sumika|挑戦の4曲で見えた、新たな可能性

一番に選ばれなかった女性の話

──3曲目「No.5」は小川さんが作曲された、アダルトなファンク調の楽曲です。

小川 今まで使ったことのないコード進行でいきたくて、J-POPの基本的なコードの流れを途中で断ち切ってみたり、あえて跳ねないメロディにしてみたり、作戦を立てながら作っていった曲です。全体を通して、艶感みたいなものをかなり意識しました。人の狂気さえも美に変えられたらいいなという。

黒田 荒井さんのドラムが気持ちのいいリズムを作ってくれるので、ギターもそこにうまく乗っかれるように考えていきましたね。あと、初めてクラシックギターを使っているところがポイントです。楽しかったです。

小川 新しいことをやると、テンションが上がるよね。

荒井 僕もすごく楽しかった。最初にドラムとベースとピアノの3人で録ったんですけど、ずっと演奏していたいと思うくらい。レコーディング中にそこまで思える曲は、珍しいと思います。

黒田 この曲、5連符が出てくるパートがあるんですよ。あとからタイトルが「No.5」になったと聞いたときに、「あー!」と思った。「僕抜きで打合せしていたんですか?」みたいな。

片岡 してないよ(笑)。

──メンバーみんなが楽しかったと口をそろえる、ミュージシャン冥利に尽きる曲ですね。でも、歌詞は楽しいものとはだいぶ違って、危険な感じがする愛の歌になっています。これはどういうストーリーをイメージして書いたんですか?

片岡 オガリンから艶感という言葉が出てきたんですが、それを現代で考えるのがなかなか難しくて。「艶やかな感じってなんだろう?」と思って、最初に浮かんだのが花魁、遊郭といった世界観だったんです。でも現代とかけ離れたものを書いても刺さらないと思ったので、艶やかな世界観の中で、現代に起こりうる出来事を書いてみようと。映画の脚本のような気持ちで歌詞を書くことはちょくちょくあるんですけど、そのモードで現代版の遊郭のイメージで“一番に選ばれなかった女性”の話を書いてみました。

──ああ、なるほど。

片岡 最終的に主人公のゴールというのは、その世界から抜けることで。そこから抜けたいけど、その人との関係を崩したくない……けど抜けたい、という葛藤ですね。「幸せのゴールってなんだろう?」と思いながら、叶わぬ夢を見ているという終わり方です。

──5番目の女って、だいぶ微妙な位置ですよね。

片岡 そうですよね。

──No.2やNo.3なら、まだNo.1を狙う余地もありそうですが……。

片岡 そこも狙いました。いっぱい考えて、No.2、3、4とだんだん下げていって(笑)。No.4だとまだ希望があるけど、No.5はあんまり希望ないかなとか。「それでも……」というところが、オガリンが言ってた狂気に通じる気がして。No.5でもいつかこの世界を抜けられるんじゃないかと思うのって、狂気的で、妄信というか。限りなく実現しない可能性が高い夢ですよね。

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“僕とあなた”の2人だけの歌

──4曲目の「エンドロール」はストレートなラブバラードです。

片岡 これも書き方としては「No.5」と一緒ですね。ざっくりしたプロットを書き出して、「こことここをつなぐにはどうしたらいいか?」という曲の作り方をしました。そして詞からイメージした映像に、音を乗せていく。サビの終わりで転調するところとか、そういうふうに作っていますね。

──そういった音より詞が先にあるような曲って、リズムはどう意識していくんですか?

荒井 リズムよりはタッチというか、音の出し方のほうを意識しますね。歌のテンションに合った音の出し方をしないと、世界観と乖離しちゃう部分が出てくるから。曲の前半と後半では言葉の意味合いが違ってくる部分もあるので、そこも考えてタッチにすごく気を使った覚えがあります。シンバル1枚の音を出すだけでも、気を使わないと全部崩れちゃうので。そこはうまく表現できたような気がしますね。

黒田 ギターに関しては、ひたすら「いい歌だなあ」と思いながら自然と出てきたフレーズがほとんどです。フレーズの幅を大きく取って、邪魔にならないように、ストリングスもよく聴こえるようにというのは意識しました。

小川 鍵盤もたぶん壮大にしようと思ったら壮大にできたんですけど、あえてそこにいかなかったです。そこは完全に、歌詞ありきですね。歌詞の2人だけの中で起きていること……その範囲にとどめておけるピアノというか、距離感をかなり意識しました。いい意味で淡々と、抑えて抑えて、というイメージでしたね。2人の物語に寄り添えるように。

──歌詞の展開を読むと、ウエディングソングなんですかね。

片岡 最初のほうだけ聴くと悲しい歌のように思えるんですが、一番のサビの最後でやっとこの歌の本当の意味がわかるという書き方をしています。悲劇的な内容と見せかけて、一行で喜劇に変えるということをやってみたかったんです。結婚のプロポーズってサプライズ感のあるものだと思っていて、「それってこういう感じなのかな?」というのをイメージしながら作りましたね。オガリンが言ったように、壮大なバラードにして広い世界の話にもできたんですけど、今回は“僕とあなた”の2人だけの話にしました。

──「エンドロール」というタイトルでプロポーズの曲とは思わないですよね。

片岡 完全に狙い撃ちです。「ハマった!」って気持ちよかったですね。

──4曲それぞれに強い意志と新たな挑戦が詰まった作品になりました。

片岡 この作品を作って次のツアーを迎えるのは、最高の流れだと思います。これをリリースして2020年を始められて、本当にうれしいなという作品です。

──“調和させる”を意味する「Harmonize」というタイトルは、4曲が出そろってから付けたんでしょうか?

片岡 いや、最初に付けました。「Harmonize」は音楽的な話ではなく、“人として”というところで付けましたね。「人として僕らsumikaが何であるか?」を考えたときに、年々いい意味でこだわりが減ってきて、みんな柔軟になってきてる部分があって。「それってなんでだろう?」と考えたときに、メンバーがお互いを信頼していて、1人ひとりの糸でsumikaが編み込まれているという感覚があったんですよ。そういった関係性でsumikaはできているんじゃないかなと。それは接着剤でもない、釘で打ち付けてるわけでもない、1枚の布のようなもので、ほどいたらみんな1本の糸に戻っていく……そういう関係性って気持ちいいよね、ということでこのタイトルを提案させてもらいました。タイトルを考えてから曲を作り始めたので、曲についてはあまり悩まなかったのかなと思いますね。

──それでジャケットもカラフルな絨毯になっているんですね。

片岡 はい。タイトルとジャケットは、同時に提案しました。

小川 満場一致でしたね。

黒田 スタンディングオベーション!

──間もなくツアーも始まります。「ライラ」のボーカルの掛け合いは観どころですね。

小川 歌詞が飛ばないようにがんばらなきゃ。

片岡 乞うご期待です!

ツアー情報

sumika「sumika Arena Tour 2020 -Daily's Lamp-」
  • 2020年3月28日(土)愛知県 ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)
  • 2020年3月29日(日)愛知県 ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)
  • 2020年4月4日(土)大阪府 大阪城ホール
  • 2020年4月5日(日)大阪府 大阪城ホール
  • 2020年4月11日(土) 新潟県 朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
  • 2020年4月18日(土)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
  • 2020年4月19日(日)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
  • 2020年4月29日(水・祝)福岡県 マリンメッセ福岡
  • 2020年5月2日(土)愛媛県 愛媛県武道館
  • 2020年5月9日(土)東京都 東京ガーデンシアター
  • 2020年5月10日(日)東京都 東京ガーデンシアター
  • 2020年5月16日(土)広島県 広島サンプラザホール
  • 2020年5月17日(日)広島県 広島サンプラザホール
  • 2020年5月23日(土)宮城県 ゼビオアリーナ仙台
  • 2020年5月31日(日)神奈川県 横浜アリーナ
  • 2020年6月6日(土) 北海道 北海道立総合体育センター 北海きたえーる