SIRUP × Ayumu Imazu、念願の初コラボ実現|決め付けずに受け止めるSNS社会の“表裏” (2/2)

「ちょっとだけ泣きそうになった」MV撮影

──「UNDERCOVER」のミュージックビデオを拝見しましたが、楽曲のメッセージとすごくシンクロしている作品ですね。

SIRUP もともとセッションしてるときから、Ayumuと「MVでスパイっぽい動きをしたいよね」と話していたんです。でも監督と打ち合わせしていく中で、「それを直接的にやると、見たことあるものになるよね」という話になって(笑)。そこから今の形に落ち着きました。

Ayumu スパイ風という話だったのに、なぜかフィッティングのとき僕の衣装がドクターになっていたんですよ(笑)。まあいずれにせよ“裏のフィクサー”的なポジションというか、そういうイメージでドクター的な雰囲気にたどり着いて。僕は振付を任せてもらえたので、シンプルだけど、スパイっぽさを感じさせるキビキビした動きを取り入れました。

SIRUP これが難しいんですよ(笑)。今、ツアーで1人で歌いながら踊っているけど、ホントに「めっちゃうまい人が踊ってこそ、カッコよく見せられる振付」なんですよね。踊れば踊るほど「Ayumu、やってくれたな!」と思いつつ、がんばってます(笑)。

Ayumu あははは。

Ayumu Imazu

Ayumu Imazu

──MVは「覆面を取ったら自分自身だった」というオチも含め、SNSの匿名性に対する批判的な視点も含まれているのかなと感じました。

SIRUP 例えば匿名性を利用してSNSで誰かを攻撃すると、それって結局は自分に返ってくると思うんですよね。「人を呪わば穴二つ」じゃないですけど、回り回って自分もそうなるよっていう。そんな意味にも受け取れる作品だなと僕も思いました。

Ayumu プロジェクターで人の目を無数にコラージュしたシーンとか、ビジュアル的にもインパクトがありますよね。もちろんメッセージ性もあるけど、人によっていろんな受け取り方ができる、それぞれの解釈に委ねられてる部分もあると思いました。

SIRUP あと面白かったのは、クライマックスのアクションシーンかな。僕ら2人が踊りながら、しかもポジションがちょっとずつ変わったり、絡みもあったりして。バトルとダンスの間に、なんとも言えないシンクロ感が生まれていたのがよかったなと。個人的に“超推し”の俳優である伊澤彩織さんに出演してもらったり、僕自身もAyumuのコレオで踊ったり、MV撮影はまさにドリームな空間でしたね。踊りながら、ちょっとだけ泣きそうになりました(笑)。

左からSIRUP、Ayumu Imazu。

左からSIRUP、Ayumu Imazu。

少し外側から見た日本の音楽シーン

──Ayumuさんは今、活動の拠点をアメリカと日本に置かれていますよね。10代の頃から頻繁に渡米されているかと思いますが、音楽的な環境の違いや、日本の音楽シーンを少し外側から見る立場として、どんなふうに感じていますか?

Ayumu 今はニューヨークに住んでいるんですけど、日本にもけっこう頻繁に帰ってますし、日本の音楽シーンの中で活動しているという意識もあるので、いわゆる「海外の人から見た日本の音楽」という視点を100%持っているわけではなくて。とはいえ「何が人気になるか」とか「何がいいとされるか」は、日本とアメリカで全然違うのを改めて感じますね。

SIRUP 例えば?

Ayumu めちゃくちゃ有名なポップスだったら「この曲、いいよね」と世界共通で評価されると思うんですけど、もう少しカルチャー寄りの音楽になると日本ではなかなかマッチせず、うまく伝わらないこともある。僕は14歳から17歳というすごく多感な時期にアメリカに留学しましたが、「Ayumu」というアーティスト像を確立させたのは、やっぱりニューヨークでの経験だったなと思うんです。日本に帰るときは、ライブがあったり制作があったりで、常にドタバタと忙しい日々を過ごしてしまうけど、ニューヨークに戻るとリセットされて、自分を見つめ直す時間が持てる。そこはすごく大きいですね。

SIRUP 僕も、そこまで多くはないけど、日本の街中ではリスナーから声をかけられる可能性が高いからちょっと意識しながら過ごす必要があって。そういう生活になるのはありがたい反面、海外に行くとその可能性がグッと下がる分、本当に心が解放される感じがあるんですよね。だから、その自由さはすごくよくわかる。

SIRUP

SIRUP

これまで生きてきたストーリーをつづる

──さて、SIRUPさんは3rdアルバム「OWARI DIARY」を9月3日にリリースされます。どんな内容になるか、可能な範囲で教えてもらえますか?

SIRUP アルバムに向けてシングルを何曲かリリースする予定です。すでに配信されている「RENDEZVOUS feat. hard life」や、Ayumuとの「UNDERCOVER」もそう。ちなみにアルバムタイトルの「OWARI DIARY」には、「これまで自分が生きてきたストーリーをつづった作品」という意味を込めています。今開催している2年ぶりの全国ツアー「NEXT LIFE TOUR 2025」のタイトルは、「OWARI DIARY」で一旦“区切り”をつけて次のステージへ向かうという意味で付けました。ツアー中にシングルをリリースしていって、ツアーが終わったあとにアルバムの全貌が見えたとき、そうした一連の流れを皆さんがどう受け止めてくれるのか、今から楽しみです。

──開催中の「NEXT LIFE TOUR 2025」には、どんな手応えを感じていますか?

SIRUP 今回、ダンスを取り入れました。ここまで本格的な振付で踊るのは初めてのことです。ほかにも美術や演出などかなりこだわっていて、表現としてレベルアップしたものを披露できている自信があります。しかも、公演を重ねるごとに自分が成長している手応えをすごく感じています。

──最後に、もしお二人で再びコラボするとしたらどんなことをやってみたいですか?

SIRUP 「UNDERCOVER」はダンサブルな方向だったので、次はもうちょっと“チルい”曲をやってみたい。

Ayumu まさに同じことを考えていました(笑)。

SIRUP 僕たちの声質って似ているようでまったく違うし、それが融合したときの気持ちよさが「UNDERCOVER」とはまた別の形で出せると思うんですよね。“チルい”ってちょっと雑な言い方ですけど(笑)、そういう方向で次はやってみるのもいいかなと。

Ayumu ぜひ、やりましょう!

左からSIRUP、Ayumu Imazu。

左からSIRUP、Ayumu Imazu。

公演情報

SIRUP「NEXT LIFE TOUR 2025」

  • 2025年6月1日(日)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2025年6月5日(木)神奈川県 KT Zepp Yokohama
  • 2025年6月13日(金)北海道 Zepp Sapporo
  • 2025年6月21日(土)宮城県 Rensa
  • 2025年6月27日(金)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2025年6月28日(土)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2025年7月10日(木)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
  • 2025年7月18日(金)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)

プロフィール

SIRUP(シラップ)

R&B、ネオソウル、ヒップホップなどをルーツに持つシンガーソングライター。2017年にTokyo Recordings(現:TOKA)がサウンドプロデュースを手がけた楽曲「Synapse」でデビュー。2022年に自身初となる東京・日本武道館公演を開催した。これまでにイギリス、韓国、オーストラリア、台湾などのアーティストとのコラボ曲を発表。2024年には中華圏最大の音楽賞「GMA(金曲奨)」に楽曲がノミネートされるなど国境を超えて活躍している。

Ayumu Imazu(アユムイマヅ)

2000年5月12日生まれ、大阪府出身。6歳でダンスを始め、14歳より約3年半、ダンスやボーカルなどを学ぶためアメリカ・ニューヨークへ留学したのち、アメリカと日本を拠点に活動するグローバルアーティストとなった。2021年8月に配信シングル「Juice」をリリースし、ワーナーミュージック・ジャパンよりメジャーデビューを果たす。繊細かつストレートなワードセンスとドラマチックな世界観で日本のみならず全世界でリスナーを獲得している。