音楽ナタリー PowerPush - TarO&JirO

兄弟の絆を形にした初フルアルバム

ドラムを入れて、2人だけのよさがわかった

──この1年で悔しい思いもして、エンジンを吹かしている時期に作られたのが今回のアルバム「Piranha」であると。これまで出してきた2枚のミニアルバムとはちょっと違う雰囲気を持った作品ですよね。

TarO この1年でやっぱり環境が変わったんです。まず路上ライブをしなくなったのが大きくて。路上をベースにしていたときはすぐにお客さんの心をつかまなきゃいけないからスラップメインの派手な感じにしたり、長い尺の曲にしないとかを意識してたんですよ。

JirO 路上でやれなきゃ、2人で演奏できなきゃ意味がないって思ってたのがこのアルバム以前の話で。今はもうちょっと自由になったというか。

TarO 今は制約がなくなって、楽しんで曲が作れてます。

──デビュー以降リリースしてきたミニアルバムはギター2本とキックドラムという編成の曲で占められていましたが、今作からはドラムが入った曲もありますね。

TarO&JirO

TarO そうなんです。ずっとやりたかったことができたみたいな。でもそこはやっぱりJirOが……。

──どうでしたか? 念願のドラムが入ってみて。

JirO 第3者を入れてレコーディングっていうのは新鮮でしたね。やっぱり難しかった。

TarO ドラマーには「こういうふうに叩いてほしい」っていうのは伝えていて、俺は雰囲気で「あ、いいな」て思うんです。でもJirOは「ここのスネアが」とか「キックはこっちの拍で」みたいな細かい部分が気になるみたいで(笑)。

──ライブでもドラムを入れて曲を披露したことがありますよね?

JirO 2回やってますね。先月やったライブはリハーサルの時間が当日の朝しかなくて。それだったらせいぜい2、3曲が限界かなって思ったんですけど、TarOが「せっかくだからいっぱいやろうぜ」って言い出して……。

TarO 結局ちょっと多めにやって、ライブ後に「よかったな」ってJirOに言ったら「俺のスラップのベースのノリとドラムの絡みが……」みたいな(笑)。やっぱりリズム隊としていろいろあるみたいなんです。

JirO 逆に俺は「気になんないの?」と思うけど……。

TarO そこまで気にしてたらライブできないからさ。当然全体のリズムがズレてたら俺も気になるけど、スネアの入りとかまで気にしてたらねえ。

JirO 確かにそうか。2人とも気にしちゃったらね。

──今後もドラマーを入れたりするような試行錯誤は続けていくんですか?

TarO そうですね。ジャズとか叩ける人いいかも。

JirO ジャズでもロックな感じがいいな。やっぱりある程度一緒に活動してもらわないとわからないけどね。スタジオドラマーに当日来てもらって「はい合わせましょう」はやっぱり難しい。

TarO でも今回アルバムを作ってみて気付いたのは「ペロレラ・レボリューション -Pelorella Revolution-」みたいな曲は逆に2人のほうが面白いんです。ドラムを入れてやってみることで、この曲は2人のほうがいいんだなって気付けたんですよね。だから今後はライブが面白くなりそうだなって思っていて。TarO&JirOだけのスタイルがあって、途中でドラムが入って、また2人だけでアコースティックなサウンドの曲をやって。そういう幅広いライブがやりたいですね。

アコギは“遊べる”楽器

──いろんな思考錯誤を繰り返しているようですが、お2人の持つ楽器はデビュー以降一貫してアコースティックギターですよね。

TarO もともとアコギがすごい好きっていうのがあるんです。それとアコギは表現の幅が広いというか、遊べるんですよね。

──“遊べる”っていうのはどういうことですか?

TarO 例えば、オセロゲームって白い面と黒い面を使って盤上で遊びますよね。でも別にオセロを使ってドミノ倒しをしても、サッカーゲームしてもいいんですよ。その人の捉え方次第というか。それとまったく一緒で「ここにあるアコギでコード弾きして下さい」っていうのが普通なんです。でも俺らはそこにとらわれないようにしてて、アコギの音を歪ませると面白い、ベースっぽく弾いたらどうなるだろうってところからスタートしてる。正直に言えばアコギでもエレキでもどっちでもよくて、エレキで面白いことができるんならエレキを弾くんですよ。

JirO

──2人編成でキックドラムを入れてロックをやるっていうユニットの成り立ちも、楽器の鳴らし方も、根本にあるのは“既成概念にとらわれない”という部分なんですね。

JirO 何かの真似をしても俺らが面白くないんですよ。単純に俺らは最初からルールに従って作るっていう感覚がなくて、本当に遊ぶ感覚で音楽をやってるというか。

TarO そういう精神は俺らの母親のDNAのせいかもしれないですね(笑)。

──どういうお母さんなんですか?

TarO 反骨心を持った人なんですけど、ものすごいアイデアマンで。子供の頃から俺らをすごい楽しませてくれたんです。

JirO ゲームとか買ってくれなかったもんね。外で遊ぶか「遊びは考えてやりなさい」みたいなところがあったし。

TarO 我が家には“おでんの日”っていうのがあって、そのときは母親がおでん屋のおばちゃん役をするんですよ。で、子供の俺らが客で、お猪口にお茶を入れてもらって「今日は会社でさあ」みたいな話をするっていう(笑)。

TarO そういう意味では、さっきのアコギでいろいろやるって話も、バンドできなくて2人でどうしようって話も、母親が遊び方を教えてくれたおかげだったんだと思います。

「親父の前歯が昨夜とれた」

──アルバムに収録されている「落下 -Fallout-」という曲には、お父さんが出てきますよね?

JirO はい(笑)。

──「親父の前歯が昨夜取れた」という強烈な歌詞が繰り返される曲に仕上がってますが、これは実話を歌ってるんですか?

TarO&JirO

JirO そうですね。ちょうど曲の原形になるギターのフレーズができた日の夜に親父と話してたら、「コロン」って歯がいきなり落ちてきて。親父の顔を見たら前歯がなくて、10歳ぐらい老けて見えたんですよ。やっぱり歯がないと、威厳がないというか、情けなく見えるなあと思って。

TarO 衝撃でしたね。

JirO で、翌日にそのフレーズをもとにセッションしてたら、メロディと一緒に「親父の前歯が昨夜取れた」って歌詞が出てきた。これだ、と思って。最初に出てきた言葉を大事にしたいっていうのがあるから、そこからは真面目に作って“親父に捧げるバラード”に仕上げたつもりです。親父はこの曲が嫌いみたいなんですけど……。

TarO 曲を作る上で、あんまりふざけた感じにしたくないっていうのがあるんですよ。この曲も「世の中自分に何が起きるかわからない」っていうメッセージを込めています。

──家庭内でのアクシデントをある意味哲学の領域にまで持っていってますよね。

TarO 本当に邪悪な心なしで作っているというか、自分らの本当に作りたい音楽をやりたいっていう気持ちの上で作ってるんです。正直者なんで、作る気分じゃないと曲は作れないし、「何かのために」とか考えると絶対できないんですよね。

ニューアルバム「Piranha」 / 2014年12月10日発売 / IMPERIAL RECORDS
「Piranha」
初回限定盤 [CD+DVD] 3132円 / TECI-1425
通常盤 [CD] 2592円 / TECI-1426
CD収録曲
  1. Outbreak (instrumental)
  2. ツバメ返し -Black Heart-
  3. Piranha
  4. 時限爆音 -A Burning Fuse- (instrumental)
  5. つま先 -Chasms-
  6. 孤独の哀歌 -A Ballad Of A Desert-
  7. Cube
  8. 落下 -Fallout-
  9. Upside Down Baby
  10. Right There
  11. What A Bird's Ever Seen
  12. At The Platform
  13. The Last Train For Tomorrow
  14. ペロレラ・レボリューション -Pelorella Revolution-
  15. Snake Bite[Long Version](instrumental)
  16. Silent Siren[Piranha Version]
初回限定盤DVD収録内容
  • Snake Bite~Silent Siren
  • 涸れない水たまり~Once in a while
  • Too dark to live
  • ペロレラ・レボリューション
  • Cube
TarO&JirO(タローアンドジロー)

実の兄弟であるTarOとJirOからなる2人組ロックデュオ。2本のアコースティックギターとキックドラムという編成でパフォーマンスを行う。2009年に音楽の幅を広げるためロンドンに渡り、2011年にはフランスで開催された「Japan Expo Sud」に出演。同じくフランスで行われたバンドのコンペティション「Tremplins Guitare en Scene 2011」で優勝を収めるなど海外で高く評価され、スイスの「Rock Oz' Arene 2011」など海外のライブイベントに多数出演する。2013年12月、ミニアルバム「Brothers Fight」をテイチクエンタテインメントよりリリースし、メジャーデビュー。同年夏には「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2014 in EZO」など国内のフェスにも出演し、その知名度を広めた。同年12月、1stフルアルバムとなる「Piranha」を発表した。