ナタリー PowerPush - SOUR

回り続ける日常、回り続ける音楽

YouTubeで公開されたビデオクリップが全世界で評判になり「文化庁メディア芸術祭」エンターテインメント部門大賞を受賞した「日々の音色」をはじめ、クリエイティブディレクター川村真司と組んだ映像が毎回大きな注目を集めているSOUR。新曲「Life is Music」のPVでは、CDの回転を利用したアニメだけで作られた映像のインパクトのみならず、実際に撮影で使用したCDを販売するというコンセプチュアルな取り組みも話題を呼んだ。

そんな「Life is Music」も収録された3年ぶりのニューアルバム「LIFE AS MUSIC」の発売を記念し、本特集ではメンバー3人にインタビューを実施。さらにPV撮影現場の様子を、PVプロデューサー相原幸恵の解説とともにフォトギャラリーで紹介する。

取材・文 / 橋本尚平 撮影 / 小坂茂雄(PV撮影スタジオ写真を除く)

ほかのメンバーが好きな音楽を知らない

──SOURはオーガニックなアコースティックバンドというイメージがあったんですが、よく聴くとそれぞれの演奏やアレンジ、歌い方などが独特で、いったいなにがルーツなんだろうって不思議だったんですよ。まず、皆さんが楽器を始めたきっかけから聞かせてください。

SOUR

Sohey(B) 家に親父のギターがあったから最初はそれを弾いてたんです。でも友達同士でバンドやろうぜって話になったときに、やっぱりみんなギターに飛びつくじゃないですか。だったらじゃあベースをやろうかなと。だからあまりベースに対してモチベーションがあったわけじゃないし、ギターヒーローに対する憧れはずっとあったんで、ベースも速弾きすることに興味がいっちゃってましたね。しかも親父がギターやってたもんで、ベース始めたって話したら「なんでそんなつまんない楽器やり始めたんだよ」ってDISられて、すごく切なかったです(笑)。

高橋ケ無(Dr) 俺は天邪鬼だから「ドラムが一番プレイヤー人口が少ないだろう」と思って始めて、実際にセットに座ったら初めてなのにすぐ叩けたんですよ。だから「あー、じゃあこれでいいや」って。だから基本的に今でもですけど、好きなドラマーってそんなにいなくて。どっちかっていうとAutechreとかAphex Twinみたいな打ち込みの音楽が好きで、ああいうのをドラムでやりたいんです。最近ジャズとかプログレとかを聴くようになって、ようやく「ドラムいいな」って思えました(笑)。昔から、ジョン・ボーナムとか好きになれないし、ドラマーとドラムの話ができないから、ドラム辞めたかったんですよね(笑)。

hoshijima(G, Vo) 3人とも基本的にひねくれてて、みんなと同じじゃないようなことをやろうとするんですよね。僕がガットギターを弾いてるのも、音色はもちろんのことみんなエレキだからって理由もあるし。アコースティックなものももちろん好きなんですけど、オーガニックな音楽がやりたいからウッドベースを使ったりガットギターを使っているわけでは全然なくて。楽器として面白いことできそうだなっていうのが大きくて。

──この3人でバンドを組んだときから今のような音楽性だったんですか?

hoshijima みんな根っこがロックだから、最初はもっとごちゃごちゃした激しい曲をやってたんですよ。でもケ無が今言ってたようにAutechreとかAphex Twinみたいな打ち込みっぽいことを生楽器でやりたいとか、ポストロックの流れで音数を極力減らしたいと思うようになって。で、それを最終的にポップに仕上げようっていうのは結成した頃から考えてました。キャッチーなメロディで、音楽的に面白い部分とポピュラリティを両方成立させたいって。

──「このバンドみたいな音楽がやりたい」というのは具体的になかったんですか?

Sohey メンバーが共通して好きな音楽ってほとんどないんですよ。もともと先輩後輩で、「楽器を弾きたい」ってだけで集まったんで。

hoshijima 共通項はレッチリくらいだよね(笑)。僕は高校、大学ぐらいの頃にミクスチャーとかメロコアにどっぷりだったし。

高橋 俺が今好きな音楽を2人はまったく知らないし、俺も2人が何を好きなのか知らない。だからツアーとかで、車の中でメンバーが流す曲が全然わかんなくて(笑)。

Sohey かろうじて「なんかケ無、最近プログレ多いな」とか、傾向がわかるってくらい(笑)。

hoshijima むしろそこを面白がってるとこあるよね。

高橋 曲を作るときも手の内を明かさないほうが面白いですし。「敵を騙すにはまず味方から」ですよ(笑)。

音楽を作ることが“日常”だったって気付いた

──「LIFE AS MUSIC」は前作から3年ぶりのアルバムということで、けっこう間が空きましたね。

Sohey 「しばらく悩んでたんです」とか「自分たちを見直して」とかそういうのは別になくて、流れの中で自然に空いた感じなんです。ただ思い返してみると、2007年に1stアルバムを出してから、ずっと1年に1枚のペースでリリースしてきたのが、前のアルバムを出してリリースツアーをやったときに震災でツアーファイナルが延期になったんですよね。で、ずっと定期的にやってたことが1回そこでシュンと落ち着いて。

高橋 何もなくてもずっと曲作りをしてるバンドなんで、絶対に1週間に2~3回はスタジオに入ってたんですけど、やっぱり震災のあとは入る気になんなかったんです。まあ休んだのは2週間とかそれぐらいなんで、大した話じゃないんですけど。でもちょっとブツッと切れた感があって、そこで1回リスタートしたような気持ちになったんですよ。

Sohey 「定期的にアルバムを出さないと!」みたいな焦りもなくなったしね。それにアルバムを出してないとは言っても、DAZZLEっていうダンスチームとコラボするために作った1曲をiTunes Storeで配信したり、そのダンスチームと一緒にやった公演をDVDで出したり、その都度やりたいことをみつけてたんで、アルバム作ってないっていう感覚もそんなになく。

──そのリセットで音楽的にプラスになったことはあります?

hoshijima(G, Vo)

hoshijima これもまあ結果論で、今思ってみればってことなんですけど、スタジオに入って曲を作るというサイクルが短い間とはいえ1回なくなったことで「これって日常だったんだな」ってわかったんです。自分たちの中では、音楽は音楽、生活は生活でしっかりと分かれてる認識だったんですけど、全然そうじゃなかった。音楽があってこその生活、生活があってこその音楽で、それがサイクルとなってずっとやっていたんです。

──まさに今回のアルバムタイトルですね。やっぱり今作にはそういう感覚を反映させているんですか?

hoshijima 当初からコンセプトとして考えてたわけではないし、曲を書いてるときもそんなことは意識してなかったんですけど、溜まった3年分の曲を眺めていると「あっ、そういう感じだったんだな」って気付いたというか。

ニューアルバム「LIFE AS MUSIC」 / 2013年12月11日発売 / 2415円 / SPACE SHOWER MUSIC / PECF-3064
ニューアルバム「LIFE AS MUSIC」
収録曲
  1. 繰り返す今
  2. Life is Music
  3. 月日は流れて
  4. What I am
  5. Trieb
  6. 適当なEQにリバーブちょっとで
  7. 寝静まる街
  8. パズル
  9. まにまに
  10. クレマ
  11. round and found
  12. この夏の終わり
DVD「SOUR Music + Visuals」 / 2013年12月25発売 / 2000円 / SPACE SHOWER MUSIC / PFBF-3065
DVD「SOUR Music + Visuals」
収録内容
  1. 半月
  2. 面影の先
  3. 日々の音色
  4. 映し鏡
  5. Life is Music

特典映像:「影踏み SOUR×DAZZLE LIVE at shibuya www」

SOUR "LIFE AS MUSIC" リリースパーティ東阪ワンマンライヴ
2014年1月12日(日)東京都 代官山UNIT
<出演者>
SOUR
ゲスト:Dub Master X(PA) / 柴由佳子(violin) / 林絵里(contrabass) from チーナ / 大島武宣(guitar / chorus) / 伊藤絵里(percussion) from Senkawos
DJ:マイケルJフォクス VJ:eetee
2014年1月19日(日)大阪府 心斎橋CONPASS
<出演者>
SOUR
DJ:カズキ(Perfume* / フィッシュマンズナイト大阪) / cob氏(Perfume*)
FOOD:Roma Pizza Cheena
全国ツアー詳細も決定、詳しくはこちらで。
SOUR(さわー)

SOUR

hoshijima(G, Vo)、Sohey(B)、高橋ケ無(Dr)により2002年に結成された、アコースティックサウンドを基調にしたポップバンド。2005年に自主制作で販売したCD「for my incongruity」が、下北沢ヴィレッジバンガードにて2カ月連続売上枚数1位を記録した。2007年発売の1stアルバム「rainbow under the overpass」に収録された「半月」のPVをクリエイティブディレクター・川村真司が制作し、この映像が雑誌「広告批評」のミュージックビデオ年間第7位に選出される。以降もSOURの映像制作は川村が携わり、2009年にYouTubeで公開した「日々の音色」のPVは再生数400万を突破して全世界で話題に。同PVは「文化庁メディア芸術祭」エンターテインメント部門で大賞を受賞した。さらにTwitterやFacebookと連携した「映し鏡」のビデオクリップは「カンヌ国際広告祭」の金賞など多数の賞を獲得。2012年には世界的ダンスカンパニー・DAZZLE との共同公演「Moon Shot」を行い、その模様を収録したDVDを発売。2013年12月には3年ぶりのアルバム「LIFE AS MUSIC」をリリースした。