日本人、母親が韓国人の韓国生まれのトリリンガルで、日本語、韓国語、英語を巧みに操る。幼少よりピアノやバレエ、ダンス、歌を始め、高校生になると作詞作曲やトラック制作からダンスの振り付けまですべてセルフプロデュースで行うアーティストとしての活動をスタートさせた。2016年に「BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権」に出場。同年発表したオリジナル楽曲「未成年 feat. めっし」「Princess」で大きな注目を集め、2017年3月、高校2年生にしてアルバム「未成年」でメジャーデビューを果たす。同年10月にはTeddyLoidの作品「SILENT PLANET 2 EP vol.3」に「ダイキライ feat. ちゃんみな」で参加。2018年11月にリリースされるTeddyLoidのニューアルバム「SILENT PLANET: RELOADED」ではリードトラック「You Made Me feat. ちゃんみな」で2度目のコラボが実現した。