音楽ナタリー PowerPush - SuG

武瑠が掲げる原点回帰の「パンクス '14」

SuGがニューシングル「CRY OUT」をリリースした。活動再開後、攻撃的でヘビーなアッパーチューン「MISSING」、TeddyLoidアレンジによる“ポップなEDM”「B.A.B.Y.」とカラーの異なるサウンドを毎回提供してきたSuG。今回のシングルでもひんやりとした質感が印象的なミクスチャーロックサウンドを提示しており、バンドの新たな可能性を感じさせる仕上がりとなっている。

昨年12月末の復活ライブからまもなく1年が経とうとしている今、フロントマンの武瑠(Vo)は何を思うのか。2015年にリリースを控えているというニューアルバムの話題を含め、現在の心境をたっぷり語ってもらった。

取材・文 / 西廣智一 撮影(バンド写真除く) / 上山陽介

1970年代のパンクスが2014年にいたら

武瑠(Vo)

──ニューシングル「CRY OUT」、こう来たかとビックリしました。復活後のシングル「MISSING」や「B.A.B.Y.」って、ラウドだったりポップだったりと振り切れた感の強い作品でしたよね。でも今回はちょっと1990年代的なミクスチャーロックの色合いを持つ楽曲で、原色のイメージに近かった前2作に比べるとモノトーンというか、すごく不思議な魅力を持つ楽曲だと思うんです。

ベースの部分が前よりも大人っぽくなったのかもしれないですね。色をカラフルに使っても、昔より大人っぽく使えるようになったというか。それが以前の曲とは違うところだと思います。歌い方にしてもストレートに、自分が思うイメージのままに歌ってる。以前はもっと抜けばかり気にして、子供っぽい歌い方をしてたかもしれない。

──なるほど。この曲はサンプリングが多用されていて、曲として情報量が多いように聞こえるんですけど、でもベースになってる音数って実際はそんなに多くはないですよね。

そうですね。歌が入ってるパートは特にそうです。

──それでいてなんとなく感じる情報量の多さっていうのは、曲の持ってる世界観から感じるものなのか、それとも今のSuGが持つイメージやビジュアルから受ける印象なのか。とても不思議な気がしました。

確かにいろいろごちゃごちゃのまま、全体を大人っぽくしてるところはあります。アートワークでもいろいろ注文したんですよ、色数は多めに使いつつ、ちょっと彩度を落として大人っぽく仕上げるみたいに。

──前回のインタビュー(参照:SuG「B.A.B.Y.」インタビュー)で言った「ストリートゴシック」とか、そういう表現がすごく合うイメージですよね。

武瑠(Vo)

今年発表した作品は全部そういうイメージで作ってますね。正直、次のアルバムのタイトルも「ストリートゴシック」にしようかと迷ったぐらいで。ストリート色が強めだったのが「B.A.B.Y.」、ゴシック色が強めだったのが「MISSING」。で、「CRY OUT」はもう本当にど真ん中のストリートゴシック。SuGが今提示するど真ん中な気がします。

──ど真ん中ですか。

はい。「CRY OUT」は新生SuGのど真ん中になる楽曲と感じてたんで、「MISSING」「B.A.B.Y.」を先に出して大切に温めようと思ってたんです。実際、「SuG」ってタイトルにしようかと思ったぐらい、歌詞もメロディも音楽性も全部が、今のSuGのド直球かなと。あと今作では「1970年代のパンクスが2014年にいたら」っていうテーマもあって、「パンクス '14」というのを掲げてるんです(笑)。あの頃のパンクスが現代にいたら、こういう音楽をやるんじゃないかなって。

──武瑠くんが言うパンクスとは音楽的な意味ではなくて、精神面だったりスタイルという意味でのパンクス?

そうですね。若くて、どこにもぶつけようのないエネルギーを持て余してるようなイメージで。そういうちょっと切ないところも曲の中で表現されてると思います。あと曲中に叫び声のカットアップもサンプリングで使ってるんですけど、それは「CRY」と「OUT」をかけてまして。ポップな中に切なさとか悲痛さが入り交じってる感じが、今のSuGの芯なのかなと感じています。

人と違うことをやってドキドキしたい

──カップリング曲「Nevermind」にも驚かされました。例えば同じパンキッシュな曲でも「Rolling!!」(「MISSING」収録曲)みたいなタイプも過去にありましたが、またそれとも違った初期衝動感というか。

確かに。これは6月かな? ムックのイベントツアーに3本だけ参加させてもらって、そこでものすごい熱を直接感じて、ファンとダイレクトでぶつかり合える曲、みんなで一緒に歌える曲を作りたいと思ったんです。で、この曲の原型があったんで、それをちょっと作り替えて今の形にしました。

武瑠(Vo)

──しかも約1分半のショートチューンという。

そうですね。短っ!って(笑)。

──「CRY OUT」では精神的な初期衝動を表していて、「Nevermind」は音楽的な初期衝動というか。タイプがまるで異なる2曲に驚くファンは多いと思いますよ。

確かに。俺たちとしてはすごく自然にやってるんですけど、SuGのイメージからしたらビックリするかもしれないですね。

──そういう意味では、ここまでのシングル3作ってそれぞれ統一感があるものに仕上がってますよね。「MISSING」は疾走系の楽曲が中心だったし、「B.A.B.Y.」は夏をテーマにした楽曲で構成されていた。そして今回は初期衝動をテーマにした2曲が並ぶわけですから。

ああ、初期衝動でSuG流パンクってことではつながってますね。パンクスをイメージして、髪も中学生以来に短くしましたから(笑)。中2以来なんですけど、マジで。中学のときに部長なのに部活をサボってディズニーランドに行ったのがバレて、謹慎で髪切って以来ですから(笑)。坊主にしろって言われて、坊主はヤダなと思ってシレっとソフトモヒカンにして、それで学校に行ったら顧問も呆れて「坊主じゃないし……もういいよ、それで」って言ったんです(笑)。

──あははは(笑)。

武瑠(Vo)

美容室に行って「シド・ヴィシャスの髪型にしてくれ」って言っただけなんです(笑)。そこに現代バージョンってことでメッシュ入れたりしてますけど。そこに現代の要素を取り入れたパンクな服を着たら、バランス感が面白いだろうなって。まさに「パンクス '14」って感じで。

──作品としては古いけど、映画「時計じかけのオレンジ」とかああいう世界観をもっと現代的にしたものが、「パンクス '14」なのかもしれないですね。

うんうん。あの映画もそうですけど、結局根底にあるのは人と違うことをやってドキドキしたいとか、そういう単純な願望じゃないですか。だから夢を追うでもいいし、もっとちっちゃいことでも、例えば友達に会うとかチケット買ってライブに行くとか、そういうことすべてが結局は「ドキドキしたい」ってこと、平坦な日常じゃないものを味わいたいっていう共通の感情だと思うんです。そういう意味ではドキドキ=初期衝動なのかなって。

ニューシングル「CRY OUT」2014年11月19日発売 / ポニーキャニオン
初回限定盤A[CD+DVD] 1890円 / PCCA-04116
初回限定盤B[CD+DVD] 1890円 / PCCA-04117
通常盤[CD] 1000円 / PCCA-70415
初回限定盤A CD収録曲
  1. CRY OUT
  2. 39GalaxyZ -Rebirth version-
初回限定盤A DVD収録内容
  1. CRY OUT -Music Video-
  2. CRY OUT -Music Video Shooting OFFSHOT-
初回限定盤B CD収録曲
  1. CRY OUT
  2. heavy+electro+dance+punk -Rebirth version-
初回限定盤B DVD収録内容
  1. CRY OUT -Music Video Band Only Ver.-
  2. LIVE in Thailand
通常盤 CD収録曲
  1. CRY OUT
  2. Nevermind
ライブ情報
SuGフェス-2014 冬-
  • 2014年11月21日(金)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
    <出演者>
    SuG / バンドじゃないもん! / 0.8秒と衝撃。 / jealkb
SuG TOUR 2014「WE CRY OUT HELLYEAH」
  • 2014年12月19日(金)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2014年12月20日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
  • 2014年12月22日(月)東京都 LIQUIDROOM
SuG(サグ)

2006年に結成された5人組ロックバンド。現在のメンバーは武瑠(Vo)、masato(G)、yuji(G)、Chiyu(B)、shinpei(Dr)。バンド名はスラング「Thug」に由来し、「周りの意見を気にせずに自分たちの思ったとおりに進む人たち」「悪友」という意味を持つ。結成当初より「HEAVY POSITIVE ROCK」というコンセプトを掲げ、前向きなメッセージを乗せたキャッチーな楽曲で人気を博す。2010年1月、シングル「gr8 story」でメジャーデビュー。メンバー全員が作曲を行い、作詞とそれに基づいた世界観、PV、衣装などのアートワーク全般を武瑠が手がける。また、武瑠は2012年1月には初の著書「TRiP」も刊行し話題を集めた。2012年10月に突然の活動休止を発表し、同年12月29日の国立代々木競技場第二体育館でのライブをもってバンド活動を休止。その後はメンバーそれぞれ独自の音楽活動を続けていたが2013年9月20日、東京・原宿でサプライズライブを行い活動再開を宣言。同年12月に国立代々木競技場第二体育館で復活ライブを行った。2014年に入ると2月に「MISSING」、7月に「B.A.B.Y.」とシングルを立て続けに発表。同年8月には多ジャンルにわたるアーティストをゲストに迎えた主催イベント「渋谷 SuG Fes 2014 夏」を3日間実施した。そして11月、復活後3作目のシングルとなる「CRY OUT」をリリース。