日本語をきれいに届けたい
──高垣さんは再三にわたり“縁”という言葉を使われていますが、6曲目の「糸」も人と人との縁を歌った曲ですね。
そうなんですよ。ホントに今回の「melodia 4」は、この中島みゆきさんの「糸」の歌詞に象徴されるような1枚になっているんです。私の記憶が確かなら、「糸」は父に初めて買ってもらったCDのうちの1枚なんですよね。当時、私は「聖者の行進」というドラマを毎週観ていて、その主題歌の「命の別名」と「糸」が収録されている中島さんの両A面シングルを父におねだりしたんです。まだ8センチCDの時代ですよ。
──ジャケットが短冊型の時代ですね。
そうです。しかも私が持っているCDは折っていないままですからね。今10代の方には伝わらないかもしれないけど(笑)。だから「糸」は昔から好きで、実は5年前のソロコンサート(「高垣彩陽 2ndコンサートツアー2013 ~relation of colors~」)で歌わせていただいたんですけど、自分の中にいつか音源化したいという気持ちがあったんです。今回のテーマの1つが“日本語”なので、では歌わせていただこうと。そこで8センチCDを引っ張り出したんですけど、「これ、パソコンで聴けるのかな?」って。
──ははは(笑)。
幸いにも私のパソコンは読み取ってくれました(笑)。そこで改めて「糸」を聴いたら、もちろん歌詞もメロディも素晴らしいんですけど、何より「中島みゆきさんは、なんてきれいに日本語を歌われる方なんだろう!」と感動して。だから私も、中島みゆきさんには及ばないまでも、できる限り日本語をきれいに届けたいと思ってレコーディングに望みました。
──「糸」はたくさんの方がカバーされていますが、その点で気負いやプレッシャーは?
歌に関しては、原曲をリスペクトしようという気持ちしかなかったですね。「糸」にはさまざまなバージョンがあるのでアレンジをどうしようかは悩みましたが、そこは籠島さんがアイデアを出してくださいました。同じく“糸”である“弦”、アコースティックギターをメインに据えて、そこにバンドサウンドと弦楽四重奏を被せていくのはどうかと。
──最初は弾き語りのようですが、徐々に音が増えて膨らんでいくようなアレンジですね。
しかもバンドも弦のカルテットも、今まで一緒にコンサートをやってきたメンバーが再集結してくれたんですよ。そういう意味でも「糸」の歌詞に寄り添う形になりましたし、サウンド自体も人の温もりが感じられるものになったと思います。
振り幅の広さは「melodia」シリーズの強み
──そしてアルバムのラストを飾るのが「Can't Take My Eyes Off Of You」です。オリジナルはフランキー・ヴァリのスタンダードナンバーですが、高垣さんがカバーされたのは最も有名なBoys Town Gangによるディスコバージョンですね。
実は、この曲だけ私の選曲ではなく、ディレクターさんの提案で歌った曲なんです。もともと10thシングル「Live & Try」(2017年1月発売)のカップリングだったんですけど、その頃の自分の課題が「人の言うことを聞く」だったんです。
──子供のような(笑)。
はい(笑)。前々からディレクターさんはシングルのカバー曲を決めるときに「Can't Take My Eyes Off Of You」を挙げてくださっていたんですけど、私が「いや、今回はこれが歌いたいんです」と我を通してきたところがあって。でも、「Live & Try」の頃は客観的な意見を取り入れるモードに入っていたので「いいでしょう、歌いましょう」と。当時は「melodia」シリーズに収録することは考えていなかったんですけど、このアッパーな「Can't Take My Eyes Off Of You」が最終曲として意外と収まりがいいと言うか、ハッピーな気持ちで聴き終われるなと思ったんですよね。
──それは僕も感じました。「melodia 4」は聴いていくうちにどんどん親近感が増してくるんですよね。
ああ、とてもうれしい感想ですね。
──最初の2曲は教会音楽ということもあって神聖さを感じますが、そこからミュージカルや映画音楽を経て、「糸」で完全にポピュラーミュージックになる。そしてもはや通俗的と言ってもいい80年代ディスコナンバーで締めるという。
確かに、「Ave Maria」と「Can't Take My Eyes Off Of You」のテンションはまるで違いますし。
──その2曲が1枚のCDに収まっているのは振り幅がすごいです(笑)。
あはは(笑)。でも、それが「melodia」シリーズの強みでもあると思います。選曲をクラシックに限定しているわけではないし。言語にしても今回は日本語、英語、ラテン語で歌っているので、カバーだからこそやりたいようにできた、欲張りな1枚になっていますね。
“高垣彩陽のコンサート”の原点を踏まえて
──この「melodia 4」リリース後、10月7日に東京・中野サンプラザホールでコンサート「LAWSON presents 高垣彩陽コンサート『Memoria×MelodiaⅡ』」がありますね(参照:高垣彩陽、中野サンプラザでコンサート開催)。
コンサートのタイトル「Memoria×MelodiaⅡ」は2011年に行った私の1stコンサートツアーのタイトルに「II」を付けたものなんです。ここには、高垣彩陽のコンサートの原点を踏まえたうえで、今できる表現をお見せしたいという思いを込めています。バックバンドも、クラシカルな楽曲にもバンドサウンドにも対応できる布陣で臨むのできっとバラエティに富んだステージになりますし、そのステージでしか聴けない曲もやる予定なので、ぜひいらしていただけたらと思います。特に、私が出演しているアニメをチェックしてくださっている方には、「あっ!」という驚きがあるかもです。
──とても気になりますね。そして、2019年2月にはいよいよスフィアが音楽活動を再スタートします。
はい。昨年の11月からスフィアは音楽活動の充電期間に入っていますが、水面下ではライブの準備などいろいろ動いておりまして。もちろんライブだけじゃなくてスフィア結成10周年を盛り上げる企画もいろいろと考えていますので、期待していてください。皆さん、スフィアのこと忘れていませんか?(笑)
──待ちわびてますよ。
大丈夫ですかね? (寿)美菜子とはるちゃん(戸松遥)はアルバムを出してソロライブツアーをやっていますし、(豊崎)愛生ちゃんも10月にカバーアルバムを出します。私も今後ミュージカルやストレートプレイ、朗読劇といった舞台にも立たせていただきます。そうやって4人それぞれが充実した時間を過ごしていますし、そこで培ったものをまたスフィアに還元してアウトプットしていくので、来年の10周年をどうぞお楽しみに!
- 高垣彩陽「melodia 4」
- 2018年9月26日発売 / ミュージックレイン
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[CD]
2600円 / SMCL-560
- 収録曲
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- Ave Maria
- Panis Angelicus
- Happiness
- Journey to the past~心のままに~
- Somewhere Out There
- 糸
- Can't Take My Eyes Off Of You
- ライブ情報
LAWSON presents 高垣彩陽コンサート「Memoria×MelodiaⅡ」 -
- 2018年10月7日(日)
東京都 中野サンプラザホール
- 2018年10月7日(日)
- 高垣彩陽(タカガキアヤヒ)
- 1985年10月25日生まれ、東京都出身の声優アーティスト。音楽大学の声楽科出身で、その歌唱力を生かし舞台女優としても活躍している。2005年から2006年にかけて行われた「第1回ミュージックレインスーパー声優オーディション」に合格し、2006年2月に声優デビュー。2009年2月に同じミュージックレインに所属する寿美菜子、戸松遥、豊崎愛生と共に声優ユニット・スフィアを結成した。2010年7月にはシングル「君がいる場所」をリリースし、ソロデビュー。2011年11月にカバーミニアルバム「melodia」を発表し、12月に初のコンサートツアー「Memoria×Melodia」を東京・東京国際フォーラム ホールAと大阪・グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)で開催した。2013年4月に1stアルバム「relation」をリリース。その後もオリジナル楽曲はもちろん、カバーミニアルバム「melodia」をシリーズ化させ、定期的に音楽作品を発表する。2016年11月に東京・Bunkamuraオーチャードホールでソロコンサート「LAWSON presents 高垣彩陽クラシカルコンサート『Premio×Melodia』」を実施。2018年7月には「ひめゆり」でミュージカル初主演を務めた。9月にカバーミニアルバム第4弾「melodia 4」をリリースし、10月に東京・中野サンプラザホールでコンサート「LAWSON presents 高垣彩陽コンサート『Memoria×MelodiaⅡ』」を行う。