ナタリー PowerPush - SxOxU

本格的ソロプロジェクト始動で松本素生が取り戻した初期衝動

GOING UNDER GROUNDのフロントマン、松本素生がソロプロジェクト「SxOxU」を始動。配信シングル「Summer's gone」、マキシシングル「Funny Sunny Day」に続き、待望の1stミニアルバム「SxOxU」をリリースした。本作ではプロデューサーにヒダカトオル(BEAT CRUSADERS)を迎え、90'sオルタナギターロックを通過した初期衝動性の強い生々しいロックサウンドを堪能することができる。

ナタリーではアルバム発売を記念して、松本素生にインタビューを敢行。ソロ活動に到る経緯やアルバム制作の裏側、ソロ活動をスタートさせたことで新たに得たもの、さらには4人編成で再スタートを切った新生GOING UNDER GROUNDの今後についてなど、興味深い話をたっぷり聞いた。

取材・文/西廣智一 インタビュー撮影/中西求

ヒダカさんとだったら楽しく遊べるんじゃないかな、というのがあった

──アルバムを聴かせてもらいましたが、メロディはGOING UNDER GROUNDと共通する部分があるのに、サウンドが新鮮でかなり驚きました。

実は今回、これまでのイメージを変えてやろうと思ってがんばったところがひとつもなくて、曲の作り方も一緒なんです。自分的に一番変わったのは、歌詞が英語だというところくらいかなっていう認識で。ただ、絶対にヒダカさんと一緒にやりたかったのと、バックのメンバーが違うというのは大きいかな。もう10年くらいGOINGをやってるから、そこから外に出てやってみたら「あ、こんなにも音の鳴り方が変わってくるんだな」とは感じましたね。

インタビュー写真

──そもそもなぜこのタイミングでソロ活動を?

4月にキーボードのよういっさん(伊藤洋一)がバンドを辞めて、その後のタイミングでボーカリストがソロアルバムを出すことで、後ろ向きに捉えられたら嫌だなっていうのは考えたんです。ただ、バンドとソロを並行してやるのがカッコいいなと思って、あえて意識しないで始めてみました。

──バンドとソロの一番の違いはどこでしょうか?

ソロをやる際には音楽を楽しみながら鳴らしたい、もう一度そこに立ち返りたいと考えて。GOINGではできない、もっと新しいことをフレッシュな気持ちでやりたかった。キーボードが辞めちゃったのも、今思うと不幸中の幸いだったかなと思うこともあって。壊そうとしてこの2~3年ずっと壊れなかったものが、メンバーチェンジを機に壊れたところもあるんです。

──収録曲はレコーディングの段階で、ストックの中から選んでいったんですか?

実は俺、この10年くらいストックというものを持ってなくて。今回もノープランで「曲はないんですけど、ヒダカさんと面白いことをやりたいんですよね」というところから始まったんですよ。俺はビークルが好きで、普通にCDを買って聴いてたんです。ソロは去年くらいからやろうと思っていて、ちょうどいいタイミングでヒダカさんのスケジュールも空いて。

──今の話を聞いて、いわゆる名のあるバンドのボーカリストがソロで何か始めますというより、ひとりのバンド少年が“ちょっとあの人と何か一緒にやってみたいんだよね”的な軽いスタンスなのかな、という気がしました。

まさにそうです。CDもメジャーから出るとも、そうしなきゃいけないとも思ってなかったから。とにかくSxOxUに関しては、何もかも取っ払ったところで鳴らしてみたい、そういう場をヒダカさんとだったら楽しく遊べるんじゃないかな、というのがあったんですよ。本当に自由な場所から始まりましたね、このバンドは。

“90's感”というテーマが僕とヒダカさんの中にあったような気がする

──ヒダカさんとは、どういう感じで作業を進めていったんですか?

まず、ヒダカさんが忙しくてなかなか会う暇がなくて。だから(福岡県の)黒崎でやってたビークルのライブに俺が直接行って「こういうのやりたいんですけど、ヒダカさんと絶対やりたくて。とはいえ曲とかはまったくなくて、ゼロから始めたいんですよね」って直談判したんです。そうしたらヒダカさんも頭がいいから「あ、こいつ遊びたいんだな」とわかってくれて、ライブハウスの楽屋で「じゃあまず英語詞だよね」といきなり核心に入っていって。いろんな雑談の中から、「US90'sオルタナギターポップみたいなバンド、7年前ぐらい前には結構いたけど、ある時期からまったくいなくなりましたよね」って話になって、「あのフォーマットに乗せちゃおうか!」「やっぱりオルタナといえば、女の子のメンバーが混じってるでしょ」とか、どんどんノリで決まっていったんです。

──会いに行ったその日に、バンドのフォーマットが一気に固まっていったんですね。

そうです。それからアルバムに参加してほしい人たちに、自分から連絡を取って。曲はバンドが固まってからいつもどおり作って、それを今回のメンバーとやっただけ。曲自体をオルタナっぽくしようというのはなかったけど、“90's感”というテーマが僕とヒダカさんの中にあったような気がします。最初に4曲くらいMP3で送ったけど、「まだだな」と言われて。それは曲の良し悪しじゃなくて、90's感があるかないかだったんです。それで、「俺たちが今やりたいのって、これじゃないですかね」というのが「Don't want to be alone」という曲で見えて。そこからはもう作業が早かったですね。どの曲もほぼ10分くらいで書き上げたし。

──その90's感は、当時を通過した人ほどわかるような気がします。

あまり整理されてないというか、みんな好き勝手やってるイメージですよね。若い人が聴いたら「“90's感”ってわかんねーよ」って思うかもしれないけど、でもそこが新鮮に感じてもらえると思うし。俺はパンクロックも好きだけど、音が綺麗なものや、マッチョだけど整理されてるような音楽もやりたいんですよね。

ミニアルバム『SxOxU』 / 2009年12月2日発売 / 1890円(税込) / ポニーキャニオン / PCCA-03039

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CD収録曲
  1. Don’t want to be alone
  2. Funny Sunny Day
  3. Roller Coaster
  4. Summer’s gone
  5. VOID
  6. Departure
  7. Remember
  8. Don’t want to be alone

シングル『Funny Sunny Day (SxOxU English Version)』 / 2009年11月11日発売 / 800円(税込) / ポニーキャニオン / PCCA-70264

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CD収録曲
  1. Funny Sunny Day <English Version>
  2. Funny Sunny Day <Japanese Version>
SxOxU(そう)

GOING UNDER GROUNDの松本素生によるソロプロジェクト。ヒダカトオル(BEAT CRUSADERS)をプロデューサーに迎え作り上げられた楽曲は、90'sオルタナギターロックサウンドにルーツを持つ。全曲英語詞が付けられていることも特徴。2009年9月に配信シングル「Summer's gone」、11月にマキシシングル「Funny Sunny Day」、12月にミニアルバム「SxOxU」を立て続けにリリース。同作には田淵ひさ子(G/bloodthirsty butchers)、みずえ(Dr/つしまみれ)、岩崎なおみ(B)、藤原寛(B)&後藤大樹(Dr/ともにandymori)がレコーディングに参加し、エモーショナルで生々しいバンドサウンドを鳴らしている。