somei「デキ猫」OPテーマでメジャーデビュー、MV主演の富田望生と初対面で意気投合 (3/3)

踏み出さないと何も始まらない

somei ミュージックビデオ撮影、緊張しました(笑)。

富田 うふふ。当初のスケジュールだと、私たちの共演シーンは後半のほうに撮る予定だったんですけど、急遽最初に撮ることになったんですよね。

somei そうなんです。なので、心の準備が整わないままスタートしてしまって(笑)。

富田 その初々しさが、いい感じに映像になっていたら素敵ですよね。

somei でも、富田さんのおかげで自然体で臨めました。すごく引っ張っていただいて。

富田 いやいやいや。このシーンだけ、2人の声をオンで使う演出になっているのがちょっといいですよね。私が写真家を目指すヨシノという女の子の役なんですけど、そのヨシノの個展を訪れたsomeiさんが自己紹介をしてくれる流れで……。

富田望生

富田望生

somei富田 「ソメイヨシノだねー」って。

富田 台本にはそのセリフはなかったんですけど。

somei なかったですね。でも細かいセリフ回しまでは決まってなかったので、自然とその会話になりました。

富田 「やっぱりそうなりますよね」という感じで。そのあとも、ご自分の出番は終わったのにずっと撮影を見守ってくださってありがとうございます。

somei もう、見とれてしまって。お芝居で惹き付ける力がすごいなあと感じて、ずっと引き込まれてました。

富田 うれしい。someiさんとのシーンはセリフもあったし、相手がいてのお芝居だからまだつかみやすかったんですけど、ほかのシーンはセリフがない分、難しいなと思いました。

somei 富田さんの解釈では、ヨシノちゃんってどういう子ですか?

富田 監督から言われていたのは、「友達思いで、自分がやりたいと思ったことは誰に反対されても一度は追い求めてみるタイプの子だから」ということで。ヨシノちゃんは自分の机の前に「顔晴れ!」っていう……顔が晴れると書いて「がんばれ」と読む言葉を貼っているんですね。実際に私が書いたんですけど。

somei あれ、素敵だなと思いました。

富田 監督と「どんな言葉がいいかな?」と話し合った中で、何かそういう前向きな言葉がいいだろうと。「じゃあ、悩んでいる人にヨシノちゃんだったらどういう言葉をかけるんだろう?」と一緒に考えていったときに、あの言葉が生まれたんです。

somei ヨシノの性格は富田さんのイメージともそのまま重なります。

富田 確かに、やりたいと思ったことは一度とことんまで突き進んでみるみたいなところは似てるかもしれない。

somei それ、実は私もです(笑)。

富田 あはは。でも、大事なことですよね。だって、踏み出さないと何も始まらないし。自分がそれに向いているか向いていないかも理解できないまま夢を終わらせてしまうのって、面白くないじゃないですか。もちろん「向いてない」と思って辞めるのも本人の自由だけど、「本当にやれるところまでやって、その結論なの?」とは思うんですよね。そうじゃない限り、やりたいことは続けるべきだと思う。

somei うんうんうん。

somei

somei

不安なんですよ

somei 撮影を拝見していて、富田さんはカメラが回っていないところでもずっとオンなんだなと思ってたんです。眠い目をこすりながら作業するシーンのときは、カメラが止まってもずっと眠そうにされていて(笑)。オンでい続けるほうがやりやすいですか?

富田 不安なんですよ。一度オフにしちゃうと、いざ本番が始まったときにパッと戻れる保証が自分にはないから。特に今日のようなMV撮影は1日しかないので、何日もかけて撮る映画やドラマと違って、セッションが噛み合うかどうかを見極めている時間的な余裕もないから、まずは自分に役を染みつかせておかないと……単に私が不安ってだけなんですけど(笑)。

somei あははは(笑)。

富田 役者さんによっては、「ハイ!」ってすぐ役に入れる方もいらっしゃるんですよ。直前までパンとか食べてケラケラ笑ってたのに、「お願いしまーす」って呼ばれた瞬間にブワーッと涙を流せる方とか。私はそういうことができないタイプなんですよね。

富田望生

富田望生

somei へえー。

富田 なのに、私は意外と器用なタイプに思われがちだったりもして……それこそ、「憂う門には福来たる」の中に「器用に生きて損をする」ってフレーズがあるじゃないですか。

somei はいはい。

富田 技術でどうにかできちゃうほどのものは得ていないと思っているので、なんでそう思われるのか不思議なんですけど。器用じゃないのに、「器用に生きてると思われて損をする」タイプです(笑)。

somei あはは。私、朝の撮影でご一緒させていただいたときに、カメラが回ったり止まったりするたびにいろいろ考え込んでしまったんです。「あれ、こうだっけ?」とか混乱してしまって……“自分役”ではあるんですけど(笑)。

富田 うんうんうんうん。わかりますよ。

somei だから、ずっと入り込んでオンの状態をキープするほうがいいのかな?と思って。

富田 人によるんですよね。やり方の合う、合わないがあって。

somei なるほど……!

富田 ご一緒する監督によっても違うと思います。私の場合は最初にお世話になった監督に「お前にはまだ技術がないんだから、役として生き続けないと」と言われて、それが土台になっているというだけの話なんですよね。別の環境で役者人生が始まっていたら、全然違うタイプの役者になっていた可能性もあると思うし。

somei そういうものですか。

富田 だから、someiさんが今私にした質問をほかのいろんな役者さんにも同じように聞いたら、それぞれ全然違う答えが返ってくると思いますよ。

1人ひとりの“あなた”に届けたい

富田 私、someiさんのライブにすごく行ってみたいです。さっきロケバスの移動で神宮球場の横を通ってきたんですけど、例えばああいう野外の会場とかにsomeiさんが1人で立って歌っている姿を見たら、もう感動しちゃうだろうなって。

somei ありがとうございます! 私は中学生のときからライブハウスでライブをしてきたので、やっぱりCDなどの音源作品を作るだけではなく、直接お客さんの前で歌いたい、伝えたいという気持ちを強く持っているんです。ずっと小さなハコで歌い続けてきて、お客さんが0人というライブも何回も何回も経験しているから……今後、もし聴いてくださる人の数が増えていったとしても、1人ひとりの“あなた”に向けて音楽を届けていきたいなって。

somei

somei

富田 素晴らしい……!

somei いえいえ。例えば、中には目や耳の不自由な方もいらっしゃるじゃないですか。でも私はどんな方にも満足してもらえるライブがしたくて、例えば目が見えなくても楽しめる、耳が聞こえなくても伝わる演出の方法とかを全力で考えて取り組んでいきたいんです。誰1人置いてけぼりにしない作品作りもしていきたいと思っていて。すごくきれい事を言っているのは理解してるんですけど……。

富田 でも、本当に思っていることですもんね。そういうことをまっすぐに言える人って、今は少なくなってきていると思うんです。「きれい事だから」と口を閉ざすほうが簡単だから。

somei 確かに、「思っていても言えない」みたいなことはたくさんあると思います。

富田 私の大好きなアーティストさんは、「全員を愛で包むんだ」ってずっと言ってるんですよ。それもやっぱり、口先だけじゃなくて本当に思っていることだから伝わるんですよね。曲を聴くたびに「ああ、愛で包まれてる……!」ってなりますから。……玉置浩二さんのことなんですけど(笑)。

somei 玉置さんがお好きなんですね。めっちゃ素敵です!

富田 ホントに大好きで(笑)。だからたぶんsomeiさんのその素直な気持ちは、同じようにお客さんを包んでいくことになると思いますよ。私も包まれたい(笑)。

somei がんばります(笑)。

富田 someiさんの今後を本当に楽しみにしてます。大きなステージに立っても、そのままでいてほしい。

somei ありがとうございます……! 今日、富田さんとお話ができてよかったです。とても心が温かくなりました。

富田 こちらこそー!

左からsomei、富田望生。

左からsomei、富田望生。

プロフィール

somei(ソメイ)

10月28日生まれ、東京都出身のシンガーソングライター。アーティスト名には「さまざまな姿を持ち、移りゆく季節に寄り添うソメイヨシノのように、たくさんの表情を持ち多くの人の瞬間に寄り添えるアーティストになれるように」というメッセージが込められている。中学2年生でライブ活動をスタートさせた。2023年8月、ソニーミュージック内のプロダクションおよびレーベル・ミュージックレイン/ MiCLOVERより1stシングル「憂う門には福来たる」でメジャーデビューする。

富田望生(トミタミウ)

2000年2月25日生まれ、福島県出身。オーディションを勝ち抜き、2015年公開の「ソロモンの偽証」で映画初出演を果たす。主な出演作に映画「チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~」「あさひなぐ」「SUNNY 強い気持ち・強い愛」、ドラマ「教場」シリーズ、「だが、情熱はある」など。