かくれんぼは1人ではできない
──全12曲、ほどよくライトにも楽しめる、まとまり感のあるアルバムだなと思いました。
ホントですか? よかったです。ホントに途中までは「辛気臭いアルバムになりそうだな」と思っていたので(笑)。
──今日の話を聞いてもなお辛気臭いと感じる要素は全然ないですけどね。
「辛気臭い」という言葉の選び方が間違ってるかもしれませんけど(笑)……なんだろうな、お客さんにとってのわかりやすい曲がないなーという印象が作っている途中はずっとあったんですよね。結果、自分でも大好きな曲ばかりですし、仕上がりにも満足しています。
──ちなみにアルバムタイトルはなぜ「かくれんぼ。」に?
前作を「あいことば。」というタイトルにしたら……オタクの人は基本、長いタイトルが好きじゃないですか。「なんとかかんとかのなんとかの花」みたいな。でも「あいことば。」はすごく好評で。なんでかなって考えると、「あいことば。」って独り言じゃないんですよね。私からの言葉だけど、あなたも共有することができるという相互性がある。今回もそういうタイトルがいいなと思って。かくれんぼも1人じゃできないですよね。
──必ず1人以上の相手が介在する遊びですね。
それで付けたタイトルなんです。どういう意味なのかは皆さん勝手に考察すると思いますけど(笑)。
──ツアーを控えている中で「楽しく歌える曲がまた増えた」という感じがあるのでは?
そうですね。もちろんツアーのセットリストにもガンガン入れていますし。ただ、「Candy tuft」と「あいことば。」の曲は当然コロナ禍でしかライブで歌っていなくて、お客さんが声を出せる状態で歌ってみたい曲もたくさんあるので……セットリストを組むのはけっこう難しいですね。
──あれもこれもと考えていたら、曲数がすごいことになりそうですよね。
そうなんですよ! 意外とやれる曲が限られてきちゃうな、どうしよう……と思っちゃって。
──もちろんコール&レスポンスやシンガロングができる曲もあるでしょうし、そういう曲ばかりでもないでしょうし。とはいえ、やっぱり王国民は「声を出すぞ!」という気持ちでいるのではないでしょうか。
そうは言っても、でも君たちもお年を召してきてますよね?って思うんですよね。この間のバースデーライブのときには、みんなひさしぶりに飛び跳ねて声を出していて、結果「あれ? 俺、こんなに体力なかったっけ……」って感想を見かけたので(笑)。こっちはそんなに激しくやる想定じゃないセットリストだったのに、もうへばってるじゃん!って思っちゃって。思い出を追い求め続けるだけじゃなくて、もうちょっと気楽にいこうよと言いたいです。
──声出せるっちゃあ出せるので、まあ適度にと。
声出し解禁になったからっていつでもどこでも奇声を発していいわけではないし。ちょっと笑い声を出しただけで隣の人に睨まれちゃうとか、それがなくなっただけでもいいじゃんって。もちろん盛り上げてほしいという気持ちもあるので「声を出すな」と言ってるわけじゃないんですけど。
みんなで音楽をやることが、今は楽しくて居心地がいい
──しかし今回のツアー、けっこうな本数ですよね。4月に始まって9月まで、計28公演が予定されています。
そうですね。多くなっちゃいました。ライブ制作会社の方は候補としてこの日程を挙げていただけで、それをほぼほぼ全部やるとは思ってなかったんじゃないかな(笑)。でも、候補で挙がっている会場を見てたらやりたくなるじゃないですか。「ここ空いてたよ」って言われたら。「あっ、じゃあやります」って答えてたらこの本数になりました(笑)。「なんだったらここ間が空いてるから埋めてくださいよ」とか言って。
──アルバムをコンスタントに出して、ライブもこんなにやって……すごく音楽活動に対して精力的ですよね。
なんだかわからないですけど……やりたいんでしょうね、今。
──作品を出してツアーを回って、というアーティストのルーティンを、これからも続けていくのかしらと。
それはまだわからないですけど。ただまあ、たぶん……自分のことなのになんだ「たぶん」って(笑)。あの、作品を作って、みんなで音楽をやるということが、今は楽しくて居心地がいいんだと思います。イヤイヤやってるんじゃなく、やりたくてやってる感じが自分の中にすごくあって。
──少し前まではそんなことなかったですよね? もっと消極的な発言が多かったように思います。
このコロナ禍で、肩の力が逆に抜けたのかな?って気がしますね。今までの「ゆかりんのライブはコールがあってどうこう」みたいなところから「そうじゃなくてもいいじゃん」と思えるようになったことも大きいかもしれない。
──それを求められるし、それをやる、みたいなところからちょっと抜け出せたと。
もちろん突き放すわけじゃないし、そういう曲も「このへんで盛り上がりたいだろうな」というところでセットリストの要所要所に入れてますけど、なんだろうな、自然体で楽しくやれていますね。だから次もやりたくなるっていう。……言葉にしてみるとすごくポジティブな感じになりますけど、日常的にそうかと言われるとそうでもないし、そんなに変化があったとは自分では思わないですけど。ダンスリハとか絶対にやりたくないし。
──(笑)。
振付のリハはイヤですよ。本番で歌うのはいいけど、踊るのとかはヤだ(笑)。
──そのアンビバレントはどうにかならないんですか(笑)。100%楽しいー!みたいな状態にはならないんでしょうか。
だって踊りとか苦手なんだもん。運動神経悪すぎるから。お客さんは視覚的にも楽しみたいだろうから、踊れないなりに動かないと、と思ってやってますけど……だって私、ダンスの先生に「ゆかりさんが何かをやってカッコいいことなんか1コもないんだから」って言われてるんですよ(笑)。「カッコいいことなんて1コもないから大丈夫だよ!」って、そのなぐさめ方は何?っていう。
──(笑)。世間的にダンスへの理解が深まっているから、見られる側のハードルも高くなりそうですよね。
私のは、おぼつかない足取りの人が動いている「守ってあげたい!」のやつなんで。庇護欲のやつなんで大丈夫です(笑)。昔は私、ライブよりもレコーディングのほうが好きだったんですよ。でも今は、お客さんが目の前にいて歌っているほうが楽しいなと思いますね。もしかしたら「下手くそでもいいや」と思えるようになったのかもしれない。多少音が外れちゃってもいっかなー、と思って飛びながら歌っちゃったりすることが最近は多くて。よくないことかもしれないけど、それを自分の中で許容できるようになったのが、楽しくなった1つの要素かもしれないですね。
公演情報
田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2023 *with me?*
- 2023年4月22日(土)埼玉県 川口総合文化センターリリア
- 2023年4月23日(日)栃木県 栃木県総合文化センター メインホール
- 2023年4月29日(土・祝)広島県 広島文化学園HBGホール
- 2023年4月30日(日)大阪府 グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)
- 2023年5月5日(金・祝)新潟県 新潟テルサ
- 2023年5月7日(日)神奈川県 神奈川県民ホール
- 2023年5月28日(日)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
- 2023年6月3日(土)岡山県 倉敷市民会館
- 2023年6月4日(日)京都府 ロームシアター京都 メインホール
- 2023年6月10日(土)静岡県 アクトシティ浜松 大ホール
- 2023年6月17日(土)茨城県 ザ・ヒロサワ・シティ会館(茨城県立県民文化センター)大ホール
- 2023年6月18日(日)東京都 J:COMホール八王子
- 2023年6月24日(土)石川県 北陸電力会館 本多の森ホール
- 2023年6月25日(日)長野県 ホクト文化ホール 大ホール
- 2023年7月1日(土)愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
- 2023年7月2日(日)三重県 四日市市文化会館 第1ホール
- 2023年7月8日(土)埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール
- 2023年7月9日(日)神奈川県 横須賀芸術劇場 よこすか劇場
- 2023年7月17日(月・祝)群馬県 高崎芸術劇場 大劇場
- 2023年7月22日(土)北海道カナモトホール(札幌市民ホール)
- 2023年8月5日(土)岩手県 盛岡市民文化ホール 大ホール
- 2023年8月6日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2023年8月11日(金・祝)静岡県 富士市文化会館ロゼシアター
- 2023年8月13日(日)奈良県 なら100年会館 大ホール
- 2023年8月19日(土)福岡県 福岡サンパレス
- 2023年8月20日(日)大阪府 グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)
- 2023年9月2日(土)東京都 東京ガーデンシアター
- 2023年9月3日(日)東京都 東京ガーデンシアター
プロフィール
田村ゆかり(タムラユカリ)
2月27日生まれ、福岡出身の声優アーティスト。1997年にCDデビューを果たし、声優および歌手としての活動を始める。いずれも精力的な活動で着実に評価を集め、2008年には声優として3人目となる日本武道館公演を行った。2017年に自身のレーベル・Cana ariaを立ち上げ、同年11月にCana aria第1弾作品となるミニアルバム「Princess ♡ Limited」を発表。以降もコンスタントに作品をリリースしている。2023年4月に最新オリジナルアルバム「かくれんぼ。」を発表。同年4月から9月にかけて全国ツアー「田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2023 *with me?*」を行う。
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