音楽ナタリー PowerPush - 瀧川ありさ×久野美咲

「七つの大罪」、ミント、散歩に見る2人の関係

瀧川ありさが歌い続けるワケ

──クレジットされている名前なら歌える話って、まさに久野さんのホークだから声を張れる話と同じですよね。ただ、そこまでして歌う理由って?

瀧川 歌っているときが一番幸せだからですね。自分の作った曲を自分で歌えているっていう状況がすごく好きなんです。これが例えば男の子なら、バンドをやる理由ってモテたいからだったりもすると思うんですけど……。

久野 そうなんですかっ!?

──大きな動機の1つではありますよ。

瀧川 ですよね。そしてちゃんとモテるんですよ。楽器を弾いてる姿ってやっぱりカッコいいですから。

久野美咲

久野 ああ、なるほど。

瀧川 女性の場合も、もちろん男性人気と高い音楽性をちゃんと両立なさってる方はいるんですけど、人見知りの私はモテ以前の問題というか……(笑)。

久野 そんなことないです! 瀧川さんの歌、ステキですもん!

──なぜか久野さんが世の男性リスナーの声を代弁し始めてる(笑)。

瀧川 あはははは(笑)。

──でも実際、サンシャイン噴水広場でのイベント(参照:瀧川ありさ、300人とデビューを祝福&全国インストア行脚)なんかには男性ファンもいっぱい駆けつけたわけですよね?

瀧川 ありがたいことにそうなんですけど、男性のファンからは「中身が残念」って言われちゃってますし(笑)。だからやっぱりモテは動機になり得なくて、歌いたいから歌ってるだけって感じなんです。ただ、音楽を通じてであれば、人見知りな私であっても「残念」って言ってくれるファンの方や、それこそ久野さんにだって出会うことができるんですよね。それは軽音楽部に入った中学生の頃や、ほとんどお客さんがいなかったバンド時代には知らなかった。デビューしたから発見できたことなんですけど、だからイベントやライブでお客さんを見るといっつも泣きそうになっちゃうし、今は聴いてくれる人たちのためにもがんばろうっていう使命感もありますね。

久野 わかります。私もイベントに出るときって恥ずかしいし自信もないから、いっつもうつむいちゃうんですけど、お客さんに「久野ちゃーん!」って声をかけてもらうと顔を上げる勇気が湧きますから。

久野美咲が演じ続けるワケ

──じゃあ番組中にあった瀧川さんの「『七つの大罪』のキャラクターの中ではホークが一番好き」っていう発言も……。

久野 すごくうれしかったですね。

──ただ「自分は『ホーク役の久野美咲』じゃなくて『ホーク』でいい」と思っている久野さんもいるんですよね?

久野 それはきっと瀧川さんの動機の話と似ていて、私自身を認めていただくことだけがお芝居をする目的ではないからというか。実は「なんで私はお芝居をしてるのかな?」っていうことを考えた時期があって。小学生のときは「周りの人たちからホメてもらったり、賛同してもらったりしたいからなのかな?」って気もしていたんですけど、ある日「究極的な話、たとえ観てくれる人や聴いてくれる人がいなくても私はお芝居をするんじゃないかな」って気付いたんです。私はお芝居という表現方法や行為自体に魅力を感じているんです。私が今お芝居を続けていられるのは周りの人たちのおかげなので、感謝の気持ちを忘れたことはないですし、応援してくださる皆さんのためにがんばりたいとも思っているのはもちろんなんですけど。

瀧川 ただ、好きでやってるだけだったりもするから、誰かが自分のことを観ていたり聴いていたりすることって実は明確に想像できなかったりもするんですよね。

久野 そうですね。

瀧川 でも、それだからこそみんなが応援してくれることがうれしいし、励みにもなるし。

久野 本当にそういう感じなんですよね。

「Season」にただよう、ある香り

──そして実際に久野さんは瀧川さんの楽曲を“聴いている人”だった。番組中、瀧川さんのデビュー曲で「七つの大罪」のエンディングテーマの「Season」をヘビーローテションしていると言っていたし、あと聴いていると“ミント感”がするっておっしゃってましたよね?

久野 はい。

──その“ミント感”ってもうちょっと具体的に説明できたりします?

久野 うーん……。お料理なんかで使うミントのようなスーッとする感じじゃなくて、森に入ったときみたいな匂いに近いのかなあ。土の匂いじゃなくて、森のもっと上のほうの香り。たくさんの葉っぱに囲まれたときのような香りのする曲だな、って。

──「ミントや生い茂った葉の香りのようにさわやかな曲だ」っていうこと?

久野 いえ。もちろん本当に匂いがしているわけではないんですけど、聴いていると、なんかそういう香りを感じるんです。

瀧川 それ、めちゃめちゃ面白いです!

久野 ……私、変ですか?

──変ではないものの、好きな曲を「いい香りがする」って評するのはユニークだと思いますよ。

瀧川ありさ

瀧川 すごいことですよね。しかも自分の曲でミントなんてさわやかな匂いを感じていただけているなんて。

久野 逆にあの曲ではイヤな匂いは思い浮かべられないと思います(笑)。

──その匂いは「Season」の何が感じさせるものなんですか? メロディ? アレンジ? 歌詞?

久野 歌声ですね。すごく心地よい匂いのする声だなって思ってます。で、たぶん匂いを感じるっていうのもそういうことなんだと思うんですけど、私、好きな音楽を聴いてると違う感覚になれるというか、ぶっ飛べるんですよ。

瀧川 ぶっ飛べる?

久野 なんにもしなくても平気になっちゃうんです。何か作業をしていても好きな曲が流れてきたら完全にその世界に入り込んで手が止まっちゃって。もう音楽以外何もいらない!ってなっちゃうんです(笑)。

──じゃあ瀧川さんの「Season」も……。

久野 何もいらなくなる音楽ですね。聴くときは「Season」を聴くだけ。それ以外何もできなくなっちゃいます。……というか、こんなこと言ってしまって大丈夫ですか?

瀧川 全っ然っ! 私の声にさわやかな匂いを感じてくれている上に、そこまで集中して聴いてくださっているのはホントにうれしいことですから。

久野 よかったあ(笑)。でも本当に瀧川さんの曲は心の支えになってるんです。

メジャーデビューシングル「Season」2015年3月4日発売 / SME Records
通常盤 [CD] 1300円 / SECL-1646 / Amazon.co.jp
アニメ盤 [CD+DVD] 1500円 / SECL-1647~8 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. Season
  2. ロストラブレター
  3. ふたりよがり
アニメ盤DVD収録内容
  • 「七つの大罪」ノンクレジットエンディング
「ラジオ七つの大罪 <豚の帽子>亭 ホークトーク」

アニメ「七つの大罪」の劇中にも登場するレストラン「<豚の帽子>亭」のラジオ支店“店長”を務める久野美咲が、毎週出演声優やテーマソングのアーティストらを迎えて、アニメを盛り上げるべくトークを繰り広げるインターネットラジオ番組。

「ラジオ七つの大罪 <豚の帽子>亭ホークトーク」

瀧川ありさ(タキガワアリサ)

瀧川ありさ

5月8日、東京都生まれのシンガーソングライター。幼少期より音楽に親しみ、小学2年生の頃から本格的な歌手を目指す。中学2年生のときからバンド活動を開始し、高校時代には彼女の手がける楽曲群が数多くのコンテストで評価を集める。高校卒業と前後してバンドが解散すると1年のブランクののち、ソロアーティストとして活動を再開。2015年3月4日、アニメ「七つの大罪」1~3月期のエンディングテーマにして、デビューシングル「Season」をリリースした。

久野美咲(クノミサキ)

1月19日、東京都生まれの声優。6歳のとき子役としてキャリアをスタートさせ「ミュージカル オズの魔法使い」「放浪記」などの舞台に出演。その後、声優活動を展開し、2010年の映画「いばらの王 -King of Thorn-」のアリスを演じたのを契機に「ガリレイドンナ」のグランデロッソ、「世界征服~謀略のズヴィズダー~」の星宮ケイト、「selector infected WIXOSS」「selector spread WIXOSS」のタマなど人気アニメの主要キャラクターに立て続けに抜擢される。2014年10月からはアニメ「七つの大罪」のキャラクター・ホークの声を担当。