ナタリー PowerPush - SOIL&"PIMP"SESSIONS

椎名林檎、ジェイミー・カラムも参加 新作「6」で爆音ジャズ新境地を切り開く

このところのSOIL&"PIMP"SESSIONSのライブを観ていると、とてつもない狂騒とスリルの中に変化の季節が訪れていることを感じずにはいられない。ソロパートの充実ぶりに代表されるように、強固なバンドのアンサンブルにある6人の関係性の改革が、そのままオーディエンスとの熱の交換やコミュニケーション、緊張と解放の作用に直結しているのではないかと感じられるのだ。

熱狂を持って迎えられた恒例のヨーロッパでのツアー、そして夏フェスを経てリリースされるニューアルバム「6」は、バンドとしての数々の新境地が極めて明快に記されている。決してマンネリズム脱却のためのような安易なコラボレーションはしないことは言うまでもないが、SOIL名義では初めてとなるボーカル曲に象徴される、気心の知れたアーティストとの共演がアルバムのハイライトのひとつとなっている。

スピード感やドラマティック度の向上と、さらにカテゴライズを越えて折衷する豊潤な音楽性。6人の結束に呼応するように、彼らがなぜ音楽的にそして精神的に「もうひとり」を求めるのか。SOILが掲げる「DEATH JAZZ」にどんな意識の転換が訪れたのか、そして変わらないものは何か。ベースの秋田ゴールドマンとアジテーターの社長が答えてくれた。

取材・文/駒井憲嗣

個々のスキルアップがバンドのレベルアップにつながった

──前作「PLANET PIMP」を発表されてから、ヨーロッパツアーなど精力的にライブ活動を行っていましたね。SOILとしてはどんなことを考えていましたか?

社長 とにかくいろんなところに行ったかな。そしてずっと曲を作っていたなあという気がしますね。

秋田ゴールドマン このアルバムを作るためというわけではなくてね。

──自発的に曲作りを続けていたんですね。

社長 もちろんこういうアルバムを作りたいとか、ちょっとコンセプチュアルにしてみようかとか、イメージはあるわけですよね。そういういろんな模索をしながら、出てきたアイデアをどんどんスケッチしていくみたいな。それが前のアルバムが出た直後くらいの話でした。それから、いろんなことにトライしたんです。ちょっとラテン縛りで曲を作ってみようみたいなこともあったし。

──お題があったほうが曲が作りやすかったり?

社長 必ずしもそうではないんですけどね。メンバーそれぞれいろんなアイデアを持っていて、出てきたものはその都度録りためていて。スケッチでもメモでも記録していって、そこから次の作品の方向性を見出す感じかな。

秋田 たぶん、個人個人がよりスキルアップした時期だったんじゃないかな。それが重なったときに、バンドとしてレベルが上がったんじゃないかと僕は思っているんです。音を出していても、あ、こいつ急に上手くなった、とか感じますし。

お互いに遠慮せず、完成形が見えるまで突き詰めた

ライブ写真

──ライブを拝見していても、重要な楽曲とソロコーナーのバランスなど、SOILが変化の途中にあることを感じるんですが。

社長 昔は無駄に長くソロをとらないとか、楽曲の中で無駄なものは一切取り払うとかっていうテーマはなんとなくあったんだけど、そういう時期を経て、口で言えるような決まり事やルールが自分の体の中で一度消化されて、いちいち考えなくてもその楽曲をより高揚感のあるものにできるようになった。例えばソロが長かったとしても、それが曲としていいものだったらそれでいいし。今回の「6」にはソロがない曲もあるし。だから頭で考えるのではなくて、もっとフラットに自分たちの音楽に向き合えるようになったと思います。

──SOILの音楽には常に重厚でストイックな姿勢がありますが、「6」は特にそんなバンドの魅力を表現しているアルバムのように感じました。

社長 小手先のテクニックを使わなくなったんですよね。それこそイントロをキャッチーなものにしたり、キメを入れてかっこよくしてみたり、尖った音で録ってみたり。いわゆる爆音ジャズというものをより力強くするためにそういうことをしてきたんだけど、今回はそれがなかった。純粋に6人から出てきたものがいいか悪いか、気持ちいいかどうか、ライブの絵が浮かぶかどうか、お客さんに届くかどうか。そこだけを考えていました。

秋田 嘘をつかないということですね。この6人のスキルアップと意識の向上が奇跡的にこういうサウンドを生み出したんじゃないかな。

社長 「PLANET PIMP」は個性の異なる6人それぞれの個を出してみようという作品だったんですよね。個人のいろいろなアイデアがあって、そのセンスが自分になかったとしても「この人がかっこいいと言うんだから、それをリスペクトしてその方向に行ってみよう」と考えてやっていた。イニシアチブをとる人に他のメンバーがついていく感じで曲を作っていたけれど、今回はもっと意見をぶつけ合う作り方をしてみたんです。お互いに遠慮せず「こういうのどう?」って、さらにその先をいく完成型が見えるまで突き詰めていった。

秋田 うわべだけではなくて、心から違うセンスを吸収できるようになってきたのかもしれないですね。

社長 個々が強くなって、各々がぶつかり合うパワーができたんだと思う。

秋田 でもそれは実は昔からやってることなんだけれどね。

ニューアルバム『6』 / 2009年9月16日発売 / 2800円(税込) / Victor Entertainment / VICL-63376

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CD収録曲
  1. SEVEN (Intro Sound Collage by DJKENTARO)
  2. KEIZOKU
  3. PAPA’S GOT A BRAND NEW PIGBAG
  4. MY FOOLISH HEART ~crazy in mind~
  5. DOUBLE TROUBLE
  6. POP KORN
  7. QUARTZ AND CHRONOMETER
  8. PARAISO
  9. MY FOOLISH HEART ~crazy on earth~ × 椎名林檎
  10. MIRROR BOY
  11. “STOLEN MOMENTS” featuring Jamie Cullum
  12. AFTER THE PARTY
  13. 殺戮と平和
SOIL&"PIMP"SESSIONS
(そいるあんどぴんぷせっしょんず)

社長(アジテーター)、タブゾンビ(Tp)、元晴(Sax)、丈青(Pf)、秋田ゴールドマン(B)、みどりん(Dr)から成る6人組バンド。 東京・六本木のクラブで知り合った仲間で2001年に結成。当初は「SOIL&HEMP SESSIONS」名義で活動し、クラブシーンを中心に話題を集める。2003年に「FUJI ROCK FESTIVAL ’03」に出演して以来、数々のフェスに登場。その圧倒的なライブパフォーマンスで飛躍的にその名を広めた。2004年に1stアルバム「PIMPIN’」でメジャーデビュー。2005年には英BBC RADIO1主の“WORLDWIDE AWARDS 2005”で「John Peel Play More Jazz Award」を受賞。以降、ヨーロッパではジャイルス・ピーターソンのレーベルBrownswoodから、USはインディペンデント最大手のE1 Entertainmentからとグローバルに作品をリリース。また、海外からのライブオファーは後を絶たず、イギリスの国民的ロックフェスティバル「GLASTONBURY FESTIVAL」をはじめ、「MONTREUX JAZZ FESTIVAL」や「NORTH SEA JAZZ FESTIVAL」などの数々の大型フェスティバルに出演するなど、海外においても確かな足跡を残し続けている。