試行錯誤の時雨流レコーディング ニューアルバム制作秘話を語る - 凛として時雨
ナタリー PowerPush
“曲の先”を探す作業を何度も繰り返した
──1曲ごとにイメージを探りながら作っていくんですか?
TK 最初にできているパターンと、音を出してつないで見えていくパターンと、それが両極端に分かれます。
──今回も?
TK 最初から打ち込みまで入れてデモを作った曲というのもあったので、半々ぐらいとう感じですかね。最初から2人に提示できる形に出来上がっていたものは、いつもよりちょっと多かったか もしれないです。それも作品によってまちまちですね。
──収録曲は最近のものが多いんですか?
TK 最近のものが多いですね。あと、2年ぐらい前に完成できなくて、改めて今の自分でもう一度アレンジした曲もあります。「JPOP Xfile」と「mib126」ですね。骨組み自体はけっこう前から 出来ていたんですけど、当時の僕たちには作れなかったというか。今やっと作り込めたのかなという感じですね。
──それは技術的なことですか?
TK 技術的なことではないんですけど、今までよりその音が欲しい先というか、それがいつもより見えやすかっただけだと思うんです。僕らがすごく成長したとか、そういうわけではなくて。ただちょっと、いつもよりその曲に対して先が見えやすかった。でも、それも一瞬しか見えなかったので、それを探す作業は何度もやりました。ある程度できている曲は、まっさらな状態から作るよりどうしても難しくなってしまうので。違和感をゼロにしてもう一度作り直すわけですから。
──たいへんですね。
TK そうなんです。ピエールが言ってた曲のような、ライブでやっていた曲は、それよりさらに立体的な状態にしてお客さんに対して発信しているので、それをもう1回アレンジし直すとなると 、より客観的に曲を捉えなければいけなくて。
──曲の先が見える、というのは、曲のイメージがさらに見えてきそうだから、より追及していこうということですか?
TK そうですね。最初に最終形が見えていて、そこに何の音を当てはめればいいかっていうのを探す作業と、最終形が見えなくて、最終形そのものを探す作業があって。どちらにしても難しいですね。
──でも、見えかけているものがあるんだったらそれを掴みたい?
TK 見えかけていればまだ自分としてはいいんですけど、本当に何も見えないときもあるので。ただ1つのフレーズが目の前にあって、あとは真っ暗というか。どこに持っていけばいいかもわか らない、その先に何のフレーズを置いてあげればいいかもわからない状態もあるので。そういうときはかなりいろんなフレーズを考えてみたりしますね。でもちょっと気を緩めた瞬間に何か見えたりすることもあるんです。ただ、今回はいろんな作業を同時進行でやりながらだったので、一瞬、頭がゴチャゴチャになりましたけど(笑)。
どんな曲順になっても大丈夫だと思った
──ピエールさん、345さんも、楽器ごとに自分の出したい音、向かいたい世界、見えているイメージに近づけたいという主張があると思うんですけど?
ピエール中野 それは当然ありますけど、それによって曲が悪くなるようならやらないです。でも、自分の音作りやプレイに対して「それはやめてくれ」と言われることはないですから。僕というタイプのドラムありきできっと考えてくれていると思うので、自然に自分が出せますし、より引き出されているような感じはあります。このバンドじゃなかったら出していなかったフレーズだったり、使っていなかった音色もあるので、それは感じますね。その楽曲に合わせることで、自分のプレイヤーとしての個性が出ていると思うことはあります。
──今回、インストを挟んで前半と後半で印象が違いますね、場面が変わっていくような。
ピエール中野 そうですね。シングル曲もそこから入ってくるし。
TK 僕は曲順を考えていないんです。作り終わったらおまかせしています。
──そうなんですか。ここまで作り込んでおきながら曲順をまかせるって大胆ですね?
TK どの曲順で決めてもらっても大丈夫だと思ったので。というか、マスタリングの日まで曲を作っていたから考える余裕がなかったんです(笑)。
ピエール中野 だいたいこんな感じじゃない? って並べてみると、345とほとんど同じ感じだったんですよ。曲も完全には上がってなかったんですけど、次の日はもうマスタリングだったので。スタジオに行って「これで」と言ったら、「じゃあ、それで」と(笑)。でも、この流れが聴いてて楽しかったですね。
345 最高だと思います。
明確すぎる言葉も実は入っているんです
──今までのアルバムとはどう違うと思いますか? このアルバムをどういうふうに捉えてます?
345 インストが入っているアルバムだなと。あと、今まで張った声でしか歌ってなかったですけど、今回のアルバムでは張ってない声で歌った曲があるので。今までとの違いはそこですね。それは、歌を入れるときの流れでいろいろやってみて、なんですけど。
ピエール中野 シングル曲が今回初めて入っているので、それも面白いですね。シングルで聴いたときと違う聴こえ方になって、すごく効果的だと感じました。
──歌詞はギリギリだったんですか?
TK ギリギリまで書きました。わりといつもそうなんですけど。先に書いちゃっているタイプのものもありますし、曲が先行で、それをプレイバックしながら言葉を当てていくというものもあって。それは時間がかかる作業なんですけど。
──説明のない歌詞ですよね。あえて何を歌っているかというのをはっきり出さないで、細かいフレーズで描写しながら、聴く人ごとにさまざまなイメージが浮かび上がるとういう。
TK そうですね。でも自分にとっては明確すぎるぐらいの言葉も実は入っているんです、場所によっては。でも、基本的には音と言葉があって完成するものでありたいというか。言葉だけでは何も見えないようなことでも、音の1つという捉え方も僕にとっては言葉であって。
──響きとして捉えるということ?
TK そうです。別に何も考えないで聴いてもらってもいいし、なんとなくわかる人もいるかもしれない。僕と全く違うものを思い浮かべている人もいると思うんですけど、それはそれでいいなと思っていますから。
──5月からはツアーが始まりますね。
TK 今日からこのCDを聴いて予習しようと思ってます。新たな気持ちで(笑)。そのときにしか弾けないフレーズが多いので困っちゃいますね(笑)。特に僕は思いついたものをどんどん録っていくので、作った本人が一番覚えていないんです。いちからスタートしたいと思います。
ピエール中野 初心に返らなきゃいけない(笑)。
TK 初心から進歩できず(笑)。
345 前回以上に頑張ります。
ピエール中野 僕はMCを頑張ります(笑)。
CD収録曲
- ハカイヨノユメ
- Hysteric phase show
- Tremolo +A
- JPOP Xfile
- a 7days wonder
- a over die
- Telecastic fake show
- seacret cm
- moment A rhythm (short ver.)
- mib126
凛として時雨(りんとしてしぐれ)
TK(Vo,G)、345(Vo,B)の男女ツインボーカルとピエール中野(Dr)からなる3ピースバンド。2002年に地元・埼玉で結成し、2005年に自身で立ち上げたレーベル「中野Records」よりアルバム「#4」をリリース。その後も順調にライブの動員を増やし続け、2008年12月に1曲入りシングル「moment A rhythm」でメジャー移籍を果たす。 狂気がにじむギターロックの地平を、USオルタナ~エモ直系の金属的な轟音で爆撃するサウンドは、多くのファンを虜にし続けている。