ナタリー PowerPush - 真空ホロウ

思春期の苛立ちを爆発させた 濃厚ジレンマソング

真空ホロウらしさを表現できなければ聴く人には伝わらない

大貫朋也(Dr)

──もう1曲「スノーホワイト」は12月に配信リリースされた、クリスマスシーズンにピッタリの壮大なロックバラードですね。

村田 この曲、すごく苦戦したんですよ。完成したあとに、あまりに納得できなさすぎて2度も作り直させてもらいました。やけに引っ掛かる曲だったんですよね。

──何が引っ掛かったんですか?

村田 「スノーホワイト」で歌っているのは、いい恋愛というか、いい1日ではないんですよね。だけど作っていくうちにきれいごとを言っている気がして。クリスマスっていうお祝いムード的な裏側にある寂しさまで描けなければ真空ホロウらしくないし、その真空ホロウらしさを表現できなければ聴く人にはわかってもらえないと思うんです。

──なるほど。

大貫 ドラムもすごく苦戦しました。そのまま作っちゃうと普通のバラードになっちゃうので、そこをどうひねろうかと。

──個人的には「モノクロの雪」っていう表現が真空ホロウらしいと思いました。

村田 俺もそれ思ったんですよ。「モノクロの雪」って、よくよく考えたらそれ当たり前なんだけど、そういう言い方ってしないよなって。だから(松本は)すごいなと思って。やべ、身内褒めちゃった!(笑)

松本 ふふ(笑)。

左から大貫朋也(Dr)、村田智史(B)、松本明人(Vo, G)。

──でも「真っ白な雪」とか「純白の雪」とかじゃなくて、「モノクロ」という言葉を使うことで、雪だけじゃなくて主人公の周りの世界も色を失うイメージが沸いてきて。

松本 クリスマスで抱くイメージがカラフルすぎるんです。だからよりモノクロに見えてしまうんです。でもこの曲の主人公は1人なんだけど1人じゃないんです。

村田 俺、この曲は恵比寿から渋谷まで歩いてる話だっていうのを最初に(松本から)聞いたときに、どうも自分の中にそのイメージが出てこなかったんです。場所はわかるんですけど、音がなかなか鳴らなくて。詞の世界観のイメージをバンドで共有しなければ聴く人に伝わらないから、それができるまでけっこう2人を付き合わせちゃいましたね。でもおかげで納得できるものができてよかったです。

光や未来について歌っていきたい

──今回の作品は真空ホロウにとってメジャーデビューしてから初のシングルですよね。その点に関して意識する部分はありましたか?

松本 たまたま今回「虹」が選ばれただけであって、僕はどれがシングルになってもいいと思って作っているので。

──ではメジャーデビューして1年が過ぎましたけど、意識の変化はありましたか?

村田 最初の頃は人によく見られたいと思って、少なからず優等生ぶってた自分らがいたんですよね。でも自分たちは表現者なんだから、もっと自分がやっていることを強い気持ちで発信しないと世間様には届かないって気が付いて。デビュー当初は自分の中の“いい子ちゃん”みたいな悪魔が顔を出してきてたんですけど、最近それをやっつけることに成功しました(笑)。

左から大貫朋也(Dr)、松本明人(Vo, G)、村田智史(B)。

──「虹」のビデオクリップでも、2人の人物がフェンシングで対決する姿が描かれていますよね。

村田 はい。MVは自分の中の葛藤をストレートに表現しました。

──「虹」以外にも今後タイアップ曲の制作依頼があると思うのですが、クライアントの意向に添うためだったりより多くの人に聴いてもらったりするために、松本さん自身のメッセージが変わってしまう不安みたいなものはありませんか?

松本 僕の言いたいことは変わらないし、たとえ僕がどう作っても2人がOKしてくれないとバンドとしての活動に入れないので大丈夫だと思います。

──では真空ホロウとして今後どういうメッセージを伝えていきたいですか?

松本 これまで生きてきたことと、これから生きていくことに関してもっと突き詰めていきたい。光と闇のバランスというか。光を見るより闇を見るほうが簡単なのでそっちのほうが大きくなってしまいがちだし、そのバランスは日々変わっていくと思うんですけど……。

──これまで生きてきたことが闇だったとしても、これから生きていくことの中には光もあると。

松本 はい。「虹」の歌詞に「土砂降り」って言葉が出てくるんですけど、僕の中では“雨”っていうのは哀しみを意味する表現なんです。その雨が降ったあとに光が射すことによって虹ができるわけで。だから光に目を向けているこの曲が初めてのシングルでよかったなと思います。きっとストレートに希望を歌うことはしないですけど、これからも光や未来について歌い続けていくんだと思います。

ニューシングル「虹」2014年2月19日発売 / 1000円 / ツクモガミ / ESCL-4150
収録曲
  1. バタフライスクールエフェクト
  2. スノーホワイト
真空ホロウ(しんくうほろう)
真空ホロウ

松本明人(Vo, G)、村田智史(B)、大貫朋也(Dr)による茨城県出身の3ピースロックバンド。日常の違和感を冷徹な視線ですくい上げる歌詞と、ストレートでキャッチーなバンドサウンドが特徴。2006年に結成し、メンバーチェンジを経て現在の編成に。2009年に「RO69JACK 2009」を勝ち抜き、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009」に出演。その後「contradiction of the green forest」「ストレンジャー」という2枚のミニアルバムを発売した。2012年10月にミニアルバム「小さな世界」でEPICレコードジャパンよりメジャーデビュー。2013年5月8日に2ndミニアルバム「少年A」をリリース。2014年2月19日にアニメ「NARUTO-ナルト-疾風伝」のエンディングテーマに採用されたメジャー1stシングル「虹」を発表。