Spotify特集|覆面ユニットが示した新しい音楽の広がり方

母数が少ない言語の国で聴いてもらえるとワクワクする

──「Best Part of Us」は海外の多くのプレイリストに入りましたが、採用されて意外だったプレイリストはありますか?

 海外のプレイリストすべてなんですけど、その中でも英語圏じゃない国のプレイリストにも多数入ったのは意外でしたね。2カ月以上にわたって入り続けているものもありましたし、毎週世界でリリースされる無数の新譜の中から選りすぐりの曲ばかりを紹介する人気プレイリスト「New Music Friday」のグローバル版に入ったのは驚きました。我々のほかには世界的に有名なアーティストの曲しか入っていないですから。

──「今後ここのリスナーに聴いてもらえたら面白いな」と思う国や地域はありますか?

AmPm

 あまり日本とか海外ということを意識はしていないんですけど、アメリカやイギリスでさらに聴いてもらえたらという欲はあります。それと、まだSpotifyさんは進出していないですが、インドや中国など人口が多い国でも聴かれたら面白いですね。Spotifyがサービスを提供している国だとタイとか。世界的に話している人口が少ない言語の国で聴いていただけるのもワクワクします。

 ボーカリストも国を超えていろんな方を使いたいですね。被りものと一緒に輸入して。

──インドや中国で火が付いたら、とんでもない広がり方をしそうですね。

 インドであればわかりやすくインド映画みたいなビジュアルに寄せて、中国だったら赤と金色を使ったような派手なビジュアルにしたいです。

 アフリカとかもこれから開拓してきたいですね。

Spotifyはネタ探しとしても使える

──お二人は普段どのようにSpotifyを利用されてますか?

 僕はいつも音楽を聴きながら仕事をするので、ひたすらプレイリストを選んで曲を聴いています。また、Spotifyではフォローしてる人が聴いている楽曲をリアルタイムで知ることができるので、音楽に詳しい海外のライターさんやSpotifyのキュレーターをフォローして、「この人は今こんな曲聴いてるんだ」というネタ探しにも活用しています。プレイリストをきっかけに新しい曲を探すこともできるし、フォローやバイラルチャートから新しい曲を知るきっかけもあるんです。

 僕の場合は嫁が携帯でSpotifyを使っていて、それを車につないでドライブ中によく聴いてますね。シーン別のプレイリストを流してます。

──Spotifyとほかの音楽サービスの違いはなんだと思います?

AmPm

 1つは更新頻度ですかね。更新頻度の高いプレイリストがめちゃくちゃあるんです。ほかのサービスにもたくさんプレイリストはありますが、Spotifyの場合は「どれだけあるんですか?」ってくらい鮮度の高いプレイリストが多種多様にあるので、飽きないですよね。すでにフォローしているお気に入りのプレイリストも聴き終わらないタイミングでまた更新されて、追い付かないくらいです。

──バイラルチャートも日頃チェックされているんでしょうか?

 はい。バイラルチャートの中に「あれ、この人誰だろう?」というアーティストがけっこういるので、知らない方を知るきっかけにもなりますし。アーティストサイドからすればここにチャートインすることは光栄なことなので、どうやったら入るかは常日頃分析していますけど、Spotifyさんのアップデートのスピードがすごくて、なかなか難しいですね。

──お二人は普段どのような音楽を聴かれるんですか?

 僕はDJもやってるのでディスコ、R&B、ヒップホップ、ジャズ、ラテンなどなんでも聴くんですけど、ベースにあるのはハウスミュージックですね。フランキー・ナックルズとか、ラリー・レヴァンとか、ガラージと呼ばれるようなハウスにすごく影響を受けていいます。ハウスミュージックのレーベルも自分で立ち上げました。

 私も雑食で、基本的になんでも聴くんですけど、普段デザインの仕事をしているので、そのときの案件に応じて聴く音楽が変わります。かわいいものをを作らなきゃいけないときはかわいい曲、男っぽいものを作るときはそういう曲をひたすら聴きますね。あとThe Beatlesがすごく好きなので、そこがルーツになっているかもしれません。

全10組のAmPmが同時出演できる

──AmPmの今後の展望を聞かせてください。

 「Best Part of Us」の再生回数がとんでもない数字になっていることは重々理解していますが、海外には数千万という再生回数を記録しているアーティストもたくさんいるので、今はまだ世界で戦うためのスタートラインに立ったか、その手前くらいかなと考えています。単曲で1千万回再生を越えられるようになって、ようやくほかの海外のアーティストの方に認めてもらえると言うか、理解してもらえる存在になれると思うので、そこまではとにかくがむしゃらにがんばるしかないかなと。あと、「アーティストとしてこんなに振り幅があるのか」「こんな楽曲も作れるのか」と思われるようになりたいですね。「AmPmってこうだよね」というイメージをまだ決められたくないですし、楽曲もビジュアルも今自分たちがいいと感じるものを作っていきます。

AmPm

 好きなことは自分で立ち上げたハウスミュージックのレーベルでやって、今フレッシュだなと思うものをAmPmで事業として作っていきたいですね。

──「SPOTIFY ON STAGE」が初ステージだったわけですが、ライブイベントなどにはこれからどんどん出演していくつもりですか?

 タイミングが合えば、ぜひ出させていただきたいですね。

 すでにオファーをたくさんいただいてるんですけど、スケジュールが合わないんですよ。

 国内外問わず、いつでもどこでもという感じです。被りものをしてるので、ダブルブッキング、ダブルどころか東京の夜のイベントに全10組のAmPmが出ることもできますし。被りものの中の人は違っても、やる曲は全部AmPmの曲という(笑)。こういうことはほかのアーティストにはできないことなので、挑戦していきたいですね。

 Spotifyと組んで、1つのフェスとしてできたら面白いと思います。

Spotify
Spotify

2008年10月にヨーロッパでスタートした、スウェーデン発の音楽ストリーミングサービス。2011年にアメリカに進出し、日本では2016年11月に本格的にスタートした。国内外4000万曲以上の楽曲ラインナップを保有し、2017年6月時点で世界での有料会員数が6000万人超を記録。世界各国のキュレーターやアーティスト、音楽ファンが作成した膨大なプレイリストや、アルゴリズムに基づく独自のレコメンド機能を持つ。また、新進気鋭のアーティストが集まるライブイベント「Spotify Early Noise Night」も定期的に開催している。

AmPm(アムパム)
AmPm
顔出しをせずに活動している、不特定多数によるクリエイティブユニット。2017年3月にデビュー曲「Best Part of Us」を配信リリースした。キャッチーなサウンドで多くの海外リスナーを獲得し、Spotifyでは同曲の再生回数が2017年11月時点で900万回を突破。8月にはインドネシアで行われたSpotify主催のライブイベント「SPOTIFY ON STAGE」に出演し、初ライブを披露した。