音楽ナタリー Power Push - たんこぶちん
結成10周年で打ち上げる節目の“ミサイル”
2月に結成10周年を迎えたたんこぶちんが、ニューシングル「遠距離恋愛爆撃ミサイル」を2月8日にリリースする。
シングルの表題曲は、MADOKA(Vo, G)が吉田円佳名義でヒロインを演じる映画「二度めの夏、二度と会えない君」(2017年秋公開)の劇中歌として制作されたキャッチーでエネルギッシュなアップチューン。演奏のスキルとガールズバンドとしての結束力を高めながら駆け抜けてきた彼女たちの、真骨頂とも言うべきロックサウンドに仕上げられた。またこの映画ではすべての劇中歌をたんこぶちんが手がけている。今回のインタビューでは楽曲制作に関してはもちろん、MADOKAの女優としての経験や、10周年を迎えるに当たってメンバー内に生じた意識の変化などを5人が語ってくれた。結成10周年とはいえ、現在20~21歳の彼女たち。将来性をまだまだ感じさせるたんこぶちんの魅力に迫る。
取材・文 / 上野三樹 撮影 / 塚原孝顕
私でいいのかな?
──まずは今秋に公開される映画「二度めの夏、二度と会えない君」の話を伺えればと思います。MADOKAさんが映画出演のオファーを受けたときはどんな気持ちでしたか?
MADOKA(Vo, G) 「映画に出ませんか?」というお話をいただいたときはびっくりして、「私でいいのかな?」と思ったんです。原作を読ませていただいて、主人公の森山燐ちゃんという女子高生はバンド活動をしていて音楽に関わる内容だと知りまして、作品に縁を感じました。たんこぶちんが映画の劇中歌を担当するのも初めての経験だったので率直にうれしかったです。
──MADOKAさんには、もともと女優をやってみたいという気持ちはあったんですか?
MADOKA いえ、そういう気持ちはなかったんです。
──MADOKAさん以外のメンバーは、映画に関わるお話を聞いたときどう思いましたか?
YURI(G) MADOKAが映画に出演することが決まったときはメンバーとしてすごくうれしくて。たんこぶちんとして映画の音楽の演奏を担当することにもなったし、これをきっかけにたくさんの人が私たちのことを知ってくれるだろうから、お話をいただいたからにはしっかりやりたいなと思いました。
CHIHARU(Key) 私たちは先日、完成した映画を観させていただいたんです。普段のたんこぶちんのMADOKAじゃなくて、森山燐ちゃんという役になりきったMADOKAはとても新鮮で。私たちもがんばらなきゃって勇気をもらいました。
HONOKA(Dr) MADOKAがスクリーンの中にいるのも、映画で自分たちの曲が流れるのも感動して、ゾワゾワしました。
──メンバーから見てもスクリーンの中のMADOKAさんは新鮮だったみたいですね。
MADOKA 最初は不安だらけだったんですけど、メンバーのみんながすごく支えてくれたんです。撮影期間中は毎朝4時起きだったんですけど、まずそれにビックリしちゃって(笑)。でも毎日、朝4時にHONOKAがLINEを送ってくれたんです。ときどき「ごめん寝坊しちゃったー!」って来るときもあったけど(笑)。みんなにすごく励ましてもらってやれたことだと思います。
歌うのも演技をするのも変わりはない
──劇中歌である「遠距離恋愛爆撃ミサイル」は、映画の中ではどんな役割を担っている曲なんでしょうか?
MADOKA この曲は私が演じる燐ちゃんと村上虹郎さんが演じる篠原智くんの2人が初めて一緒に演奏する曲なんです。
──青春をバンド活動に捧げる役というのはMADOKAさんご自身も重なる部分があったんじゃないですか?
MADOKA そうですね。でも燐ちゃんは不治の病を患っていて、自分の運命をわかってるからこそ一生懸命、ひと夏を駆け抜けるんです。私は続けようと思えばどこまでもバンドや音楽を続けていけると思うけど、燐ちゃんは終わりがわかってるんだと思うとすごく切なくて。だから最後のライブのシーンは「これが人生最後のライブだ」ってくらいの気持ちで演じました。たんこぶちんのいつものライブで「これが最後だ」なんて思いながらやることはないし、「もうステージでは歌えないんだ」というような気持ちにもなったことがなかったから。撮影のときは、もう自分の全部を出し切る心構えで歌い切りました。
──初めての映画の撮影で慣れないことも多かったのでは?
MADOKA まず朝4時起きっていうのが慣れなかったですから(笑)。でもセリフは歌詞みたいな感覚ですぐ覚えられたんです。歌を歌うことも演技をすることも言葉で人に伝えることに変わりはなくて、そこに共通点を感じたんですよね。撮影自体は2週間くらいだったんですけど、あとはもうがむしゃらにがんばりました(笑)。ここでがんばれば、これから音楽で表現していくうえでいい影響があるんじゃないかって思ったし、共演者の方やスタッフの方たちを含め、普段バンドをやっているだけじゃ出会えないような方たちに出会えたこともよかったです。虹郎くんや、モデルの金城茉奈ちゃん、AKB48の加藤玲奈ちゃん、山田裕貴さんとか、ホントにいろんなジャンルでそれぞれがんばっている方々から刺激をもらえました。いい出会いだったなと思います。
たんこぶちんをスリーピースバンドに
──MADOKAさんが作詞・作曲をされたシングルのカップリング曲「君に会えてよかった」は、映画の物語に通じるところがある切ない曲ですよね。
MADOKA この曲は映画の出演が決まったあとに原作を読んで、作品のことを考えながら書いたものなんです。燐ちゃんの気持ちになって、一緒に音楽をやって夏を駆け抜けてくれた仲間のことを思って書いた曲。劇中歌はコンペ形式で、いろんな作家さんが曲を提出する中で、私もこの「君に会えてよかった」など何曲か出していて。「君に会えてよかった」は「使われるかも」という感じでけっこういいところまでいったんです。結局、映画には使われなかったんですけど、今回こうしてシングルに劇中歌と一緒に入ることになりました。
──劇中歌だけでなく、映画の登場人物たちが奏でる楽曲の演奏をたんこぶちんが担当しているんですよね。
YURI はい。シングルの表題曲を含めて5曲ほどレコーディングしました。「遠距離恋愛爆撃ミサイル」もそうなんですけど“Movie version”は劇中に出てくるバンド編成に合わせてベース、ギター、ドラムの3人で演奏しています。
──映画に登場する主人公たちはスリーピースバンドですからね。
YURI だから私たちが普段演奏しているアレンジよりもシンプルにしています。ただ映画で流れるに当たって、どれだけライブ感が出せるかが大事だったのでブースに3人で一緒に入ってレコーディングをしました。
NODOKA(B) 普段キーボードがいるから気にならなかったけど、3人だけになるとなんとなく音圧が物足りなく感じて。それといつもは座ってレコーディングをするんですけど、今回はライブのシーンで使われるものでもあったので、みんなで立って弾いてました。
HONOKA 当たり前のことなんですけど、3人で演奏してみてより一層「ドラムって大事だな」と痛感しました。3人しかいないと音やアレンジも限られるし、アレンジの軸になるのがドラムなんですよね。あと映画の中でほかの人が演技しているところで、自分の叩いた音が聞こえてくるっていうのも初めてだったから、映画を観たときは新鮮でした。
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- ニューシングル「遠距離恋愛爆撃ミサイル」2017年2月8日発売 / YAMAHA MUSIC COMMUNICATIONS
- Type-A [CD] 1000円 / YCCW-30061
- Type-B [CD+DVD] 3000円 / YCCW-30062/B
- Type-C [CD+DVD] 3000円 / YCCW-30063/B
CD収録曲
- 遠距離恋愛爆撃ミサイル
- 君に会えてよかった
- 遠距離恋愛爆撃ミサイル(Instrumental)
- 君に会えてよかった(Instrumental)
- 遠距離恋愛爆撃ミサイル (Movie version)
- 遠距離恋愛爆撃ミサイル(Movie Vocalless version)
- 遠距離恋愛爆撃ミサイル(Movie Guitarless version)
- 遠距離恋愛爆撃ミサイル(Movie Bassless version)
- 遠距離恋愛爆撃ミサイル(Movie Drumless version)
Type-B DVD収録内容
TANCOBUCHIN vol.4 リリース記念ワンマンライブ at SHIBUYA CLUB QUATTRO 2016.3.13
- monster
- Let it Die ~ミッドナイト ウォーリーゲーム~
- Love Me
- メドレー(Re:GiRL~シアワセタランチュラ~唇はもっと~We Gonna ROCK)
- You
- 走れメロディー(Acoustic version)
- 鳴らせ
- ze ze ze
- Bye Bye ~君といた春~
- 花火
Type-C DVD収録内容
TANCOBUCHINデビュー3周年記念ワンマンライブ ~たんこぶちん変身ノ巻~ at SHIBUYA TSUTAYA
- 走れメロディー
- Alright !!
- うたひかれ
- さよならbaby
- はじまりのうた
- 偶然と運命
- Let it Die ~ミッドナイト ウォーリーゲーム~
- 泣いてもいいんだよ
- We Gonna ROCK
- 花火
- ドレミFUN LIFE
映画「二度めの夏、二度と会えない君」2017年秋公開予定
詳細
監督:中西健二
脚本:長谷川康夫
原作:赤城大空「二度めの夏、二度と会えない君」(ガガガ文庫)
製作:「二度めの夏、二度と会えない君」パートナーズ
配給:キノフィルムズ
出演:村上虹郎、吉田円佳(たんこぶちん)、加藤玲奈(AKB48)、金城茉奈、山田裕貴
たんこぶちん
2007年、MADOKA(G, Vo)、YURI(G)、CHIHARU(Key)、NODOKA(B)、HONOKA(Dr)らが小学校の課外活動の一環として佐賀県唐津市で結成したガールズバンド。九州を中心にライブ活動を行うかたわら、ヤマハ主催「Music Revolution」など、さまざまな音楽コンテストで各賞を受賞する。2008年には唐津と姉妹都市提携を結んでいる韓国・麗水市との交流イベント「麗水市国際青年祝祭」や、2013年には「ARABAKI ROCK FEST.13」、「ROCK IN JAPAN FES.2013」にも登場。さらに2008年放送の「M PRESENTS 全力!Tunes」(日本テレビ系)や、2012年の「AKBINGO! サマースペシャル ! 全力バンド選手権」(同)に出演し、MADOKAがGoogleのCMキャラクターに選ばれるなど、各方面にその名を轟かせ、2013年7月に「ドレミFUN LIFE」でメジャーデビューを果たした。2015年1月には2ndアルバム「TANCOBUCHIN vol.2」を発表。2017年2月にはMADOKAが主演を務める映画「二度めの夏、二度と会えない君」の劇中歌を表題曲に据えたニューシングル「遠距離恋愛爆撃ミサイル」を発表する。