ナタリー PowerPush - taffy
気が付けばUKメディア大絶賛 日本人インディーバンドの不思議な道程
海外での体験のおかげで、おおらかに作るようになった
──海外の話とはいえ、評価してくれる人がたくさんいるっていうのは、制作面でのモチベーションになったんじゃないですか?
アイリス そうですね。前作はとりあえず録ってみたっていう感じだったんですけど、今回は向こうで出せることが決まっていたので(笑)。でも、その「Lixiviate」を録るまでの間に、イギリスだけではなく、他のヨーロッパの国とかアメリカとか、それこそ日本以外のアジアの方から反応があったのは、やっぱりすごい励みになりましたね。
マネージャー そう、そのレコーディングの真っ最中に、モンゴルの依頼が入ってきたんですよね。
──モンゴル?
マネージャー 「3週間後、モンゴルに来れますか?」っていうメールがいきなり来て。モンゴルに「PLAYTIME」っていう、もう10年以上やっているロックフェスがあるらしいんですけど、そのトリで来てくれって言われて。日本人のロックバンドが出るのは初めてだったみたいなんですけど、実際行ってみたらけっこうすごい数の人がいて……5~6000人くらいいたのかな? ライブをやった次の日も、モンゴルの全国テレビの生放送の番組に招待されて、そこでインタビューに応えたりとかしたんですけど、日本に帰ってきても、やっぱり特に報じられているわけでもないので、「なんだったんだろう、あれ?」みたいな。
──(笑)。そうやってドラスティックに状況が変化する中、新しい音源に対するプレッシャーはなかったんですか?
アイリス うーん。今回も喜んでもらえるといいなっていう気持ちはありましたけど……ただ、そればっかりは出してみないとわからないので、とりあえず私が好きなことをやるというか、それを盤に収めるっていうことだけを考えてやっていましたね。
──意識は上がったけど、やることは変わらないと。
アイリス そうですね。マイペースっていうのは、よく言われたりするので(笑)。
粕谷 日本の人って、何かに一生懸命打ち込もうとすると自分の殻にこもってしまいがちになるんですけど、イギリスの人たちはもっとお客さんのほうに開いていく感じがあるというか……。それを実際、向こうで体験したっていうのが、個人的にはすごく大きかったと思いますね。だから制作するときも、あんまり内にこもるんじゃなくて、ある程度ライブを想定しようという意識があったかなと。いいものを手堅く作るっていうよりは、どちらかと言うとおおらかに作っていった感じですね。
アイリス そう、今回レコーディングするにあたって、私がすごい口を酸っぱくして言っていたのは、きっちり音を外さないでやることを意識するより、初期衝動じゃないですけど、例えば一発録りで1回目に出たものを大事にしようよっていうことで。だから、さっき彼(粕谷)が言っていた「おおらか」っていうのは、確かにそうかもって思いますね。ていねいに弾こうとして、熱が伝わらない音になるのは、すごく避けたいところではあったというか、ちょっとぐらい間違えたり音を外していても、そこに勢いがあれば、私はそれを収めたい派なんですよね。その熱の部分を、すごく大事にしているというか。
今をなるべく崩さないためにインプットを少なくする
──楽曲云々以上に、アイリスさんのメンタリティ自体が、英米のインディーポップの人たちに近いのかもしれないですね。
アイリス ああ、なるほど。何かインディーからメジャーに行って、音はきれいになったけど、音楽はつまらなくなったみたいな話って、けっこうあるじゃないですか。それと同じようなことで、初めがいいものであれば、そのまま行きたいというか、状況が変わったから何かを変えるっていう発想が私にはなくて。好きなものとか伝えたいものっていうのは、一定しているのかもしれないですね。
──逆に言うと、それを守るために、やってはいけないことがたくさんあるというか……。
アイリス それはありますね。引き合いに出されるバンドを聴かないようにしているっていうのも、それと同じで……今をなるべく崩さないためにインプットを少なくするっていうのは、けっこう意識しているかもしれないです。偶然知ってしまったものであればいいというか、それを自分なりに吸収して浄化した形で出すのはいいんですけど、何かを作るからいっぱいインプットしてっていうことはやりたくないんですよね。
──まさしく「Lixiviate(濾過する)」というアルバムタイトルにも関連してくるような話ですけど、実際に完成したアルバムを聴いて、それぞれどんな感想を持っていますか?
粕谷 このバンドの、大きな意味でのコアの部分が、色濃く出ているかなって思います。いわゆるバンド感というか、そういうものを自然に重視しながら演奏していたところがあるので。
浅野 ギターに関しては、今回のほうが前回よりも、瞬間のひらめきみたいなものが多いかもしれないですね。練って作るんじゃなくて、ポーンと浮かんだものを弾くっていう。
小泉 確かに、今回の10曲は前作よりも自由な感じがするというか、すごくフリーに弾かせてもらった部分が多い気はしますよね。アプローチとしては、あんまり変わらないんですけど。
──制作中に、海外のステージで演奏している光景を想像したりとか?
小泉 や、「Lixiviate」を録っていたときは、イギリスで経験したオーディエンスの様子とかって、あんまり意識しなかったというか……。
マネージャー 「Lixiviate」を録ったときは、まだツアーを1回もやってなかったんですよね。
──あ、そういう時系列になるんですね。
マネージャー 前作の「Caramel Sunset」がイギリスで出てから、去年の秋と今年の夏、あと今年の秋と、計3回UKツアーをやっているんですけど。
──taffyのどういう部分がイギリスの人々から支持されているんだと思いますか?
アイリス 最初にイギリスでリリースした「So Long」っていうシングル曲がきっかけになって、向こうでいろいろフィーチャーされるようになったんですけど、やっぱりそういう曲を求められているのかなっていうのは、どこかにありました。そのせいで、すごいポップ好きに思われていたりもするんですけど、けっこうゆっくり静かっていう曲も好きで。今回の1曲目に入っている「Sweet Violet」とか、そういう曲のほうが、自分は大好きだったりするんですよね。
収録曲
- Sweet Violet
- Tumbling
- Snowberry
- Boys Don't Cry
- Stewert and a Yellow Bicycle
- When Is Forever
- Dawn Red
- Train
- Maple Art
- No Endings but only the Beginnings
ライブ情報
- THREE THUMBS UP!
- 2013年12月13日(金)
東京都 三軒茶屋HEAVEN'S DOOR
<出演者>
taffy / Merpeoples / noodles
- BOOKMARK's vol.0
- 2014年1月17日(金)
東京都 下北沢ERA
<出演者>
taffy / BALLOON88 / THIS IS JAPAN / and more
taffy(たふぃー)
アイリス(Vo, G) と小泉将希(B)で結成後メンバーチェンジを経て浅野芳孝(G)と粕谷謙介(Dr)が加入し、現在の編成に至る。2012年に1stアルバム「Caramel Sunset」をイギリスでリリースすると、これが現地で評判に。大手一般新聞「ガーディアン」などさまざまなメディアで絶賛され、音楽雑誌「NME」では日本人の新人アーティストとして初めて巻頭特集が組まれた。2013年には2ndアルバム「Lixiviate」発売後、3カ月のスパンで2度のUKツアーを実施。同年12月には満を持して、初の日本発売となるアルバム「Lixiviate」をリリースした。