ナタリー PowerPush - SOUR

回り続ける日常、回り続ける音楽

前作がモノクロだったから、今回はカラフルに

──今回のレコーディングで特別こだわった部分は?

高橋 俺は完全に70年代感を狙いました。70年代後半のグレッチのドラムセットを使ったというのもあるんですけど、「70年代の音でありつつも2010年のエディット感」を俺の中でテーマにしてて。これ、別に2人に伝えてないし、1人で満足してるだけなんですけど(笑)。「まにまに」って曲は70年代ユーロプログレですね。

Sohey 僕はSOURを始めてからウッドベースを弾くようになったんですよ。1stアルバムのレコーディングの1週間前ぐらいに買って(笑)。

高橋 全然弾けなくてレコーディングすげー時間かかったよね(笑)。

Sohey それ以来ずっと使っているんですけど、気付いたら前回の「アンサンブル」のときは2曲しかウッドベース弾いてなくて。だから今回のアルバムはウッベを多めに入れてます。あと、これも生活サイクルがリセットされたことと関係あるかもしれませんけど、「ウッドベースなんだから、ジャズっぽいアプローチしないと」みたいなことを気にしなくなってきて。だからエレキでやるようなことをウッベでしたり、楽しく弾けました。

hoshijima(G, Vo)

hoshijima 僕はいつもよりバラエティ豊かな感じにしたいなっていう意識がありました。今回はエレキギターを使ってみたり、言葉のハマり方が面白くなるようにしたり、今までよりコーラスをしっかり入れたり。前作は作る時間も限られてたので一気にガッと仕上げて、まあそれはそれでよかったんですけど、今度はもうちょっと色を付けたものにしたいなって思ってて。

高橋 なんかカラフルにしたいって話をしたね。前のアルバムがモノクロな感じなので。

hoshijima よくも悪くもこだわりがなくなって「なんでもやったらいいじゃん」って気持ちになってきたんですよ。でもみんなで好き勝手にやってみたら、意外と統一感があって普通にSOURだったなと(笑)。

Sohey でもエレキを弾いて違和感なかったの初めてじゃない? 今までも何回か試してるじゃん。

hoshijima そうだね。今のタイミングだからハマるようになったっていうことなのかも。

高橋 多少老成したんじゃないですか? エレキギターを弾くにはまだ若すぎた、みたいな(笑)。

「Life is Music」は「映し鏡」と逆

──「Life is Music」のPVの制作費をクラウドファンディング(参照:グリーンファンディング)で集めることになった経緯は?

hoshijima ビデオを作るだけなら今までいろいろやってきてるから、今回は作る過程とか、ファンへの届け方だとかに工夫をしたいねって話していて。出資してくれた人にまずは制作過程から見てもらおうってことになったんです。前回の「映し鏡」のPVでもKickstarterっていう欧米のサービスで同じことをやったんですけど、全部英文だったり、決済の方法も難しかったりで、日本人にはちょっと仕組みが難しかったんですよね。

──制作資金が実際にどれくらい集まるかわからないし、それによってやれることも変わってきそうですね。

hoshijima そうですね。僕らもやってみないと実際どのぐらい協力してもらえるのか読めないので、けっこう出たとこ勝負で。結果的に皆さん賛同してくれて、目標額50万円を超えて90万円になったので助かりました。そのお返しに限定ディスクとかサイン、ポスターとかいろいろ用意するわけなんですけど。やっぱりモノに対する期待感や「応援したいよ」っていう気持ちがないと当然ファンドはしてくれないですから。

──支援してよかったと思われるものをちゃんと作らなきゃって思いますよね。

hoshijima そうですね。いい意味でのプレッシャーにもなって、やってみてすごくよかったです。

──PVでCDを使ったのはアルバムのキーワードが「回転」だからですよね。

hoshijima もちろんそれもありますし、前の「映し鏡」のPVが完全にWEBで観るためのもので、しかも特定のブラウザでしか動作しなかったので。

高橋 観られない人も多かったんだよね。ちょっとテクニカルすぎたって反省してて、今度は誰でも観られるものにっていう話がまずあって。

Sohey(B)

Sohey だから今度は徹底してリアル側に寄せたんですよ。パッと見はCGアニメみたいだけど、回ってるCDをただ撮ってるだけだから、そういう意味では「映し鏡」と逆で新しい技術を使ってない。

hoshijima あのだまし絵は「フェナキストスコープ」っていうんですけど、川村くんはもともとこういうことをやりたいと思ってたみたいです。で、今回の曲の内容に合致するんじゃないかってことで、アイデアを持ってきてくれて。

──映像だけでも相当インパクトがあるんですが、「実際に撮影で使ったCDを売る」というところまで含めて1つの作品になっているのが面白いですよね。

hoshijima スペースシャワーミュージックの甚大なるご協力のおかげです(笑)。普通はマスタリング済みの盤を使ってビデオを撮りたいなんて言っても、なかなかやらせてくれないと思うんですけど、「面白そうじゃん」ってノッてくれたんで。作品を作る過程から見てもらって最終的に現物のCDを手に取ってもらう、手元に残してもらう、というのが大きなポイントでした。

──撮影の段階で完パケしたものが必要なので、レコーディングを前倒しの進行でやらないといけないってことですよね。

Sohey そうだったんです。なので今までと比べてレコーディングのスケジュールが変則的で超タイトでした。

hoshijima 発売日から逆算してみたら、盤をプレスする期間を考えると「あれ? もう時間がない」みたいな(笑)。

高橋 レコーディングしてから時間が経ってるから、まだ発売前なのにもう次の新曲が1曲できちゃいました(笑)。

ニューアルバム「LIFE AS MUSIC」 / 2013年12月11日発売 / 2415円 / SPACE SHOWER MUSIC / PECF-3064
ニューアルバム「LIFE AS MUSIC」
収録曲
  1. 繰り返す今
  2. Life is Music
  3. 月日は流れて
  4. What I am
  5. Trieb
  6. 適当なEQにリバーブちょっとで
  7. 寝静まる街
  8. パズル
  9. まにまに
  10. クレマ
  11. round and found
  12. この夏の終わり
DVD「SOUR Music + Visuals」 / 2013年12月25発売 / 2000円 / SPACE SHOWER MUSIC / PFBF-3065
DVD「SOUR Music + Visuals」
収録内容
  1. 半月
  2. 面影の先
  3. 日々の音色
  4. 映し鏡
  5. Life is Music

特典映像:「影踏み SOUR×DAZZLE LIVE at shibuya www」

SOUR "LIFE AS MUSIC" リリースパーティ東阪ワンマンライヴ
2014年1月12日(日)東京都 代官山UNIT
<出演者>
SOUR
ゲスト:Dub Master X(PA) / 柴由佳子(violin) / 林絵里(contrabass) from チーナ / 大島武宣(guitar / chorus) / 伊藤絵里(percussion) from Senkawos
DJ:マイケルJフォクス VJ:eetee
2014年1月19日(日)大阪府 心斎橋CONPASS
<出演者>
SOUR
DJ:カズキ(Perfume* / フィッシュマンズナイト大阪) / cob氏(Perfume*)
FOOD:Roma Pizza Cheena
全国ツアー詳細も決定、詳しくはこちらで。
SOUR(さわー)

SOUR

hoshijima(G, Vo)、Sohey(B)、高橋ケ無(Dr)により2002年に結成された、アコースティックサウンドを基調にしたポップバンド。2005年に自主制作で販売したCD「for my incongruity」が、下北沢ヴィレッジバンガードにて2カ月連続売上枚数1位を記録した。2007年発売の1stアルバム「rainbow under the overpass」に収録された「半月」のPVをクリエイティブディレクター・川村真司が制作し、この映像が雑誌「広告批評」のミュージックビデオ年間第7位に選出される。以降もSOURの映像制作は川村が携わり、2009年にYouTubeで公開した「日々の音色」のPVは再生数400万を突破して全世界で話題に。同PVは「文化庁メディア芸術祭」エンターテインメント部門で大賞を受賞した。さらにTwitterやFacebookと連携した「映し鏡」のビデオクリップは「カンヌ国際広告祭」の金賞など多数の賞を獲得。2012年には世界的ダンスカンパニー・DAZZLE との共同公演「Moon Shot」を行い、その模様を収録したDVDを発売。2013年12月には3年ぶりのアルバム「LIFE AS MUSIC」をリリースした。