高垣彩陽が9月26日にカバーミニアルバム「melodia 4」をリリースする。
「melodia」は高垣が2011年11月リリースの第1弾より展開してきたカバーミニアルバムシリーズ。音楽大学の声楽科で培った高い歌唱力を持つ彼女はこれまで多くの名曲を届け、リスナーを魅了してきた。そんな彼女が「melodia」の第4弾である今作のテーマとして掲げたのは“クラシックと日本語”。教会音楽「Ave Maria」から中島みゆきの楽曲「糸」まで、7曲の名曲を新たなアレンジで楽しめる。音楽ナタリーでは高垣にインタビューを実施し、「melodia」シリーズに込めた思いや制作の過程を聞くことで、彼女の音楽との向き合い方を紐解いた。
取材・文 / 須藤輝 撮影 / 藤田二朗(photopicnic)
“クラシック”は自分のパーソナリティ
──カバーアルバムを継続的にリリースするアーティストは珍しいと思いますが、この「melodia」シリーズはどのような経緯で生まれたんですか?
きっかけとしては、デビューシングル「君がいる場所」(2010年7月発売)をリリースするときにマネージャーさんが「高垣は音大で声楽を勉強していたんだから、そういう一面をなんらかの形で見せられたらいいんじゃないか」と提案してくださって。じゃあカップリングで声楽のスキルを生かせる曲をカバーしてみましょうと。以降、私のシングルの3曲目には必ずクラシックやミュージカル、映画音楽のカバー曲を入れるようにしているんです。それらをまとめて新録曲を加えたのが「melodia」で、1作目をリリースできた時点で「こんなに贅沢なことってある!?」という気持ちだったのですが、ありがたいことに継続させていただいています。
──カバーする曲を選ぶ基準は?
基本的に私が好きな曲、歌いたい曲を歌わせてもらっています。それから、例えばオペラやミュージカルに馴染みのなかった方が「melodia」に入っている曲を聴いてミュージカルに興味を持ってくださったり、お気に入りの作品や役者さん、新しい趣味などに出会ってもらえたらうれしいなって。私自身、ふと耳にした音楽をきっかけに世界が広がっていくという経験をたくさんさせてもらってきましたし、好きなものが増えていくことは、人生が豊かになっていくことだと思うんです。だから、そういう機会を提供できるようなシリーズになればいいなという願いを込めて作っています。
──では、今回の「melodia 4」の選曲はどのように?
「melodia 4」を制作するにあたって、私の中でテーマにしていたのが“クラシックと日本語”です。まず“クラシック”に関しては2年前に東京・Bunkamuraオーチャードホールでクラシックコンサートをやったときに、クラシックは私にとって欠かしてはいけない要素で、1つのパーソナリティなんだと実感して。これからもクラシックを歌い続けていきたいし、歌い続けていかなきゃという気持ちが一層強くなったんです。
──そのオーチャードホールでのコンサートの模様を収めたCD「“高垣彩陽クラシカルコンサート『Premio×Melodia』”コンサートCD」が7月にリリースされましたね。
ありがたいことに。自分が立てるとは夢にも思っていなかったオーチャードホールで、しかもクラシックコンサートをさせていただけたという本当にスペシャルな一夜でした。実は当日に「何かになるかはわからないけど、一応録音しておくから」と言われて。でも1年経っても音沙汰がないから「何にもならなかったか……」と思っていたら、今年に入ってから「夏にCDになります」と突然言われ、「ええー!」みたいな(笑)。
──ははは(笑)。
それで「melodia 4」に話を戻しますと、そのクラシック枠として選んだのが1曲目の「Ave Maria」と2曲目の「Panis Angelicus」なんです。どちらも教会音楽ですね。私はカトリック系の学校で聖歌隊に入っていたこともあり、昔から馴染みのあった大好きな曲ということで入れました。ちなみに「Ave Maria」は何種類かあって、私が一番好きなのは(ジュリオ・)カッチーニの「Ave Maria」なんですけど、それは以前ソロコンサートで歌ったものが映像になっているので(2017年1月発売「高垣彩陽 3rdコンサートツアー2016 “individual”」Blu-ray収録)、まだ歌ったことのない(フランツ・)シューベルトの「Ave Maria」にしました。
一生勉強だなと思いました
──ミニアルバムを再生して、1曲目「Ave Maria」から圧倒されました。
ありがとうございます。「Ave Maria」のレコーディングは本当に大変だったんです。と言うのも、私は7月に「ひめゆり」という、第二次世界大戦の沖縄戦で犠牲になったひめゆり学徒隊の物語を描いたミュージカルに出演していたんです(参照:ミュージカル座の名作「ひめゆり」主演に高垣彩陽)。その公演が終わった直後に「melodia 4」のレコーディングが始まって、最初に録ったのが「Ave Maria」だったんですけど、そのときに喉がうまく切り替わってくれなくて。
──喉の切り替え?
ミュージカルでは主に地声が強い声で歌っていたので、クラシックの歌唱法への切り替えがうまくできないまま「Ave Maria」のレコーディングを迎えてしまったんです。自分としてはどうしても納得できなくて。改めて声楽のレッスンを受けたうえで、後日録り直させていただきました。
──高垣さんが歌で悩むって、想像がつかないんですけど……。
いやいや、すごく落ち込みましたよ。もう「歌うのが怖い!」と思って、スタジオの一室に閉じこもって膝を抱えていたり(笑)。しかも、今回は「ひめゆり」の公演もあったので、スケジュールがすごくタイトだったんですよ。例えば朝からスタジオ入りして、午後にいったんアニメのアフレコで抜けて、夜にまたスタジオに戻ってきてレコーディングを再開するようなこともあったんです。でも、そういった私のわがままを聞いてくださったスタッフの皆さんには感謝しかないですね。
──高垣さんはストイックですよね。
よく言えばそうなのかもしれないんですけど、私は自分に厳しいわりには、自分で設けたハードルを越えられるだけの実力が伴っていないと言うか……それを痛感したレコーディングでしたね。もちろん、最終的に今の自分のベストと言える歌を収録したつもりですが、一方で自分に足りないものも発見できたので、やっぱりレッスンは続けなきゃいけないし一生勉強だなと思いました。
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オリジナリティを出すために
- 高垣彩陽「melodia 4」
- 2018年9月26日発売 / ミュージックレイン
-
[CD]
2600円 / SMCL-560
- 収録曲
-
- Ave Maria
- Panis Angelicus
- Happiness
- Journey to the past~心のままに~
- Somewhere Out There
- 糸
- Can't Take My Eyes Off Of You
- ライブ情報
LAWSON presents 高垣彩陽コンサート「Memoria×MelodiaⅡ」 -
- 2018年10月7日(日)
東京都 中野サンプラザホール
- 2018年10月7日(日)
- 高垣彩陽(タカガキアヤヒ)
- 1985年10月25日生まれ、東京都出身の声優アーティスト。音楽大学の声楽科出身で、その歌唱力を生かし舞台女優としても活躍している。2005年から2006年にかけて行われた「第1回ミュージックレインスーパー声優オーディション」に合格し、2006年2月に声優デビュー。2009年2月に同じミュージックレインに所属する寿美菜子、戸松遥、豊崎愛生と共に声優ユニット・スフィアを結成した。2010年7月にはシングル「君がいる場所」をリリースし、ソロデビュー。2011年11月にカバーミニアルバム「melodia」を発表し、12月に初のコンサートツアー「Memoria×Melodia」を東京・東京国際フォーラム ホールAと大阪・グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)で開催した。2013年4月に1stアルバム「relation」をリリース。その後もオリジナル楽曲はもちろん、カバーミニアルバム「melodia」をシリーズ化させ、定期的に音楽作品を発表する。2016年11月に東京・Bunkamuraオーチャードホールでソロコンサート「LAWSON presents 高垣彩陽クラシカルコンサート『Premio×Melodia』」を実施。2018年7月には「ひめゆり」でミュージカル初主演を務めた。9月にカバーミニアルバム第4弾「melodia 4」をリリースし、10月に東京・中野サンプラザホールでコンサート「LAWSON presents 高垣彩陽コンサート『Memoria×MelodiaⅡ』」を行う。