音楽ナタリー Power Push - 瀧川ありさ

“同じ歩幅で歩けない私”だから歌える肯定ソング

瀧川ありさが5枚目となるシングル「色褪せない瞳」をリリースした。

表題曲は、テレビアニメ「七つの大罪 聖戦の予兆」のエンディングテーマとして採用されたナンバー。レコーディングにはGalileo Galileiの佐孝仁司(B)とla la larksのターキー(Dr)が参加しており、瀧川が作り出した楽曲に彩りを添えている。

「君には君にだけの 幸せの場所がある」といった、聴き手を肯定するような歌詞も魅力的なこの曲。どのようにして楽曲が誕生したのか瀧川に語ってもらった。

取材 / 成松哲 文 / 中野明子 ライブ撮影 / M.キセキ

意外だった「七つの大罪 聖戦の予兆」とのタイアップ

──アニメ「七つの大罪 聖戦の予兆」のエンディングテーマということで、「七つの大罪」のエンディングテーマだったデビュー曲「Season」みたいな派手めの曲かなと思いきや、サウンドがけっこう渋いですね。

渋くなっちゃいました(笑)。

──すごく明るい曲ではあるし、歌詞も前向きなんですけど、抑制が効いてるというか。BPMが速いわけでもなし、アニメのエンディングだからといってバラードなわけでもない。アニメソングとしては珍しいタイプのテンポですよね。

そうなんです。あの、「七つの大罪」の制作スタッフさんがこの曲を気に入ってくださって。そこから歌詞を書き下ろしたんです。私的にも意外だったんですよ、この曲が選ばれるのは。「Season」っぽい曲を求められてるのかなと思って、いろいろ書いてたんですけど、結果選ばれたのはこの曲で。お話をいただく前からあった曲なので、ある意味自分のピュアな部分が出た曲ですね。

──それって幸せなことですよね。瀧川さんが気持ちがいいと思ってる音がほかの人たちにも「いいじゃん」って認められたということですから。

はい。

──今回の曲はリズム隊にGalileo Galileiの佐孝仁司さん(B)と、元GO!GO!7188で現在la la larksのターキーさん(Dr)が参加しています。この2人の参加が曲の渋さにつながっている気がします。

そうだと思いますね。お二方共私が自分がすごく好きなミュージシャンだし、2人に任せることができたからこそ、一筋縄ではいかない渋い感じが生まれたんだなと思います。

私同世代フェチなんです

──佐孝さんとターキーさんはどういう経緯でこの曲に参加することに?

私が好きな人たちだから、声をかけさせていただきました。

──瀧川さんが感じるGalileo Galileiの魅力って?

私に限らず、私の世代はみんな、同世代のGalileo Galileiに憧れていたと思うんです。

──閃光ライオットを鮮やかに勝ち上がって、メジャーデビューして、人気アニメのタイアップでヒットも生んで、ですもんね。

でも若くしてデビューするときっと苦労も多かったと思うし、実際、彼らはそれを隠さないんですよね。例えば「今どういう思いをしてるのか」とか「何が嫌で、何が好きだ」とかっていう思いをちゃんと言葉にして、音でも表現している。なんか大人に言わされてないというか、すごく信頼できたんですよね。

──今聴いている音楽のことから、自身を取り巻く状況のことまで、ホントに全部を音に刻印するバンドですもんね。

周りに飲まれず、ちゃんと自分たちというものを確立していて。メンバーの脱退もあったにも関わらず、常に「今が一番いい状態」でいられるのもすごい。だからすごく好きです。

──Galileo Galileiが世に出てきた頃、嫉妬はありましたか? 2010年頃というと瀧川さんはご自身のバンドが解散してしまい“沼のような生活”を送っていたと言っていましたけど(参照:瀧川ありさ「Season」インタビュー)。

嫉妬はなかったですね。私、基本的に周りの人たちがバーンって売れたりすると「よっしゃ!」ってなるタイプなので。同世代フェチなんですよ(笑)。同世代が売れると超うれしいんです。

──その世代への思いがあるから、過去には「1991」という自分の生年を冠した曲を書いた?(参照:瀧川ありさ「さよならのゆくえ」インタビュー

「同世代のみんな、行け! 行け!」って感じですから(笑)。The SALOVERSがドーンと行ったときも「この人たちががんばってくれるなら、私は音楽やらなくてもいいのかもな」って思ったくらいなので。

──それは初めてのインタビューでもおっしゃってましたね。

そうなんです。それは今も心のどこかにありますね。

GO!GO!7188は中学生がコピーしてもクソ楽しかった

──一方のターキーさんについては、瀧川さんは学生時代、GO!GO!7188の曲をカバーしていたんですよね。

瀧川ありさ

GO!GO!7188に関しては、私の世代のバンドをやっている女の子にとって、チャットモンチーのちょっと手前。メンバー全員が女性というわけではないんですけど、最初に知った女性ボーカルバンドというか。とにかく軽音部の女の子全員が「『こいのうた』すげえ」みたいな感じになってた。みんな「こいのうた」を知ってたし、ガールズバンドはまず「こいのうた」をやるっていうしきたりがあるくらいで。

──瀧川さんの学校に限らず、今も中学、高校の軽音部でのGO!GO!7188人気ってハンパないんですよね。

GO!GO!7188の曲って「バンドやってるぜ!」って感じがすごいあったんです。「GO!GO!7188弾くの、めっちゃ楽しー!」って感じというか(笑)。あのユウさんの独特の歌い方もマネしましたね。

──そんなにお好きでしたか(笑)。

あと私、School Food Punishmentも聴いていて。だからGO!GO!7188が解散したあとにターキーさんが加入したla la larksって、私が好きなバンドの人たちが全員集結したみたいな感じだったんですよ。ターキーさんというか、la la larksは(TSUTAYA)O-EASTのスタッフの方がつないでくださったんですけど、曲を聴いたとき「確かに今の私が好きな感じに近いな」って思って。それ以来、対バンに誘っていただいたりもしていたので、今回も声をかけさせていただきました。

──今、瀧川さんのお話を聞いて改めて「ターキーさんってすごいな」と思ったんですけど、GO!GO!7188のときはそれこそ「バンド、楽しー!」っていう抜けのいいガレージパンクをやっていたはずなんですよね。でも、la la larksになるとド変態極まりない複雑なドラムを叩いている(笑)。

そうなんですよ。しかも、どちらも完璧にこなしてるところがさすがだなと思って。今回はそんな2人のサポートによって、面白いレコーディングになりました。

二ューシングル「色褪せない瞳」/ 2016年9月7日発売 / SME Records
期間生産限定盤 [CD+DVD] / 1500円 / SECL-1971~2
通常盤 [CD] / 1300円 / SECL-1970
CD収録曲
  1. 色褪せない瞳
  2. anything
  3. Goodbye,I love you
  4. 色褪せない瞳 -Instrumental-
期間生産限定盤DVD収録内容
  • 色褪せない瞳 Music Video
瀧川ありさ(タキガワアリサ)

1991年5月生まれ、東京出身のシンガーソングライター。幼少期より音楽に親しみ、中学2年生のときからバンド活動を開始した。高校卒業と前後してバンドが解散すると1年のブランクののち、ソロアーティストとして活動を再開する。2015年3月にアニメ「七つの大罪」のエンディングテーマ「Season」を収録したシングルでメジャーデビュー。7月に2ndシングル「夏の花」、11月にはアニメ「終物語」のエンディングテーマに採用された3rdシングル「さよならのゆくえ」を発表する。2016年4月に4枚目のシングル「Again」、9月にアニメ「七つの大罪 聖戦の予兆」のエンディングテーマ「色褪せない瞳」を収録したシングルをリリース。