「カクバリズムのレコ話 supported by Technics」第1回 角張渉×高橋一(思い出野郎Aチーム)|ほとばしるレコード愛を語り尽くす

変わってほしくない部分は変わってない

角張 旧MKシリーズだとMK4のみに搭載されていた機能らしいんですが78回転にもできるのでSP盤が聴けるという。

高橋 うわ、すごいっすね。

「SL-1200MK7」について語る角張渉と高橋一(思い出野郎Aチーム)。

角張 しかも逆回転にもできるんです。ターンテーブルでできることの、ほぼすべてが可能だという。

高橋 デザインもこれまでと変わらないようでいて、さり気なくシックになってますよね。

角張 そう! このアームの部分がシルバーから黒になってるんだよね。これはけっこう重要。

高橋 それにオーディオケーブルを取り替えられるという。昔の機種は本体とケーブルが一体型だったので、ケーブルが断線しちゃったら丸ごと修理に出さなくちゃいけなかったんですけど。

角張 それは20年前のモデルです!(笑) 最新の「SL-1200MK7」ですから進化してますよね。あとモーターもやっぱり最新機種は違うなって……。

高橋 だんだん僕ら通販番組みたいになってきてますね(笑)。

角張 それは俺も思ってた(笑)。でも我々が本当に好きで盛り上がってるから仕方ない! という感じで、改めて「SL-1200MK7」、素晴らしいターンテーブルです……今のも通販感出ちゃったかな(笑)。Technicsのターンテーブルは我々の生活にずっとあったものだから、改めて紹介しようとすると、どうしてもこうなっちゃう(笑)。

高橋 そうですね。レコード好きの僕らにとって、変わってほしくない部分は変わってないんだけど、「SL-1200MK7」にはプラスして最新の要素も入ってますよね。それとTechnicsってどんな家具にも似合う感じありません?

角張 合うよね。むしろ自宅の部屋に置きたい(笑)。

高橋 アパートの畳部屋にも高級家具のある部屋にも似合うという、このデザインの汎用性が……。

角張 汎用性! すごいこと言いますね、さすがマコイチさん!(笑)

「カクバリズム太っ腹だなあ」

角張 思い出野郎Aチームは7月29日に7inchシングル「独りの夜は」をリリースします。これはそもそも思い出野郎Aチーム主催のクラウドファンディング企画「ソウルピクニック・ファンディング」のリターンとしてマコイチくんが自宅で作った曲なんだよね(参照:ソウルピクニック・ファンディングを始めました!|思い出野郎Aチーム)。

高橋 そうです。

角張 「ソウルピクニック・ファンディング」は、新型コロナウイルスの一件があって、普段お世話になっている方々やライブハウス、クラブをなんとか支えられないかという思いでスタートした企画だよね。そもそもどういう経緯でやることになったの?

左から角張渉、高橋一(思い出野郎Aチーム)。

高橋 今回のコロナ騒動で音楽業界も自粛というか、オールストップ状態になったじゃないですか。3月くらいからは僕らがお世話になっているライブハウスやクラブが「本当にもうダメかも」という状態になってきて。あの時期みんな混乱してたんです。で、いろんな意見が飛び交う中、toeがアーティストの音源を集めてライブハウスのドネーションに充てるというプロジェクトを始めて。あれ、すごく早かったですよね。

角張 早かったね。3月下旬には話が決まってた。

高橋 toeがカクバリズムにも声をかけてくれたので僕らも参加したんですけど、その企画では僕らが「ソウルピクニック」という自主企画をやってきたハコが支援対象から漏れていたんです。そこで思い出野郎Aチームが関わっているお店にも何かしたいと思って、「僕らが前例として動けば、今後小さめのハコにも支援が行き渡るんじゃないか」という話になったんです。あの頃はZoomにも慣れてなかったからGmailでメンバーとすごい数のやりとりをしてたんですけど(笑)、「何かやらなきゃ」「でもクラウドファンディングの対象にならない人たちが絶望してしまうんじゃないか」とかいろいろな意見が出ました。でも最終的には「やれることからやっていかないと、自粛するしかない状況のお店がどんどん閉店してしまうかも」ということで、僕らなりにやってみることにしました。

角張 クラウドファンディングに携わるのは僕も初めてだったんだよね。普通は支援するとステッカーとかドリンクチケットがもらえる感じだと思うんだけど、「ソウルピクニック・ファンディング」の場合は7inchアナログとか、ライブの年間パスがもらえるっていうから「思い出野郎はリターンがすごいな」って、びっくりして笑っちゃった(笑)。この企画には全部で600万円以上の資金が集まったんだよね。

高橋 そうなんです。最初は「支援したいお店のことを考えると2000万円くらいは必要だし、僕らだけの力だけじゃ無理かも」と思っていて、結果その額は達成できなかったけど、最終的には1200人以上の方に支援していただいて。逆に僕らが力をもらいましたね。

角張渉

角張 このクラウドファンディングの支援対象には僕もつながりがあるライブハウスがたくさん入っていたんだけど、いろんな友達が「思い出野郎がそういう試みをしてくれたことで店を続けていける」って言ってる。例え20、30万円とかでも、1カ月の家賃を払えるだけでも気分が違うし、まったく収入がないより入ってくるお金があるほうがうれしい。それに、安心しているその間に次のことを考えられるんだよね。OPPA-LAの店主の和田剛さんからも、「めちゃくちゃありがとう! またパーティやろうぜ!」って連絡が来たんだよ。

高橋 それはよかったです。でもこれは本当に自分たちのためというか……ハコがなくなったら、事態が収束したときに僕らも何もできなくなっちゃうので。

角張 でもそれで終わると思ったら違った。7月29日にリリースする7inchシングル「独りの夜は」の通常盤に関しては、売上の100%を販売店に還元するんだよね。

高橋 はい。今回の通常盤は、普通のレコード屋さんじゃなくても売りたいお店で販売してもらえることになってるんですけど、これはマネージャーの仲原(達彦)くんと「もっと広い支援ができないかな」と話したことがきっかけで。「クラウドファンディングの対象に入れられなかったお店にも何かしたいな」と話したときに、「じゃあ通常盤は売上を販売店に還元しようか」とポーンと決まって。そのときは「ああ、カクバリズム太っ腹だなあ」と思ったんですけど……会社的には大丈夫なんですか?

角張 今支払い明細書とか見ていろいろ考えてる(笑)。思い出野郎Aチームがそういう企画を実施することで、1人でも多くの人が曲を聴いてくれて、クラブが再開したときにそこでかかり、クラブヒットになってサブスクやYouTubeの再生回数も上がって……「みんなうれしいね」となるのが私の理想でございます(笑)。けど我々は本当にレコード店、クラブ、ライブハウスがあってこその存在だし、もちろんTechnicsさんが素晴らしいターンテーブルを作ってくれてるから、こうして皆さんにいい音で音楽を届けられているところもありますし。ちょっとでかい話になっちゃったけど、でもみんなつながってますから。みんなに優しくしていきたいなってことです(笑)。

高橋 はい(笑)。

角張 というわけで、新作「独りの夜は」をお近くの、またはあなたが好きなレコード店、好きな雑貨屋、どこでもいいので手にとってもらえたらうれしいですね。通販でも買えます。そしてこの連載では引き続き、Technicsのターンテーブルがすごく進化していて、いい音質になっていることなどを、深く掘っていきたいなと思ってます。引き続きよろしくお願いします。

左から角張渉、高橋一(思い出野郎Aチーム)。