ナタリー PowerPush - taffy
気が付けばUKメディア大絶賛 日本人インディーバンドの不思議な道程
taffyは女性ボーカル・アイリスを含む、日本在住の4人組ロックバンド。国内でのリリースがないまま音楽雑誌「NME」などイギリスのメディアで絶賛され、大手一般新聞「ガーディアン」では「誰かこれをアデルとかあのへんに聴かせてやってくれ」とまで評されるなど、海外ではすでに話題のバンドになりつつある。
そんな彼らが2ndアルバム「Lixiviate」をついに初めて日本でリリースした。当初は「どうせ好かれない」と考えて積極的な活動をしていなかったという自己評価の低いバンドが、いかにして海外の音楽ファンを虜にするに至ったのか、そして今後日本でどうなっていくのか、メンバー4人とバンドのマネージャーに話を聞いた。
取材・文 / 麦倉正樹
最初はツアーに行く意欲がなかった
──イギリスで高い評価を得ていると聞きましたが、日本在住のバンドだったんですね。
アイリス(Vo, G) そうなんです。何か不思議なことになっていて(笑)。
──(笑)。そもそも、2000年代前半にアイリスさんと小泉くんが出会い、前身バンドを結成したとのことですが、その当時はどんな感じだったんですか?
アイリス やろっか……みたいな、とてもテンションの低い感じでしたね。
小泉将希(B) 年に3、4回ライブができたらいいかなぐらいな、それくらいの遊び感覚で。
アイリス だから、通常のバンドが求めるような「どこそこに出たい」とか「何々に載りたい」とかはまったくなくて……曲ができたら録ってみたいなことを、ずっとやっていて。で、その間にメンバーが入れ替わり、今はこの4人で安定しているという感じですね。
マネージャー 僕が最初に出会ったときは、ツアーも絶対やらないって決めていたんですよね。
──え、それはまたどうして?
アイリス 決めていたっていうよりは、あんまり行く必要性を感じなかったというか……そもそも行く意欲がなかったという(笑)。
小泉 フライヤー配りとかもしたことがなかったので……まあ、とても熱の低いバンドだったと思うんですけど。
──この4人がそろったのは、いつ頃だったんですか?
アイリス ちょうど2年ぐらい前ですかね。
粕谷謙介(Dr) そうですね。最後に私が入ったのが、2年前の10月ぐらいですね。
浅野芳孝(G) 僕は、5、6年前に加入しました。
──そこで4人集まって、どんな音楽をやろうという話に?
アイリス 基本的には、私が作ったベーシックがあって、それを「各自好きなようにやって」って渡す感じなので、どんな音楽をやろうっていうのは、特になかったんですけど……みんなに好き勝手やってもらったものを、私が完成形にしていくというか。なので、基本的には、みんなで好きなことをやっているっていうのが中心にある感じですね。
──音楽的なバックグラウンドは、それぞれどのあたりにあるんですか?
小泉 僕はだいたい聴いているのはUKですけど、若い頃はハードロックとかも聴いていて……今はアニソンを聴いたりしています。でも、やっぱり根底にあるのは、The Beatlesですかね。
粕谷 私はもともとジャズセッションとか、そういう活動をけっこうしてきたので、ジャズ全般……あと、オールディーズとか、そういうものはすごい好きですね。
浅野 僕は主に60年代とかの音楽を聴いていました。ガレージサイケとか。で、具体的に核にあるのが、The Whoで……それ以降は、普通にまんべんなく聴いている感じですね。
アイリス 私も基本的にはThe Beatlesとか、いわゆるUKロックが好きなんですけど。街中でかかってるものを聴いているってレベルで、何かがすごい好きでそれを漁るとかはしてないんです。実は、あんまり音楽人ではないんですよね。イギリスで騒がれるようになってからは、むしろそういうものを聴いてはいけないんじゃないかって思ったりとかして。変に影響を受けてしまうというか。
その人じゃないと弾けない音があることが一番重要
──イギリスの記事では、90年代ブリットポップの各バンドをはじめ、いろいろなアーティストの名前が引き合いに出されていますよね。
アイリス そう、いろいろ出てくるんですけど、そこらへんのものはむしろ聴いてないんですよね。例えばイギリスとかだと、よくEchobellyを引き合いに出されるんですけど、それがどんなバンドなのかもわからないレベルなので……まあ、好きなように呼んでくださいっていう感じですね(笑)。やっぱり、音楽とかっていろいろ捉え方が違ったりするじゃないですか。例えばさっき、彼(小泉)がアニソン聴きますって言っていましたけど、私からするとアニソンっていうのは、エレクトロポップに近いのかなとか。だから我々のジャンルも、いろいろ捉えられていいんじゃないかっていう。聴く人によってそれが違うのは、むしろ光栄ですという感じなんですよね。
──ただ、実際に楽曲を組み上げてゆく際には、何か目安のようなものがあるんじゃないですか?
アイリス それは、私の気分というか……。
浅野 基本的に、その最終的な決定権は、アイリスさんにあるんですよね。
アイリス まあ、結果的に、私がまとめるとtaffyの音になるってことなのかもしれないですけど……あんまりそこらへんは、深く考えてないです(笑)。
──taffyの楽曲が醸し出すインディーポップ感は、アイリスさんのセンスによるものが大きい?
アイリス そうですね。ただ、そういうものを目指してやっているというよりは、みんなが出してきたものから、私が好きなものだけを選ぶと、そうなるというか。そもそも「この曲は、こういうイメージで」って言ってメンバーに渡すときのイメージが、すごい抽象的なんです。最近作った曲だったら、「アイスランドをイメージして」って言って渡して……で、それぞれのアイスランドがあるわけで。そうすると、面白いものが出てくるという。そう、メンバー選びで私が一番重要視しているのは、その人じゃないと弾けない音があるっていうことなんですよね。お願いすればなんでも弾ける方っているじゃないですか。そういう人よりは、この人ならではというか、ちょっとクセのある感じのものを弾く人のほうが、私はやりやすくて。こういうのを弾いてくださいって言って、その通りうまく弾かれても、それは私の中でちょっと違うというか……だったら、その楽器を教えていればいいじゃないと思っちゃうんですよ。
──そこのジャッジは、すごくはっきりしているんですね。
アイリス 始めはやんわり言っているふうで、ノーなものはノー、イエスなものはイエスっていう感じなので(笑)。
──正直、予想していた構造と全然違ったというか、女の子ボーカルのギターロックというと……。
アイリス それはよく驚かれます(笑)。女の子ボーカルっていうと、なんとなくのイメージとして、パッと曲を渡されて、「これ、歌って」みたいな感じのイメージがあると思うんですけど……っていうか、私はそのイメージで捉えられるのがうれしいんですけど、だんだんバレてきてるっていう(笑)。でも、基本的には自由にみんなでいろんなものを出し合って、いいものを作ろうっていう姿勢ではあると思います。
収録曲
- Sweet Violet
- Tumbling
- Snowberry
- Boys Don't Cry
- Stewert and a Yellow Bicycle
- When Is Forever
- Dawn Red
- Train
- Maple Art
- No Endings but only the Beginnings
ライブ情報
- THREE THUMBS UP!
- 2013年12月13日(金)
東京都 三軒茶屋HEAVEN'S DOOR
<出演者>
taffy / Merpeoples / noodles
- BOOKMARK's vol.0
- 2014年1月17日(金)
東京都 下北沢ERA
<出演者>
taffy / BALLOON88 / THIS IS JAPAN / and more
taffy(たふぃー)
アイリス(Vo, G) と小泉将希(B)で結成後メンバーチェンジを経て浅野芳孝(G)と粕谷謙介(Dr)が加入し、現在の編成に至る。2012年に1stアルバム「Caramel Sunset」をイギリスでリリースすると、これが現地で評判に。大手一般新聞「ガーディアン」などさまざまなメディアで絶賛され、音楽雑誌「NME」では日本人の新人アーティストとして初めて巻頭特集が組まれた。2013年には2ndアルバム「Lixiviate」発売後、3カ月のスパンで2度のUKツアーを実施。同年12月には満を持して、初の日本発売となるアルバム「Lixiviate」をリリースした。