音楽ナタリー Power Push - Tokyo 7th シスターズ

茂木総監督 & kz(livetune)が“レジェンド”セブンスシスターズに託したナナシスの未来

ナナシス=怨念!?

──セブンスシスターズの楽曲をシングルとして、このタイミングでリリースするという構想は茂木さんの中ではいつ決まったんですか?

茂木 セブンスの2030年を描く、いわゆる「プロジェクト2030」シリーズをやろうと思ったのは去年の5月のライブが終わってすぐくらいでしたね。理由としてはいくつかあるんですけど……kzさんとごはんを食べたことがあったじゃないですか。

kz はいはい、ありましたね。去年の6月とか7月とか。

茂木伸太郎

茂木 そう。そこでね、kzさんがぽろっと“怨念”っていう単語を口にしたんですよ。それはナナシスに関しての話の中で出てきた言葉ではなかったんだけど、なんとなく僕がナナシスでやっていることはそういうことなのかもしれないなって思ったんです。それまでは自分のモノづくりのテーマは、祈りや希望だと思っていたんだけど、怨念っちゃ怨念でもあるなって。なんかね、ナナシスがちょっと騒がれ始めてから、対外的に接してくる人たちのイヤな面をすごく見るようになったんですよ、立場上(笑)。

kz あははは(笑)。

茂木 で、周りからいろいろ言われることもあるけど、僕は作品作りに関しては自分の気持ちに正直でありたい。やっぱり魂を込めるにはどのみちそうしないといけないから。でもそうすることで他人から憎まれたり嫌われたりすることもある。その逡巡とか苦悩みたいなものが積み重なって、心の底に溜まっていく負の感情が僕にも確かにあるんです。なんで他人に嫌われてまでこんなこと必死になってやってるんだろう……と。そういう意味で周囲に対する怨念みたいなものが僕にもあるのかもしれないと思ったんですよね。で、そういう僕の感情は、セブンスシスターズの(七咲)ニコルたちにもリンクするなと。2030年という時代の中で彼女たちも、きっと周りからいろいろ言われて僕と同じような気持ちを味わっていたはずだから。それで、去年の8月くらいから「プロジェクト2030」の企画を具体的に考え始め、それが今のタイミングで1つの形になったっていう流れなんですよね。

kz で、10月くらいに僕のところに企画書が来たんですけど、そこに書いてあった楽曲のイメージを読んだときに「EDMっぽいもの」とか書かれていて、「えー! そっちに行くんだ」って思って(笑)。それ以外にもキーワードがいくつかあったので、「これはどうしようかな?」と。自分としてはかなり戸惑いもあったので、曲を上げるのがギリギリになってしまって申し訳なかったんですけど。

──それが先ほどおっしゃっていたハードルの高さにつながったわけですね。

kz まさにそうですね。いただいたキーワードを全部あわせてセブンスにするとどうなるかっていう方程式が最初はまったく見えなくて。これはしんどいぞっていう。

キーワードは突破、狂気、中毒性

──茂木さんが提示したキーワードには具体的にどんなものがあったんですか?

茂木 まずは“突破”ですね。ジャンルの突破、業界の常識の突破。物語的にセブンスは実際そういうことをやっているので。あとは“狂気”と“中毒性”。さらに“いきすぎたカッコよさ”っていうキーワードも書いたと思います。

kz セブンスとして今までに出した曲は「Star☆Glitter」と「Sparkle☆Time!!」ですからね。そこからの“狂気”ってなると、どうすればいいのかなって(笑)。それぞれのキーワードを単体で感じさせる曲なら全然作れるけど、全部入りっていうのはバランスがかなり難しいんですよ。しかも、セブンスというユニットが持っているエモさとか、純粋な曲のよさ、ポップさ、キャッチーさなんかもちゃんと盛り込んで、今までのナナシスファンにも「いい曲だな」と思ってもらえるレベルにしなきゃいけないわけだし。

左から茂木伸太郎、kz(livetune)。

茂木 でもkzさんが上げてくれた曲はもうドンピシャでした。自分の頭の中を覗かれたかも、って思うくらいの。kzさんとはカッコいいと思うものがほんとに似てるんですよ。

kz 中二的なカッコよさですよね(笑)。

茂木 そうそう。そういう感覚がすごく似てるから、もう圧倒的な信頼感があるんですよ。けっこう無茶な注文をしてるかもと思いつつも、まったく心配はしてなかったというか。

kz 確かにナナシス自体、僕にとってのドンピシャな作品だったりしますからね。単純に「私たちがんばっていきます!」っていう要素だけではなく、セブンスというレジェンド的な6人がいたり、ものすごくエモい部分があったりする作品ですから。だからこそ、「SEVENTH HAVEN」に関してもかなり苦労はしたけど、自信のある曲に仕上げることができて。

茂木 歌詞に関しても、今回もまたkzさんはほんとに僕の心を読んだかのようなものを書いてきてくれましたし。

kz ナナシスのように、何かの作品ありきで書く歌詞は、自分でも気に入っているものが多いんですよ。しかも女の子が主人公の詞は個人的にうまくいくっていうのが自分の中にはあって。茂木さんが信頼してくれているのもわかっているので、そこはもう安心して書ける感じがありますね。

茂木 物語の時系列的に言うと、2030年の7月7日に“セブンスストライク”という事件が起きて、セブンスの存在が世に広まるんですね。「SEVENTH HAVEN」はその約3カ月後のタイミングの曲なので、歌詞の中に「Seventh Strike back!!」が入ってたのはさすがだなと思いましたね。

kz そこは実は、作品内でセブンスという存在の強さを出したくて入れたんですよ。要は「セブンス」「ストライクバック」なんです。

茂木 そっか! 「セブンスストライク、再び」ってことではなく、「セブンス」「ストライクバック」で「セブンスの逆襲」って意味なんだ。なるほど。あー、これはすごい偶然だ。「Star☆Glitter」のときもありましたけど、厳密にストーリーを伝えているわけではないのにこういうリンクをするってのはもう奇跡ですよ(笑)。

kz まあ、でもそうやって二重の意味になってもいいですよね。聴き手の方に自由に解釈してもらえばいいんじゃないかなとは思いますね。

茂木 そうっすね、うん。どちらの意味にせよ、曲としては一番シビれるポイントなんで。あのパートは、ほんとシビれると思いますよ。

セブンスシスターズ ニューシングル「SEVENTH HAVEN」 / 2016年2月24日発売 / Victor Entertainment
初回限定盤 [CD+グッズ] 1944円 / VIZL-934
通常盤 [CD] 1296円 / VICL-37143
収録曲
  1. SEVENTH HAVEN
  2. FALLING DOWN
  3. SEVENTH HAVEN -OFF VOCAL-
  4. FALLING DOWN -OFF VOCAL-
  5. What is truly 2030??(ドラマトラック)
Tokyo 7th シスターズ 2nd Live 16’→30’→34’「INTO THE 2ND GEAR」

2016年8月21日(日)
神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール

kz(livetune)(ケーゼット)
livetune

アニメソング、ゲーム音楽、J-POPなど幅広いジャンルの楽曲制作および編曲を手がける音楽プロデューサー。DJとしても活躍し「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「COUNTDOWN JAPAN」「ULTRA JAPAN」「ニコニコ超会議」などさまざまなフェスやイベントに出演している。ワーナーミュージック・ジャパンとASOBISYSTEMが手がけるイベント「YYY」では、中田ヤスタカ、tofubeats、banvoxらとともにレジデントDJを務める。ソロプロジェクトのlivetune名義では「Google Chrome-初音ミク篇-」のCM曲「Tell Your World」や初音ミク関連のイベント「マジカルミライ2015」のテーマソング「Hand in Hand」などVOCALOID楽曲を発表しているほか、SEKAI NO OWARIのFukase、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔といったボーカリストとのコラボ曲もリリースしている。また2015年10月には、ボーカリストにやのあんなを迎えた新ユニットlivetune+を始動させた。

茂木伸太郎(モテギシンタロウ)

株式会社Donutsに在籍するクリエイター。「Tokyo 7th シスターズ」の総監督兼総合音楽プロデューサーとして同作品のビジュアル、脚本、楽曲の企画や制作、ライブ制作に携わっている。