そんなことまでしてくれるんですか?
佐藤 「AZ100」ではノイズキャンセリングの進化もすごく感じました。もともと自分はノイズキャンセリングがあまり得意ではなくて、使うことがほとんどなかったんですよ。その苦手意識が「AZ80」でなくなって、「AZ100」ではいい意味ですごく驚かされました。細かいことはわからないんですけど、進化してますよね?
──「AZ100」から、装着時の周囲の環境や耳の形状に合わせてノイズキャンセリング強度を最大化する機能が搭載されています。「AZ80」に寄せられた声を踏まえて進化させているとのことです。
佐藤 やっぱり進化しているんですね。ここまで圧迫感がなく、外音がサッと消えるのはすごいと思います。
岸田 僕も、もともとノイズキャンセリングはあまり好きじゃなかったんですよ。作品自体の音質が変わってしまうのが嫌だから、新幹線とか飛行機に乗るときに仕方なく使うぐらいで。でも「AZ100」のノイズキャンセリングは、使っても音質の変化が全然わからないんですよね。耳が詰まるような感じもまったくないし、すごく自然。さっき佐藤さんが音の分離と広がりについて話してましたけど、それがまったく損なわれない。むしろ周囲の音がなくなることで音楽がきれいに聴こえてくるという、理想的な形になっている。ホントに、これどうなってんの?って思いますよ(笑)。音楽を聴かずにノイズキャンセリングだけを使っても心穏やかになれるでしょうしね。「ちょっと集中したいな」と思ったときに、下手な耳栓を使うよりもいいかもしれない。
──デザイン周りについてはいかがでしょうか?
岸田 個人的には、耳へのフィット感が「AZ80」よりよくなった気がします。「AZ80」は外を歩いていると落ちないかどうか心配になることもあったんですけど、「AZ100」はその心配がまったくなくて。耳の形は人それぞれ違うので、フィット感も個人差があるとは思いますけど。
佐藤 僕も「AZ100」はフィット感がすごくいいなと思います。あと、ケース含めてかなり軽くなっているのに驚きました。最初に持ったとき、「軽っ!」って声が出ちゃうぐらいびっくりして(笑)。
──フィット感の話で言うと、「AZ80」に引き続きコンチャフィット形状が採用されていまして、それが小型化・軽量化に成功しているのも「AZ100」の特筆すべき点かと思います。そのほかに通話機能も進化しておりまして……。
佐藤 通話機能って、音楽を聴いているときに電話がかかってきたら、そのまま通話できるってことですよね?
──そうです。しかも「AZ100」は、相手の雑音を消したうえでこちらに届けてくれる機能が搭載されていまして。通話者の声を判別したうえで、各々の声だけを送受信するようになっているので、騒がしいところで通話してもお互いの声をクリアに届けることができます。
佐藤 通話している人の声を判別して、それ以外の音を自動で消してくれるってことですか……?
──その通りです。
佐藤 そんなことまでしてくれるんですか?(笑) すごいですね。
岸田 余談ですけど、私は鉄道オタクなので、モーターの音を聴くだけでその車両の形式がわかるんですよ。なんの役にも立たないけど一応特技の1つというか。昔マネージャーから電話がかかってきたときに、電話の向こうから小田急1000形のモーター音が聞こえてきたので「今、小田急に乗ってる? 電車の中で通話しないで」と言ったことがありました(笑)。でも、このイヤホンだったらそのモーター音も消えて、わからなくなるってことですよね。それはちょっと悔しさもありますね(笑)。
佐藤 あははは。
岸田 まあそれは冗談として、こんなにきれいな音で音楽が聴けて、ここまでいろんな機能が搭載されているのはすごいですね。
これからも“どうすれば音楽で感動してくれるか”を
──最後にくるりの活動についてもお聞きできればと思います。お二人は昨年、デビュー時から約26年間在籍していたSPEEDSTAR RECORDSとの契約を満了しました。新たな環境に身を移して、現在はどういった心境ですか?
岸田 普通のおじさんになったという感覚です(笑)。もうメジャーレーベル所属アーティストではないので。特に何かきっかけがあったとかではないのですが「これからどういうふうに活動したいか」と考えたときに、“自分たちだからこそ新しく作れるもの”を明確にしていくタームに入ったと思ったんですよ。そのためにも一旦自分たちを更地に立たせて、そこから未来のことを考えていかなければならないなと。これまではレーベルに乗っかってやらせてもらっていたこともあったけど、今後はすべて自分たちで考えないといけない。それは作品作りについてだけではなく、戦略的なことも含めて。そのうえで“くるりとは”という問いに向き合う必要があるので、今はそこについてじっくり考えている最中です。
──佐藤さんは、長年在籍していたレーベルを離れるという決断についてどういったお気持ちだったんですか?
佐藤 正直「とりあえず出てみようか」という感じだったんですよね。今後レーベルというものの在り方がどう変わっていくかわからないじゃないですか。今あるものがそのまま残るのか、新しい業務形態になるのか、レーベルにしかできないことを新たに見つけられるのか、僕らにはまったくわからない。そんな中で自分たちがただ待っていても仕方ないのかなと。例えば「La Palummella」はイタリアでレコーディングしたけど、それは事務所サイドだけで動いていて。そういう何か新しいことをやるときに、すぐに転がれるような環境にいるのが今の自分たちにとっての理想なのかなと思ったんです。同じような目線で物事を面白がってくれて、それをビジネスにしようとしている人がいれば、これまでよりもっと大きな歯車を作れると思うし、そのためには自分たちも新たな十字架を背負う必要があるのかなって。
岸田 やっぱり今、音楽ビジネス業界は大きな転換期にあると思うんです。その原因の1つが少子高齢化ですよね。以前とある作詞家の方と対談させていただいたときに「もう若い人に向けて音楽を作る必要はない」とおっしゃっていて。「昔は『売れたい』と思って若い人に向けて作品を作っていたけど、今はもう若い人に向けて作っても、そもそもの人口が少ないから売れない」と。その話を聞いたときに「なんてことを言うんだ!」と思ったんですよ。でも、その作詞家の方がおっしゃったこともある意味正しいんですよね。くるりのファン層もだいぶ年齢が上がってきていて、「ライブ会場が頭真っ白の人ばかりになるのも嫌だな」とか、私も想像することがありますし。だからと言って、若い人たちに迎合するような、若作りした音楽は作りたくない。それは若い人たちの音楽の聴き方を横目で見ていて思うことでもあったりはして。我々も世代的にもう上のほうですから、どうしたってそういうことを考えてしまうんです。
──なるほど。
岸田 ただ、一方で音楽に世代は関係ないとも思ってはいて。私たちおじさんは「若い人は音楽を劣悪な環境で聴いているから」みたいなことを言いがちだけど、本当はそんなことないでしょうし。実際に「AZ100」のような、昔にはなかった素晴らしい製品が出ていたりするわけですから。若い人が「AZ100」で音楽を聴いたら、これまでとは全然違うものを感じたり、「音楽はこんなに感動できるものなんだ」と気付いたりするかもしれない。それはSNSのタイムラインを追ったり、YouTubeで動画を観たりするのに勝る体験になると思うんです。そういう、音楽に感動できる機会を持てるかどうかが一番大事なんですよね。だから私たちも、世代関係なく、みんながどうすれば音楽で感動してくれるかをこれからも考えていきたいです。それが音楽を人に届けるうえでの大きなモチベーションになっているので。あとは、音楽を愛して作品を作ったり演奏したりしている人たちができるだけ活動しやすい世の中になればいいですね。アーティストや演奏家にとって少しでも健全な時代になれば。それが最近の僕の願いです。
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Technics「EAH-AZ100」
「ありのままの音が生きる、生音質へ。」をキャッチコピーに掲げる、Technicsの完全ワイヤレスイヤホン。磁性流体ドライバーを搭載しており、振動板の正確なストロークで音楽を再生することで新次元のクリアさと臨場感を実現している。「EAH-AZ80」よりコンチャフィット形状を小型化し、軽い着け心地で多くの人に快適でフィット感を提供。また市場の要望に応え、通話やノイズキャンセリング、バッテリー性能なども使いやすさが向上している。
プロフィール
くるり
1996年に立命館大学の音楽サークル「ロック・コミューン」内で岸田繁(Vo, G)、佐藤征史(B)、森信行(Dr)により結成。1998年10月にシングル「東京」でメジャーデビューを果たす。2007年より主催イベント「京都音楽博覧会」をスタートさせたり、「ジョゼと虎と魚たち」「奇跡」といった映画作品の音楽を担当したりと、その活動は多岐にわたる。2023年10月に、オリジナルメンバーで制作したアルバム「感覚は道標」をリリース。2024年9月に、メジャーデビュー時より在籍していたSPEEDSTAR RECORDSとの契約を満了したことを発表し、翌10月にイタリアの音楽家ダニエレ・セーペと制作した楽曲「La Palummella」をリリースした。