もうわけがわからない

──Spotifyでの「Best Part of Us」の再生回数が900万回超という驚異的な数字になっています。この要因をどのように分析されますか？

右　いやあ、ここまで来るともうわかんないですよね（笑）。無名の状態でやれる範疇のプロモーションをやって、何もやらないよりは注目していただけるきっかけを作れたと思いますが、100万回再生いったあたりで「これはすごいな」と。我々としてはもう十分で、「乾杯！」みたいな気持ちでした（笑）。Spotifyが日本でスタートしたばかりの頃だったので、単曲の再生回数が100万回を超えているほかのアーティストは有名な方ばかりでしたし。「この辺で終わりかな」と思ってたんですけど、あっという間に200万、300万と増えていって、いよいよわけわかんなくなりましたね。

左　最初はプレイリストから火が付いたんだもんね。

右　そうですね。日本だけでなく世界各国でたくさんのSpotifyのプレイリストに入れていただいたのはすごく大きかったです。「Best Part of Us」のボーカリストのMichael Kanekoさんがとても流暢に英語の曲を歌える方で、英語圏の方にも違和感なく聴いていただけたのではないでしょうか。あと仕事中でもお休み中でも、昼でも夜でもいつ聴いてもスッとなじむ曲なので、シーンを限定せず多様なプレイリストに取り上げられ、長い期間たくさんの方に聴いていただけてるのかなと思います。

左　リリースした春という時期にも合ってたと思います。

──リリースする時期も計算して？

右　そうですね。さわやかな楽曲なので、あまり冬の寒々しいときに出す曲でもないし、かと言って真夏の「今からビーチに行こう！」みたいな勢いの曲でもないので。曲ができてから季節の変わり目あたりのリリースを考えて、結果3月に出しました。

──ほかの音楽サービスでも楽曲を配信している中、Spotifyでブレイクしたのはなぜだと思います？

右　Spotifyさんにはシーンや気分に合わせたプレイリストがたくさんあって、またよいと思った楽曲を簡単にソーシャルメディアでシェアできる。その特徴と我々の楽曲との相性がよかったのかなと思います。

スーパースターかと思った

──多くの海外のリスナーを獲得している実感はありますか？

左　普段はあまりないですね。でも、8月にインドネシアで行われたSpotify主催の音楽イベント「SPOTIFY ON STAGE」に出演したときは実感しました。

右　海外のリスナーを意識したというより、「僕らの楽曲を聴いてくれている人が世界にこんなにいるんだ」と思いましたね。

──お客さんのリアクションはいかがでした？

右　いやあ、僕らスーパースターなのかと思いましたよ。何組かの人気アーティストがいる中で我々がトップバッターだったんですけど、お客さんが大声援で温かく迎えてくださって。我々の楽曲を聴いて覚えてくれていて、披露したすべての楽曲を大合唱してくださり、ただただ楽しかったです。

左　皆さんが歌ってくれたんですよ。Spotifyでこのイベントのプレイリストを事前に聴いていてくれたんですね。

──再生回数の数字を見るのと、実際のリスナーを前にするのでは感じるものが違いますよね。

右　ですね。Spotifyのユーザーには、仕事や何かをしながら曲を聴かれている方がたくさんいて。よい音楽であれば、聴いたことがない曲やアーティストであっても音楽との出会いを純粋に楽しんでいて、我々の場合もそのような聴かれ方をされているんだと思います。でも、大多数の方に歌ってもらえたということは、その後AmPmというアーティストがリスナーにちゃんと認識していただけたということかなと。

左　しかも、あれが初ライブでしたからね。

──今後、AmPmさんのような音楽の広がり方は増えていくと思いますか？

右　SpotifyのプレイリストやAIによるレコメンデーションなどを通じて、リスナーに無名のアーティストの曲が引っかかることはあると思いますし、アーティストはそれをきっかけにして新たなファンを獲得できるしょうね。ある意味プレイリストはフェスみたいなもので、新たなファンの流入は国籍関係なく大いにあり得ることかなと。

左　僕らもAmPmがさらに波に乗ったときには、アーティストをゼロからプロデュースするプロジェクトを別にやるのもアリかもしれないですね。