竹内朱莉は「あたしがいなきゃ 始まらないでしょ」気質

──朱莉さんはアンナさんの楽曲を聴いたときに、どんな印象を受けますか？

朱莉　アンナちゃんの曲はすべての言葉がちゃんと頭に入ってくるから、聴いていてスカッとするんです。よく難しい言葉とか使っていると「あれ、今なんて言ってた？」とか「これどういう意味だろう？」と止まってしまうこともあるんですけど、アンナちゃんの言葉はストレートに刺さる。初めて聴いたときから素敵だなって。お散歩とか外に出たときに聴きたくなる曲ばかりで、最近車の免許を取ったからドライブのときにシャッフルで音楽を流しているんだけど、アンナちゃんの曲が始まると気持ちがたかぶりますね。

アンナ　うれしい。

朱莉　今回のアルバムも「それ欲しかった言葉！」みたいなフレーズがたくさん入っていたし、「あ、わかる！」と共感できることもたくさんあったので。もちろん同世代だからというのもあると思うし、アンナちゃんだから出せた言葉だと思うんです。

アンナ　今回のアルバム「DRAMAS」は「なんてことない瞬間の切り取りがドラマになる」と謳っているんだけど、その“なんてことない瞬間”って誰しも絶対にあると思っていて。本当に誰にでも刺さる言葉とか誰もが経験したことのある瞬間を描きたいなと思って作った12曲なので、今朱莉ちゃんが言ってくれたみたいに「欲しかった言葉がここにある」と思ってもらえることがすごくうれしいです。いつも大切にしているのは、自分の曲だけど自分の曲じゃないようにすること。曲が届いた先で、その人の色に染まれるように余白を作るように心がけています。

──朱莉さんがアルバム「DRAMAS」の中で特にお気に入りの曲は？

朱莉　私は「WILD & FREE」がめちゃめちゃ好き。最初にアルバムを通して聴いた中で、バックトラック含めてめっちゃカッコいいなと思いました。歌詞もじっくり読んだら、「あたしがいなきゃ 始まらないでしょ」っていうフレーズが出てきて。そのマインド大好き。

アンナ　確かにこの曲、朱莉ちゃんにすごく似合うと思う！

朱莉　私自身が「あたしがいなきゃ 始まらないでしょ」っていう気質なので（笑）、全部が刺さりまくったし、すべて自分好みです。

アンナ　やった！ 「WILD & FREE」で謳ってるのは自分の曲作りの根幹にあるテーマで。やっぱり、自分がいないと自分の人生は始まらないんだよね。それってすごく当たり前のことなんだけど、意外と見落としがちでもあって。だから、「あなたの人生、あなたのドラマはあなたがいないと始まらないからね」ということを、この曲たちを通して気付いてもらうきっかけになったらいいなとすごく思います。

朱莉　あと、「Bye Bye, Hello」も背中を押してくれる前向きな楽曲で。私は別に落ち込んでいるわけではないし、誰かに「大丈夫だよ」と言われたいわけでもないんだけど、音楽に助けてもらいたい瞬間がよくあるんです。「Bye Bye, Hello」はまさにそういう曲だと思って。何かにチャレンジしたいなと思ったときに聴くと1歩踏み出せそうなので、次にそういう気持ちになったら絶対に聴こうと思いました。

アンナ　私も同じように、誰かから応援の言葉が欲しいわけじゃないんだけど、ちょっとやる気を引き出してほしい瞬間がよくあって。そういうときって「がんばれ！」って言葉じゃなくて、音楽で気持ちを上げたいんですよね。私自身も曲を作るとき、みんなの気持ちを明るいほうに引っ張っていけたらいいなと常に考えているので、そう言ってもらえるのはすごくうれしいな。

心に残る音楽の定義

朱莉　曲について話し出したらキリがないんですけど（笑）。

アンナ　いいよ、言って言って（笑）。

朱莉　「最幸のふたり」は、音源より先にライブで初めて聴いたんだけど、意味もわからないくらいすごくジーンと来たんですよ。こんなに心が温まる楽曲にあんまり出会ったことないと思って。しかも最初に聴いたのがライブだったから、スッと体に入ってくるような、曲が寄り添ってくれる感じがすごく素敵。テンポもちょうどよくて、大好きですね。

アンナ　ありがとうございます！

朱莉　1曲1曲にドラマがあるからこそ、「確かにこう思ったこと、自分にもあるな」というのが必ず1曲に1つはあるので、すごいなと思ったよ。こんなに身近に感じる曲がたくさん入ってるアルバムって、なかなかないんじゃないかな。

アンナ　うれしいなあ。私は“距離感”をすごく意識していて、1stアルバム「MATOUSIC」（2020年3月発売）の頃と比べると（参照：竹内アンナ「MATOUSIC」インタビュー）、リスナーとの距離が縮まった気がするんですね。それは、曲を届ける方向が最初は「私から私へ」という自分を主体にすることが多かったんだけど、だんだんと「私からあなたへ」と他者に向いてる曲が増えてきて。「あなたに届かないと曲は始まらない」と改めて気付けたことで、私の曲がどれだけみんなの心の近くにいられるかをすごく考えるようになりました。この5年くらいで、難しいことを言わずにシンプルな言葉の並びでどれだけ自分が見せたい景色をみんなにも届けられるかを、自然と意識するように変わっていきました。

朱莉　私が小学生、中学生ぐらいのときに聴いていた音楽は、アンナちゃんの曲と同じように心地よいテンポで、心地よい言葉が並んでいたなと思う。心に残る音楽、聴き手に影響を与える音楽はそういうものなのかもしれないよね。

アンナ　うん。私も昔聴いていた音楽のことはずっと大好きだし、今はK-POPも大好き。だから、現在進行形で聴いている音楽と、ずっと昔から聴いている音楽をバランスよく、自分の好きな形でこの12曲に反映できたかなと思います。

声がおしゃれすぎて逆に引いた

──アンナさんの歌声についてはいかがですか？

朱莉　すごい。って語彙力ゼロだなあ（笑）。

アンナ　あははは。それが一番うれしいよ。

朱莉　ライブで初めて生の歌声を聴いたとき、その声がおしゃれすぎて「えっ？」って逆に引いた（笑）。なんでそんなにすべてがおしゃれなんだという。もちろん曲ごとに歌い方が違ったりするのも魅力なんですけど、第一印象は歌声がおしゃれだということ。ちょっとジャズ系の楽曲が似合う声だなと感じました。歌手という共通点はあるけど、こんなにも空気感とか世界観とかすべてが違うのかと……「カッコよすぎるこの人！」って思いました。

アンナ　すごいベタ褒めしてくれる（笑）。ありがとうございます！

朱莉　だから、Billboard Liveでカクテル頼んじゃったもん（笑）。「ノンアルもありますけど」って聞かれたけど、「アルコールありでお願いします」って。

アンナ　ちゃんと楽しんでくれてる。うれしい！

朱莉　ちょっと浸りたいと思ったから、初めてそういう場で自らお酒を飲みました（笑）。自分が活動してきた世界とは違いすぎて、すごく楽しかったです。できることなら、1回アンナちゃんに生まれ変わってみたい！

アンナ　確かに、私も入れ替わってみたい（笑）。声がおしゃれって褒めてもらうことはあまりないので、すごく新鮮でうれしい。確かに、歌い方も曲によって変えていて。というのも、歌詞を書くときは自分の経験をもとにはしているんですけど、ショートストーリーみたいなのを作るんですね。主人公の設定も名前から身長、髪色、音楽の好みとかけっこう細かく考えて、そのお話をもとに歌詞を書き起こすから、自分の話なんだけど自分じゃない主人公が存在する。その主人公になりきって歌うから、楽曲によって全然歌声が変わると思うんです。それで言うと、私は自分で曲を作って、歌詞に毎回違う主人公を立てて歌っているけど、朱莉ちゃんは曲をもらってから、どんな感じで歌っていたの？

朱莉　まず歌詞を読んで、その世界にどれだけ入れるかというのは意識していたかな。そこから、例えば失恋ソングだったら失恋の映画とか小説をインプットして、「こうしたら悲しく見える」みたいに学んでいく。あとは、海外アーティストのライブ映像を観て、いろんな表現を勉強することもあったかな。日本の方と海外の方は感情表現が全然違うから、いろんなところからちょっとずつ摘んで、自分なりに消化してました。

アンナ　いろいろ集めて混ぜたら、朱莉ちゃんっぽい表現になると。

朱莉　そうだね。あとは、グループアイドルはメンバーの数も多いから、「ここでカメラに抜かれる」というのが事前にわかっていると「ここではこういう顔をしよう」と考えたり。レコーディングでは歌に感情を入れ込んで、ライブになると「このフレーズでは目を逸らしておく」みたいな感じでやっていたな。

アンナ　実は、個人的にここ2年ぐらいダンスを習っていて。それは誰かの前で披露する目的じゃなくて、シンプルに趣味として始めたんだけど、普段はギターを弾いて表現しているのに、何も持たない状態で「どうぞ表現してください」と言われたらこんなに難しいんだとびっくりしたんです。歌って踊りながら、表情とかそれこそ指先まで使って自分の伝えたいことを表現するって、改めて「アイドルってすごい！」と思いました。

朱莉　ありがとうございます。

竹内アンナが踊るかも

──アンナさんは7月にワンマンライブも控えていますが、これからお互いの展望を聞かせてください。

朱莉　私は今書道家としての活動が中心なんですけど、たまに歌ったり踊ったりもしていて。なので、いつかはアンナちゃんと一緒にライブができたらなと思っているんです。

アンナ　うん、したいね！

朱莉　それを夢の1つとして掲げて、これからもがんばりたいなと思います。それまでにおしゃれな声で歌えるようにならないと（笑）。

アンナ　私もパワフルさを身に付けておかないと（笑）。

朱莉　そうしたら、ダンスを披露してくれるかもしれないし。

アンナ　やらないやらない（笑）。私はまずアルバムが出たばかりなので、これをたくさんの人に届けたいですし、届いた先で皆さんの日常を彩れたらなというのがまず1つ。そして、7月にはデビュー5周年を記念したワンマンライブがあるので、ここまでの5年を振り返りつつ、この先私がどんな音楽を作っていくのか、どんなパフォーマンスをしていくのか、竹内アンナの未来が楽しみになるようなライブを作っていきたいなと。あと、私も朱莉ちゃんに曲を提供できたらなと思っています。

朱莉　ぜび書いてほしい！