シャイトープが7月17日にメジャーデビューシングル「ヒカリアウ」をリリースした。
佐々木想(Vo, G)、ふくながまさき(B)、タカトマン(Dr)の3人によって2022年6月に結成されたバンド・シャイトープ。結成翌年には続々とシングルを配信し、中でも昨年4月に配信された「ランデヴー」はリリースから3カ月後にSpotifyバイラルトップ50の1位を獲得する話題作となった。今年の3月でストリーミング総再生回数は2億回を突破している。
音楽ナタリーでは、デビュー2年で着実に人気を獲得してきた彼らがメジャーデビューを果たすこのタイミングでインタビューを実施。大学時代の友人同士だという3人がバンドを結成した経緯や、メジャーデビューシングル「ヒカリアウ」に込めた思い、今後の展望などについてじっくりと話を聞いた。
取材・文 / 蜂須賀ちなみ集合カット撮影 / Susie
表現したいサウンドを臆さず鳴らしていくことがロック
──メンバーのお三方は、京都の同じ大学に通っていたそうですね。ギターボーカルの佐々木さんは1人で音楽活動をしていた時期もあったそうですが、もう一度本気で始めるなら、やはりバンドがいいという思いがあったのでしょうか?
佐々木想(Vo,G) そうですね。バンドが一番好きだし、バンドで成功したいとずっと思っています。僕がバンドをやる理由は、メンバーと楽器を持ち寄って一緒に音を鳴らす瞬間が好きだから。楽屋で1人にならなくて済むというのもありますけど(笑)。
──タカトマンさんは大学1年生の頃から佐々木さんに「一緒にバンドをやりたい」と声をかけ続けていたものの、佐々木さんから断られ続けていたそうですね。
タカトマン(Dr) 僕らは大学4年間部活で一緒だったんですけど、1年生のときに初めて彼の歌声を聴いて、バンドに誘おうと思い立ったんです。だけど何回誘っても断られてしまい……。僕自身にも「もっとうまくならなきゃ」という自覚があり、「自分のレベルじゃ、佐々木に追いつけていない」という思いをずっと持ち続けていました。
佐々木 断ったのは一緒にバンドをやりたくなかったからじゃなくて、僕自身が音楽に対して前向きになれていなかったからなんですけどね。あの時期は誰に誘われても断っていたと思う。だからもう一度バンドをやろうと思ったとき、最初にタカトマンを誘いました。それはずっとオファーしてくれていたからでもあるけど、「一緒にやるならこの人だ」という直感が働いて。
タカトマン 誘ってもらえたときは感極まって、めっちゃ泣きました(笑)。
──ふくながさんはお二人より2歳年上なんですよね。
佐々木 同じ部活の先輩だったんです。なぜ誘ったのかというと……やっぱり直感としか説明ができないな。ステージに立ったときの雰囲気が素晴らしいんですよね。
ふくながまさき(B) この2人とバンドしたいなという気持ちはもともとあったので、誘ってもらえてうれしかったです。
──シャイトープは昨年発表した「ランデヴー」のヒットをきっかけに、音楽番組やフェスなどいろいろな場に出て行く機会が増えたと思います。「自分たちのこんな姿を見せたい」「ライブを観た人や曲を聴いた人にこんなことを感じてほしい」など、何か意識していることはありますか?
佐々木 僕たちはまだまだ経験が浅く、ニューカマーと呼ばれる立場なので、「とにかく自分たちのことを知ってもらいたい」という気持ちが強くあります。そしてできれば自分たちのなりたい姿、思い描く姿をそのまま伝えたい。言葉を大事にしているし、ちゃんとロックバンドだし、というところが伝わっていたらうれしいですね。
タカトマン ロックバンドらしさという面で言うと、3人の鳴らす音だけで成り立っているということを強く押し出していきたいと思っていて。あと、「ランデヴー」のようなバラードだけではなく、アッパーなナンバーもしっかり届けていきたいです。
佐々木 だからこそ「CDTVライブ!ライブ!」に出演させてもらったときも、「ランデヴー」をやった次の週に「Burn!!」を披露しました。
──ではマインド面はどうでしょう? 「ロックバンドとしてこうありたい」「こういうことをしたら、ロックバンドではなくなってしまう気がする」といったこだわりはありますか?
タカトマン 難しい……。ちゃんと考えたことはなかったですね。だけど今聞かれて、「置きに行かない」ということなのかなと僕個人としては思いました。なんでもかんでも「売れてる音楽がこうだから」と考えるんじゃなくて、挑戦的なことももちろんしたいので。今自分たちが表現したいサウンドを臆さず鳴らしていくことがロックなんじゃないかと。ドラムに関しても、新しいリズムパターンや「これ面白いな」と思ったことにちゃんと挑戦できる心は常に持っていたいです。
佐々木 いや、本当にその通りで。大きな音を出すだけがロックではないと思うし、「やりたいようにやる」ということなんじゃないでしょうか。自分から出た嘘のない言葉やメロディを紡いでいって、自分たちのやりたいように音を出せば、ちゃんとロックバンドになる。
ふくなが 「ランデヴー」がたくさんの人に届いたことで、ライブ会場の規模が大きくなったり、そういう変化はありましたけど、やりたい音楽をただ作っているという意味ではずっと変わっていないし、たぶんこれからも変わらないと思います。3人でスタジオに入ったときの雰囲気とかも、この2年間ずっと変わらない。
──「また似たような曲でヒットを」という気持ちが湧いてきたり、焦ったりすることもないですか?
佐々木 はい。ただ、別の意味でちょっと危機感を覚えているところはあります。「ランデヴー」も自分たちらしくて好きな曲なんですが、僕たちはアッパーな曲もやるし、別の面も持っているので。1つの側面だけを見て「こういうバンドでしょ」と決めつけられると正直癪だし、悔しい気持ちもあるんですよ。だけど今の自分たちならそう思われてもしょうがない。「もっと広まるような曲を作りたい」「作らなきゃ」という葛藤はずっとありますね。
──今回のメジャーデビューをきっかけに、シャイトープの音楽はますます広まっていくと思います。以前から「メジャーデビューしたい」という思いがあったのでしょうか?
佐々木 ありました。メジャーデビューするということは、たくさんの人たちにバンドの名前や曲が広まるということだと思っていて。王道で、メインストリームで戦っていきたいとずっと考えていたんです。メジャーデビュー発表のときのコメントに「高みを目指したい」と書いた通り、ハングリー精神はちゃんと持っていたいですね(参照:シャイトープがEPICレコードジャパンからメジャーデビュー)。
光みたいなバンドthe paddlesとの対バン
──では、シングルの収録曲について聞かせてください。表題曲「ヒカリアウ」はメジャー1stシングルにふさわしい疾走感あふれる曲ですね。
佐々木 メジャーで初めて出すシングルということで、「どんな曲がいいんだろう?」とめちゃめちゃ考えたものの、わからなくて悶々としていたんですよ。だけど今書くべきことが浮かんできたタイミングがあったんです。
──何かきっかけがあったんでしょうか?
佐々木 4月にthe paddlesと対バンしたとき、涙が出るほど心を動かされたんです。その日の夜、家に帰ったら「ヒカリアウ」のAメロが浮かんできて。自分はずっとthe paddlesのことを「光みたいなバンド」だと思っていたので、今振り返ると彼らのライブにヒントをもらったんじゃないかな。もちろん、the paddlesのことを書いたということではなくて、歌詞にある「光」は人それぞれ、いろいろなものに当てはまると思います。
──ふくながさん、タカトマンさんにはどのタイミングで曲を共有しましたか?
佐々木 最初に送ったときは、歌詞は全然できていなかったですね。歌詞に関しては、最後までああでもないこうでもないとやりたいタイプなので、最初に送るときはいつも仮歌詞か、鼻歌のことが多いです。サビのメロディもまったく違うものでした。ワンコーラス作っては「やっぱり変える」と言って、また変えて……みたいなことをずっとやっていました。
ふくなが だけど1番のAメロ、Bメロの歌詞は最初からあったので、メインで伝えたいのはそこなのかなと自分なりに感じていました。
──「こんな暗い場所にも 目を瞑っても分かる光がある いつか君に貰った 呼吸の仕方でまだ明日を見てる」「生きる理由というよりも 死ねない理由を探す そんな僕だった そんな僕を君は照らしていた」というところですね。
タカトマン 自分は曲を何度も聴いていくうちに、まばゆい光とか、パーッと開けたようなイメージが湧いてきて。「光」「昇華」といったワードを頭に浮かべつつ、「ここで聴いた人に光を感じてほしいな」「じゃあドラムでどう表現しよう?」というふうに考えていきました。
ふくなが スタジオでの演奏を重ねるたびに歌詞もちょっとずつ増えていったので、それに合わせてベースラインも増えて、アレンジも固まっていきました。
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「生きて 生きて 生きてみようぜ」