サニーデイ・サービス「Popcorn Ballads」インタビュー|曽我部恵一は今、何を考えているか?

感情と歴史を積み重ねていきたい

──ところで今回のレコーディングに丸山晴茂さん(Dr)は参加していないんですか?

晴茂くんはほぼいない。1曲だけ「はつこい」って曲で叩いてるけど、あとは全部俺かサポートの(岡山)健二とかだね。

──この作品について丸山さんや田中貴(B)さんはどういう感想を?

晴茂くんは会ってないからわからない。

──田中さんは?

田中は何も言わない。

──それはどうして?

曽我部恵一

うーん、たぶん億劫なんじゃないかな。感想を言おうとしても「別に俺が言うようなことでもないな」ってなっちゃって、結局何も言わないっていうさ。

──じゃあこのアルバムはメンバー3人が一丸となって作りました、というものではないんですね。

うん、晴茂くんはいないし、田中が弾いてない曲もあるしね。でもそれが今のバランスだから、それはそれでいいんだよ。田中ともまた「お前のベースじゃないとやれないから早く来いよ」ってなることもあるだろうし、そういう感情とそういう歴史をちゃんと積み重ねていきたくて。

サニーデイ・サービスは3人の物語

──前作では丸山さんの不在について「きみがいないことは きみがいることだなぁ」(「桜 super love」)と歌っていましたよね。

美しい不在感があったよね。

──でも今回はそこまでドラマチックでもない。

うん、ただいなかっただけ(笑)。

──でもこれが今のサニーデイ・サービスなんですね。

そうそう、そうなの。それがわかった。昔は「こんなんだったらバンドやってる意味ないじゃん」って言って解散したわけよ。でもそんな簡単なことじゃなかった。サニーデイっていうのは自分の中ではすごく大事なものだし、そこに向き合うときには緊張感もある。サニーデイの看板を掲げてやったときにパワーはやっぱり何倍にもなるから。

──じゃあ今後もこのスタンスでやり続けていく?

まあどうなるかわかんないけどね。晴茂くんにしても戻ってきてほしいとは思うけど、でも「体調しっかり管理して、次からは絶対参加してね」とは全然思わないし、なるようにしかならないし、それでいいかなって思ってる。

──メンバー3人がそろわなくてもいいんですね。

曽我部恵一

全然いい。「LOVE ALBUM」(2000年9月リリース)を作ったときは参加してるミュージシャン全員をサニーデイ・サービスっていうコミューンの中に入れちゃおうって思ってたんだけど、でもやっぱり違うんだよね。サニーデイ・サービスは3人で始めた3人の物語だし、たぶん誰かが死んでもきっとそのままなんだよ。

──誰かが死んでも続いていく?

そう、死んでてもいいの。もはや死んだからってそれがなんなの?っていう感じがある。なんで死んだくらいでバンドやめなきゃいけないのかって話でさ。

──X JAPANのライブに行くと今もHIDEがいる、みたいなものですか?

そういうこと。そういうの最高じゃん(笑)。

──死んだとしても家族は家族のままですしね。

そうそう。遺影を置いてみんなでごはん食べたりしてるし、死んだから終わりってことでもない。もし今後どんだけ仲が悪くなったとしてもこれは3人で始めたリアルな物語だから。それは絶対に変わらないことですね。

次は丸裸のアルバム

──これほど充実した作品を作った直後に聞くのもなんですが、次回作はどういうものになりそうですか?

次のアルバムはアイデアとか方法論とかじゃなく、とにかくいい曲が10曲入ってる丸裸なやつがいいなと思ってて。アナログテープで録ったバンドサウンド10曲入りのアルバムを作りたい。

──じゃあ特にコンセプトとかはナシで。

そこは賭けだよね。「何これ? フツー」って言われるかもしれない。だからラーメンに例えるとめっちゃうまい中華ソバみたいなことですよ。でもその分、曲の強度をハンパないものにしたいから、ちょっと時間はかかるかもしれない。まだわかんないけどね。

──蓋を開けてみると全然違うものになるかもしれないですしね。

うん、突然インストのアルバムとかになったりして(笑)。「こういうの作る」って言ってその通りになったことないもんな。それがサニーデイの歴史だからね。

曽我部恵一
サニーデイ・サービス「DANCE TO THE POPCORN CITY」
2017年12月18日(月)東京都 LIQUIDROOM
2017年12月21日(木)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
メンバー 曽我部恵一(Vo, G)/ 田中貴(B)/ 岡山健二(Dr)/ 高野勲(Key)/ 新井仁(G)/ 加藤雄一郎(Sax)
サニーデイ・サービス「Popcorn Ballads」
2017年12月25日発売 / ROSE RECORDS
サニーデイ・サービス「Popcorn Ballads」

[CD2枚組]
2700円 / ROSE-214

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[アナログ2枚組]
3996円 / ROSE-214X

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DISC 1
  1. Tシャツ
  2. 東京市憂愁(トーキョーシティブルース)
  3. 青い戦車
  4. きみの部屋
  5. 泡アワー
  6. 炭酸xyz
  7. 街角のファンク feat. C.O.S.A. & KID FRESINO
  8. きみは今日、空港で。
  9. 花火
  10. クリスマス
  11. 金星
DISC 2
  1. 抱きしめたり feat. CRZKNY
  2. 流れ星
  3. すべての若き動物たち
  4. summer baby
  5. はつこい feat. 泉まくら
  6. 恋人の歌
  7. ハニー
  8. クジラ
  9. 虹の外
  10. ポップコーン・バラッド
  11. 透明でも透明じゃなくても
  12. 花狂い
  13. サマー・レイン
  14. popcorn run-out groove

※アナログ盤(2枚組LP)も同様の25曲を収録。

サニーデイ・サービス「クリスマス -white falcon & blue christmas- remixed by 小西康陽」
2017年12月13日発売 / ROSE RECORDS
サニーデイ・サービス「クリスマス -white falcon & blue christmas- remixed by 小西康陽」

[7inchアナログ]
1620円 / ROSE-216

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SIDE A
  1. クリスマス -white falcon & blue christmas- remixed by 小西康陽
SIDE B
  1. Rose for Sally(クリスマス・ソング)
サニーデイ・サービス「サニーデイ・サービス in 日比谷 夏のいけにえ」
2017年12月25日発売 / ROSE RECORDS
サニーデイ・サービス「サニーデイ・サービス in 日比谷 夏のいけにえ」

[DVD]
2700円 / ROSE-215

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収録内容
  1. 今日を生きよう
  2. あじさい
  3. 八月の息子
  4. 江ノ島
  5. スロウライダー
  6. 経験
  7. さよなら!街の恋人たち
  8. 恋におちたら
  9. 苺畑でつかまえて
  10. 96粒の涙
  11. 海へ出た夏の旅~それから
  12. セツナ
  13. 白い恋人
  14. シルバー・スター
  15. 花火
  16. 時計をとめて夜待てば
  17. 24時のブルース
  18. 週末
  19. サマー・ソルジャー
  20. 海岸行き
  21. 忘れてしまおう
  22. 夜のメロディ
  23. 青春狂走曲
  24. 胸いっぱい
  25. One Day
サニーデイ・サービス
サニーデイ・サービス
曽我部恵一(Vo, G)、田中貴(B)、丸山晴茂(Dr)からなるロックバンド。1994年にミニアルバム「星空のドライブep」でデビューし、1995年には1stアルバム「若者たち」をリリース。フォーキーなロックサウンドと文学的な世界観が音楽ファンの間で好評を博し、7枚のアルバムを世に送り出すも2000年12月に解散。2008年8月に再結成を果たして以降は2015年までにオリジナルアルバム2枚とライブアルバム1枚を発表し、2016年8月に通算10枚目のオリジナルアルバム「DANCE TO YOU」をリリースした。2017年6月に予告なしでアルバム「Popcorn Ballads」をApple MusicとSpotifyにてストリーミング配信して大きな話題を集める。同年12月「Popcorn Ballads」をCDおよびアナログ盤でリリース。それに先がけアルバム収録曲「クリスマス」の小西康陽によるリミックスを収めたアナログ7inchシングル「クリスマス -white falcon & blue christmas- remixed by 小西康陽」をリリースした。