音楽ナタリー PowerPush - TarO&JirO

兄弟の絆を形にした初フルアルバム

本当はバンドがやりたかった

──2人だけで音楽をやることには何かこだわりがあるんですか?

JirO

TarO 実は俺ら、バンドがやりたかったんですよ。

JirO もともとバンドではTarOがギターボーカル、俺がベースでドラマーがいるっていう形で。ロンドンに行ったときも同じようなビジョンがあったから、ドラマーの募集をかけてオーディションもやったんです。でも、兄弟で共感し合うのと同じように馬が合う第3者が見つけられなかった。

TarO 兄弟でやることのメリットとして、すごく音楽的につながっていて、なんでもフィーリングでわかり合えるっていうのがあるんです。でもデメリットはそれがつながりすぎちゃってることで。

JirO 兄弟2人のコミュニケーションに慣れてしまって、俺らも第3者に伝えるのが下手になってた。

TarO 「そこもっとガッと」とかそういうやり取りばっかりだから。第3者に「ここをこうして、何小節やります」って具体的に言うのがすごくやりにくいと感じてしまう。なので結局2人で音楽をやってくしかなかったんですよね。

──ちなみに2人の音楽の趣味ってほぼ同じなんですか?

JirO だいたい同じかな。

TarO 自分が好きだと思ったものは全部聴かせるんですよ。そうすると絶対JirOも好きって言う。同じアーティストが好きな状態で曲作りに入れるから、あんまり方向性とかに食い違いがないというか、摩擦が起きないんですよね。

JirO どっちかというと俺が緻密に作り込んだ感じの音楽が好きで、TarOはもっとエモーショナルな……。

TarO ボーカルが荒い曲とかが好きですね。性格にもそれが出ているというか、弟なのにJirOのほうが落ち着いてる(笑)。

──普通は兄のほうがどっしりしているってパターンが多いですよね。

TarO JirOとは歳が3つ離れてるんですけど、小さい頃は転勤族だったこともあって、いつも俺がJirOを連れ回していて。俺と同年代の人とずっと付き合ってきたのもあるかもしれないですね。ライブでもキックドラムを踏みながら落ち着いてリズムを担当しているし。逆に俺はそのぶん暴れたくなるんですよ。

TarO&JirO

JirO 性格もあるし、ベースをやっていたこともあって、曲を聴くとリズムがすっごい気になりますね。それもあって「もっとキックをこうしてほしい」とか、ドラマーに求めるものが多くて。

──JirOさんのこだわりもあって、馬の合うドラマーが見つからなかったと。

TarO バンドの曲をやりたいけどドラマーが見つからず、アコギの弾き語りを2人でやるみたいになって。ロンドンでもずっと試行錯誤をしていたんです。弾き語りだとしっくりこないからJirOがベースで俺がエレキギターを弾いたり、打ち込みのドラムを流してやってみたり。でもやっぱり躍動感が足りなかった。いろいろやってく中で一番しっくりきたのがアコギ2本でファンクな感じのリフをかけ合う形だったんです。俺がカッティングでJirOがスラップ。それで即興みたいにやると人がいっぱい集まってチップの入りもよくて、自分たちも楽しんで演奏できた。

JirO でもロンドンにいる間は結局形が固まらなかったんです。それで、日本に帰ってきてからフランスで開催される「Japan Expo Sud」っていうイベントの出演が決まって。2人だけどどうしてもロックなことがしたいと思っている中で、キックドラムを使うってアイデアを思い付いたんです。

TarO いざ音を出してみたらコンパクトな編成なんだけど最大の音が出せてる感じがして、とりあえず「Japan Expo Sud」はこれでやってみたんです。そうしたらお客さんのウケが思いのほかよくて。それから海外でフェスに呼ばれたり、応募したオーディションに受かってコンペで優勝したり、このスタイルでいろいろと結果を出すことができたんですよね。

JirO 「Japan Expo Sud」に出たのが2011年なんですけど、この年は半年くらいフランスにいて。フェスやコンペに出る中で、キックの蹴り方とかも「ずっと四つ打ちも微妙だし、かといって変なリズムにするとノリにくいし」みたいなのを試行錯誤しながら形にしていったんです。

エンジンを吹かした日本での1年

──コンペで優勝したり、フェスに招待されたり、TarO&JirOに対する海外の評価はかなり高かったと思います。そのまま海外で音楽を続けていく選択肢はなかったんでしょうか?

TarO 俺はすごい海外でやりたかったんですけどJirOが……。

JirO 海外に住むためにはビザが必要で、学校に行くか仕事がなきゃダメなんすよ。

TarO

──すごく現実的な話ですね(笑)。

TarO そういう意味でもJirOは落ち着いているんです。俺が言い出したことをJirOが熟考して、2人で結論を出すことが多いですね。でも日本でやっていこうってことにはそんなに反対もしてなくて、新宿で路上ライブをしたらロンドンと同じようにお客さんが集まってくれたことがあって。だからこのスタイルで日本で勝負したい、とも思ってたんですよね。

──TarO&JirOは2013年12月に「Brothers Fight」でメジャーデビューを果たしてからちょうど1年が経つわけですが、日本での手応えはどうですか?

TarO 例えば海外のオーディションで優勝したときは、翌年にそのイベントのメインアクトして呼ばれたんですよね。それ以外でも有名なギタリストが出演するフェスに出させてもらったり、でっかいステージでやったりとか、海外ではすぐに結果がついてきてそれが普通だと思ってた。で、日本でも路上ライブが盛り上がったんで、デビューすればもうパーッと道が開けるものだと思っていたんですが……。

JirO 実際はまだまだこれからかなって感じでした。

TarO 今年1年でいくつか日本のフェスにも出たんですけど、やっぱり小さなステージだったり時間が早かったり。なんかこう……悔しい思いが強かったんですよね。なんか違うんじゃないか、こうじゃないんじゃないかという思いが積もったというか。それはそれでエンジンにはなるからいいんですけど、それが結局動かせないと意味ないんで。まあこの1年だいぶエンジン吹かしたかな(笑)。

ニューアルバム「Piranha」 / 2014年12月10日発売 / IMPERIAL RECORDS
「Piranha」
初回限定盤 [CD+DVD] 3132円 / TECI-1425
通常盤 [CD] 2592円 / TECI-1426
CD収録曲
  1. Outbreak (instrumental)
  2. ツバメ返し -Black Heart-
  3. Piranha
  4. 時限爆音 -A Burning Fuse- (instrumental)
  5. つま先 -Chasms-
  6. 孤独の哀歌 -A Ballad Of A Desert-
  7. Cube
  8. 落下 -Fallout-
  9. Upside Down Baby
  10. Right There
  11. What A Bird's Ever Seen
  12. At The Platform
  13. The Last Train For Tomorrow
  14. ペロレラ・レボリューション -Pelorella Revolution-
  15. Snake Bite[Long Version](instrumental)
  16. Silent Siren[Piranha Version]
初回限定盤DVD収録内容
  • Snake Bite~Silent Siren
  • 涸れない水たまり~Once in a while
  • Too dark to live
  • ペロレラ・レボリューション
  • Cube
TarO&JirO(タローアンドジロー)

実の兄弟であるTarOとJirOからなる2人組ロックデュオ。2本のアコースティックギターとキックドラムという編成でパフォーマンスを行う。2009年に音楽の幅を広げるためロンドンに渡り、2011年にはフランスで開催された「Japan Expo Sud」に出演。同じくフランスで行われたバンドのコンペティション「Tremplins Guitare en Scene 2011」で優勝を収めるなど海外で高く評価され、スイスの「Rock Oz' Arene 2011」など海外のライブイベントに多数出演する。2013年12月、ミニアルバム「Brothers Fight」をテイチクエンタテインメントよりリリースし、メジャーデビュー。同年夏には「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2014 in EZO」など国内のフェスにも出演し、その知名度を広めた。同年12月、1stフルアルバムとなる「Piranha」を発表した。