スカートとPUNPEE|シンガーソングライターとラッパー 2人の視点で描く夜の街

PUNPEEがタクシー運転手に取材

──制作にあたって、PUNPEEさんはタクシーの運転手に話を聞いて参考にしたと伺いました。

「ODDTAXI × SUMMIT」のコラボTシャツを着用したPUNPEE。

PUNPEE タクシーに乗るときに毎回運転手さんに話を聞いて、その聞いた話を監督に送ったりもしたっすね。初台坂下に夜しか開かない洗車場があるとか、そういうタクシー運転手さんの間で有名なスポットや聖地を聞いたり。品川に天井が低くてスレスレのトンネルがあるんですよ。高輪ゲートウェイ駅の工事で今はもうないのかな? リリックにある「おばけガード」はそれです。実際に話を聞いて入れたのはそれくらいで、洗車場の話とかも入れようと思ったんですけど、フロウ的にハマらなくて。あとリリックについて言うと、「コミュニケーションなんて演技力」ってフレーズは此元和津也さん(「オッドタクシー」の脚本担当)のマンガ「セトウツミ」のセリフなんですよね。

──なるほど、そうだったんですね。

PUNPEE 自分のリリックは説明っぽい感じになりがちなんですけど、澤部さんがよりアブストラクトというか、ボヤッと聴き手に委ねる感じで歌詞を書いてくれたので、いい感じのバランスになりましたね。本当にすんなりできて、悩んだとすれば60秒のショート版を作るのくらいかな。89秒のバージョンはそうでもなかったんですけど。

澤部 そうだそうだ、何回かイレギュラーな回があって。

PUNPEE この曲は最初にアニメのオープニング尺で作って、そのあとにフルバージョンを作ったんですよね。

澤部 ゆくゆくはフルも作ろうという流れでしたよね。オープニング尺だから最初のサビにキュッと詰めた感じの作りになってるんですよ。

PUNPEE オープニング尺の段階では「たどり着けるか」までしか作ってなくて、フルバージョンで2番もちゃんとできるかなという不安はあったんですけど、自分が想像していなかったような展開を澤部さんが作ってくれて感動しました。

澤部 「揺れて こぼれ落ちて」のところですね。

PUNPEE そうっす。オープニング尺のバージョンの流れからロング版をこの展開でしっかり成立させたのがすごいなと。

澤部 最後のサビは1回目のサビとちょっと違うんですよね。

PUNPEE 自分がいつも作ってる「ザ・サビ」って感じのものとは違うものができて面白かったです。

耳が落ち着く優しいミックス

PUNPEE 細かい話になっちゃうんですけど、この曲は(渡辺)省二郎さんがミックスで。

澤部 ね! 星野源さんとかも手がけているエンジニアさんが担当してくださって。

PUNPEE 自分がこの前出したEP(2020年7月配信の「The Sofakingdom」)のミックスも省二郎さんだったんですけど、その前に星野さんの「さらしもの(feat. PUNPEE)」があって。そこでつながりました。

澤部 真心ブラザーズとかカーネーションのエンジニアをされていた方でもあるし、僕はこの曲のレコーディングで初めて音響ハウスに行けて、めちゃめちゃうれしかったですね。

PUNPEE やっぱり聖地なんですね。

澤部 聖地ですね。銀座のちょっと外れたところにバカでかいビルがあるんですよ。それが全部スタジオで。

PUNPEE 省二郎さんのミックスはなんかワクワクするんですよね。音の広がりとか声の表情の付け方とかがすごく豊かな感じになって。ヒップホップ的なタイトな音というよりは、聴いていて耳が落ち着くような優しい感じ。そういえば、澤部さんのパートで自分が音程を補正した部分があったんですけど、ミックスされた音源ではそれが元に戻っていて。最後の「混ざり合わない目線の理由を 思い出せるか」の「ま」かな。ちょっと力が入っていて高かったんですけど、そういう生感を大切にしてくれる人で、そのままになってましたね。

左から澤部渡、PUNPEE。

#やってやる2021

──このユニットは期間限定とのことですが、今後さらなる展開もありそうですか?

澤部渡

澤部 どうなんでしょう(笑)。

PUNPEE お互いのライブに出たりしたいですね。あとはタクシーのCMのオファーとか来てほしい(笑)。

澤部 「ODDTAXI」は実際にタクシーでも流してもらえるらしいですね(参照:タクシーアプリGOとのコラボ決定! 全国4万6千台のタクシーでオリジナル映像が放映)。タクシーの映像、けっこう楽しいんですよね。もしタクシーのCMのオファーがきたら、曲も書き下ろします(笑)。

──最後にお二人の今年のソロ活動についてもお話を聞かせてください。澤部さんは「今年売れなかったら痩せる」とインタビューで宣言されていたり、今回のコラボ曲発表に際して「#やってやる2021」というハッシュタグを使っていたり、相当な意気込みがあるのかなと思ったのですが。

澤部 あれは自分を鼓舞するためです(笑)。

PUNPEE 今年舞台もやりますよね(参照:スカート澤部渡、シマダボーイ、諭吉佳作/menがミュージカル「消えちゃう病とタイムバンカー」出演)。

澤部 よくわかんない年になってますね(笑)。こんなに大々的にアニメのオープニング曲をやるなんてめったにないことだろうし。ただ、スランプで曲が書けないのはいまだに変わってなくて、正直これからどうなるかもわかんないですけど。

PUNPEE 締め切りに追われる感じですか?

澤部 締め切りがあると作れるんですけど、例えばスカートの次のアルバムどうしようってなると手が止まるみたいな感じですね。でも、とにかくやってやるという気持ちだけはあります、とお伝えしたい。

──PUNPEEさんはいかがですか?

PUNPEE アルバムはたぶん作れない気がしますけど、ちょこちょこ新曲を作って、EPを出す感じですかね。でもダメっすね。最近ゲームとかやっちゃって。

左からPUNPEE、澤部渡。

澤部 わかります(笑)。僕も自粛期間中は「ゼルダ」(任天堂のアドベンチャーゲーム「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」)だけが心の支えでした。

PUNPEE ああ、「ここだけは平和」みたいな感じで。

澤部 ゲームはバンドのコミュニケーションツールとしても活用してますね。リハーサルもないし、キーボードの(佐藤)優介とかも全然人と会わないから、なんでもいいからしゃべるためにゲームやろうという感じで。ボイチャしながら「スプラトゥーン」やったり、喫茶店でコーヒーを飲むような感覚で4、500円で買える全然よくわからないゲームをみんなでやってみたり。あと最近は「Apex Legends」をみんなでやってます。全員初心者でちょっとずつ覚えていこうという感じなんですけど。

PUNPEE 「Apex」はVaVaちゃんとオムスがやってて、eスポーツ大会のテーマソングも作ってるんですよね(参照:「Apex Legends」プレイヤーのVaVa、Yo-Sea、OMSBがeスポーツ大会のテーマソング配信)。2人は朝になるまでやってるらしいです。

──PUNPEEさんはどんなゲームをプレイしているんですか?

PUNPEE 自分は中学のときに「ストⅡ」とかよくやってたんすけど、離れてたんですよね。映画とかマンガも好きだし、音楽もやっているから、ゲームに戻ったら時間がなくなると思って。でも自分がテーマソング「光 –Ray Of Hope MIX–」のリミックスを担当した「キングダム ハーツ HD2.8 ファイナル チャプター プロローグ」(2017年1月発売のPlaystation4用ゲーム)って作品があって。プレイもしていないのにリミックスだけやるのダサいなってずっと引っかかってたんですけど、それを最近プレイし始めて4年越しにクリアしました。今は「スパイダーマン」のゲームをやってるんですけど、ここからオンライン系に手を出したら終わる気がして。

澤部 終わりますよ(笑)。

PUNPEE ダメっすね。1日1時間とかにしないとヤバい。決められた時間で終わらせるのを目標にします。

左からPUNPEE、澤部渡。