常にフレッシュでいたかった

──今回発表された楽曲「メゥク」は……。

Shibori　（質問を遮って）まあ、一杯飲んでから話しましょうよ。

──あっ、ありがとうございます。で、この「メゥク」なんですが、「酪農」「デリバリー」と続いた3部作の最終章とのことですね。

Shibori　そうですね。「酪農」「デリバリー」とやってきて、思った以上に俺のメッセージがみんなに伝わっているのを感じました。最初「酪農」で牛乳について歌ったとき、俺の存在そのものがフレッシュすぎてみんなも少し困惑してた。でも「デリバリー」をボムったら、状況が変わってきて。「こいつ、マジだ」って。やっぱりうれしかったですよ。牛乳の素晴らしさがヘッズたちに広がっていくのがわかりました。友達の酪農家から、若いBボーイが乳しぼり体験に来てくれた、なんて話を聴くと本当にやってて良かったって思う。でもヒップホップってのは、常にフレッシュでなきゃいけない。だから、ここで1回区切りを付けようと思ったんだよね。俺は、俺という物語をいったん完結させなければならない。それでこそミルクラッパーなんだと思ってるんです。

──なるほど、今回の「メゥク」はラッパーとしてのけじめという側面もあるんですね。

Shibori　そうです。

──しかも今回は、Shiboriさんが「全ての源」と語る牛乳そのものについて歌っています。

Shibori　この曲を最終章にしようと自分の中で位置づけたとき、題材は自ずと牛乳になった。牛乳と自分、それは俺にとって根源的なエレメントだから。でも、Bボーイっていうのは、どこか愚直で不器用なところがある。逃げようと思えば逃げられたけど、俺は戦うことを選んだんです。

──タイトルを「ミルク」ではなく「メゥク」にしたのはどうしてですか？

Shibori　今回は最後だから、これ以上ないって言う極限の本質、コア、自分の原点みたいなものを表現することにしようと。ミルクとメゥクは似て非なるもの。おれはメゥクを目指したい。メゥクでありたい。

──もうちょっと具体的に説明していただけますか？

Shibori　とにかくそういうことなんですよ。インタビュアーさん、きょとんとした顔してますけど。なので、もうこれ以上は言わせないでください。くれぐれも穏便によろしくお願いします。

Sister MO'とは栃木の牧場で知り合った

──「メゥク」の新機軸としては、フィメールシンガー・Sister MO'の参加です。

Shibori　「メゥク」には、ほ乳類全体を包み込むようなスケール感が欲しくて、女性ボーカルを探してた。たまたま共通の友人である酪農家に相談したら、彼女がいいんじゃないかって。俺もSisterのことはずっとリスペクトしてて、どこかで一緒にやりたいと思ってたから、今回一緒にやることができて光栄だよね。

──2人は以前から知り合いだったんですね。

Sister MO'　シボくんとはミルクミュージック仲間で、結構長い付き合いになるのかな。ライブとかでは競演したことあったけど、曲は今回が初めて。

Shibori　Sisterとは栃木の牧場で知り合ったんです。彼女はその牧場の牛舎でライブしてて。彼女のシルキーな歌声にすぐロックされたよ。牛たちもすごい騒ぎだった（笑）。

──でも、牛舎は独特の臭いがありますよね。Sister'Moさんも大変だったんじゃないですか？

Sister MO'　それはないです。確かに「牧場臭い」って言われたこともあります。でも、私は気にしてません。むしろ、以前のインタビューでシボくんが言ってた「ラッパーは牛糞の匂いさせてナンボ」っていうのはすごいわかる。私にもミルクミュージシャンとしての誇りがあるから、あの発言には本当に共感できましたね。