松田聖子|デビュー45周年ツアー「Sing! Sing! Sing!」をWOWOWで放送・配信 “永遠のアイドル”の軌跡と現在地

松田聖子が2025年に開催した全国ツアー「45th Anniversary Seiko Matsuda Concert Tour 2025 "Sing! Sing! Sing!"」より、埼玉・さいたまスーパーアリーナ公演の模様がWOWOWで3月29日に放送および配信される。

昨年デビュー45周年を迎え、年末の「NHK紅白歌合戦」で大トリを務めたことも記憶に新しい松田聖子。「45th Anniversary Seiko Matsuda Concert Tour 2025 "Sing! Sing! Sing!"」は、そのアニバーサリーイヤーを記念して行われたコンサートツアーで、誰もが口ずさめるヒット曲を軸に豪華なステージが展開された。

WOWOWでの放送・配信を記念し、音楽ナタリーでは“永遠のアイドル”松田聖子が歩んできた軌跡を振り返るとともに、ますます輝きを増し続ける現在地に迫る。

文 / 秦野邦彦撮影 / Masamichi Kawada

番組情報

「松田聖子 45th Anniversary Seiko Matsuda Concert Tour 2025 "Sing! Sing! Sing!"」

2026年3月29日(日)20:00~
WOWOWライブで放送 / WOWOWオンデマンドで配信
放送配信終了後~2週間アーカイブ配信あり

公式サイト

国境と世代を越えていく松田聖子というアイコン

1980年4月1日、いわば80年代の幕開けにシングル「裸足の季節」でデビューすると瞬く間に頂点に上り詰め、今なお第一線で活躍を続ける松田聖子。アーティスト活動45周年を迎えた昨年は、新録セルフカバーを含むベストアルバム「永遠のアイドル、永遠の青春、松田聖子。 ~45th Anniversary 究極オールタイムベスト~」のリリース、全国アリーナツアー「45th Anniv. SEIKO MATSUDA CONCERT TOUR 2025–2026 "Sing! Sing! Sing!"」の開催、そして大晦日には5年ぶりの「NHK紅白歌合戦」出場と精力的な活動を展開してきた。紅組トリのMISIA、白組トリのMrs. GREEN APPLEに続いて登場した彼女は「新しい年が笑顔と希望に満ちた輝かしい年になりますよう、感謝の気持ちを込めて精一杯歌わせていただきます」というメッセージとともに紅白初出場時の披露曲として思い出深い「青い珊瑚礁」を届けた。そのパフォーマンスは、歌手別視聴率トップとなる39.9%を記録。純白のロングドレス姿とともに「究極の大トリ」として話題になった。

さらに今年2月22日、前年のツアーの千秋楽として韓国・仁川インスパイア・アリーナで行われた初の韓国公演は超満員に。オープニングの「青い珊瑚礁」からファン総立ちで大合唱となった。

松田聖子のライブの様子。(Photo by Masamichi Kawada)

韓国では1998年まで日本の映画、マンガ、音楽などの大衆文化の流入を規制していたが、数年前から10代から30代の松田聖子ファンが急増している。火付け役となったのは日本のシティポップブーム、そしてNewJeansが2024年6月に東京・東京ドームで開催した「NewJeans Fan Meeting 'Bunnies Camp 2024 Tokyo Dome'」でのHANNIの歌唱だ。NewJeans初の単独来日公演として注目を浴びた同コンサートは、2日間で約9万1200人を動員。ソロコーナーでHANNIが「青い珊瑚礁」を日本語で歌うと、会場はその日一番の大きな歓声に包まれた。80年代に日本で大流行したサイドのレイヤーを外巻きにする「聖子ちゃんカット」を彷彿とさせるショートヘア、白と青のボーダー柄トップスに白いフレアスカートのマリンルック。高揚感のあるイントロに続いて2004年生まれのHANNIが「あゝ」と歌い出した瞬間、時代と国境を越えた感動が人々の胸に押し寄せたことは間違いない。

日本のアイドルシーンの象徴・松田聖子は、若い世代の新たなトレンドとして世界中で盛り上がるレトロブームにおいても絶大な支持を集めている。中でもユニークな例が、シンガーソングライター兼ビデオグラファーのキャメロン・ルー率いるアメリカの音楽ユニット、Ginger Rootが2022年に発表した「Loneliness」のミュージックビデオだ。空港に着陸した飛行機から降りてきたキャメロンが慌ただしくヘッドフォンを付けて滑走路で歌うシーンは、「青い珊瑚礁」が初ランクインを果たした1980年8月14日放送の「ザ・ベストテン」で、松田が羽田空港の滑走路から歌唱した名場面を再現したもの。1995年カリフォルニア生まれ、中国系アメリカ人の3世であるキャメロンは、自身のアイデンティティを求めてアジアの文化に興味を持ったことをきっかけに、Yellow Magic Orchestra、大貫妙子、山下達郎の音楽と出会い、日本語を独学で勉強。80年代の日本のCMや音楽番組から多大な影響を受けたという彼は、その魅力を「懐かしさと新しさの絶妙なバランス」と語っている。

“松田聖子像”を決定づけた楽曲たち

さて、ここで冒頭から頻出している「青い珊瑚礁」について少し解説しておこう。「青い珊瑚礁」は、1980年7月1日にリリースされた2枚目のシングルにして、松田の名を一躍世に広めた初期の代表曲(作詞:三浦徳子 / 作曲:小田裕一郎 / 編曲:大村雅朗)。タイトルを付けたのは、1本のカセットテープから彼女を発掘し、80年代後期までのシングルとアルバムをすべてプロデュースしたCBS・ソニー(当時)の若松宗雄だ。2022年に若松が上梓した新書「松田聖子の誕生」によると、映画館でたまたま観たブルック・シールズ主演の同名映画の予告編からスクリーンいっぱいに広がる南太平洋の映像と、透明感ある松田の歌声が直結したという。ちなみに映画「青い珊瑚礁」のアメリカ公開は1980年6月20日、日本公開はシングル発売後の8月14日。このライブ感には驚かされるばかりだ。

松田聖子のライブの様子。(Photo by Masamichi Kawada)

歌い出しの「あゝ私の恋は」というフレーズは、打ち合わせで若松のイメージを聞いた小田裕一郎がその場でギターを弾いて即興で歌ったものがそのまま採用された。三浦徳子のみずみずしい詞は松田のキャラクターとうまくマッチし、その後の「風は秋色」「チェリーブラッサム」「夏の扉」とともに初期のアーティストイメージを形成するうえで大いに貢献した。2020年代には、1979年に三浦が手がけた松原みきの「真夜中のドア~stay with me」がシティポップを代表する1曲として世界的なストリーミングヒットを記録したことも記憶に新しい。またアレンジに関しても、山口百恵「謝肉祭」(1980年3月21日リリース)を聴いた若松が即座に依頼した大村雅朗によるイントロが、歌い出しの高揚感をより際立たせた。オリコン初登場は87位だったが、南の島のビーチで撮影した本人出演によるグリコのアイスクリーム「ヨーレル」とのCMタイアップで多くの人が耳にし、発売から2カ月でチャートで2位を獲得。女性ファンが「聖子ちゃんカット」をこぞって真似る社会現象が巻き起こるなど、松田の快進撃が始まった。

サウンド面で若松がまず目指したのは、TOTOやボズ・スキャッグスを意識した洋楽的なAORの要素だった。それも画期的すぎず、わかりやすい大衆性を持たせることに注意を払ったという(その意図はギタリストの今剛が弾いた「チェリーブラッサム」、同じくギタリストの松原正樹が弾いた「時間の国のアリス」のイントロと間奏によく表れている)。そしてそこに南の島や高原の空気感、都会的で洗練された世界、あるいは透明感あふれる乙女の気持ちを文学的な香りとともに重ねたら最高のエンタテインメントになるのではないかと若松は考えた。作詞家の松本隆(初提供シングル曲「白いパラソル」。以下同)、作曲家の財津和夫(「チェリーブラッサム」)、呉田軽穂こと松任谷由実(「赤いスイートピー」)、大瀧詠一(「風立ちぬ」)、細野晴臣(「天国のキッス」)といった豪華な顔ぶれが毎回試行錯誤を重ねながら素晴らしい作品を生み、1988年の「旅立ちはフリージア」までシングル24作連続オリコン1位を記録した。

セールス面以外でも、日本の若者にとって海外旅行がまだ一般的ではなかった時代に、「マイアミ午前5時」や「セイシェルの夕陽」(いずれも1983年発売のアルバム「ユートピア」収録)で描かれた異国の風景が多くの人々を魅了。結果として、海外旅行者数の増加にも影響を与えた。また、その後の人気につながる要素として、1984年にリリースされた17枚目のシングル「時間の国のアリス」ではテーマパークのような壮大なファンタジーに挑戦。この成功を受け、若松は「聖子の歌の主人公は歳を取らないという作品性は、この時期から自然とあったのかもしれない」と自著に記している。

松田聖子のライブの様子。(Photo by Masamichi Kawada)
松田聖子のライブの様子。(Photo by Masamichi Kawada)

広がり続ける松田聖子の創作表現

松田自身も初期から作詞作曲に意欲的に取り組み、1996年にはシングル「あなたに逢いたくて ~Missing You~」が大ヒットした。2007年の「Baby's breath」は初めて松田が単独で全作詞および作曲を手がけたセルフプロデュースアルバムとなり、その後も彼女は「My pure melody」(2008年)、「Bibbidi-Bobbidi-Boo」(2015年)、「Merry-go-round」(2018年)でシンガーソングライターの才能を発揮。2017年には新たな挑戦として、往年のジャズ楽曲をカバーする「SEIKO JAZZ」シリーズをスタートさせた。また、デビュー40周年記念アルバム「SEIKO MATSUDA 2020」(2020年)および「SEIKO MATSUDA 2021」(2021年)では、ライブのサポートやレコーディングでキーボードを担当する野崎洋一がアレンジを手がけたセルフカバー「瑠璃色の地球 2020」「SWEET MEMORIES~甘い記憶~」「青い珊瑚礁 ~Blue Lagoon~」「時間の国のアリス ~Alice in the world of time~」などを発表。2025年リリースの「永遠のアイドル、永遠の青春、松田聖子。 ~45th Anniversary 究極オールタイムベスト~」にも「渚のバルコニー 2025」「ピンクのモーツァルト 2025」など多数の新録セルフカバーが収録されている。

松田聖子のライブの様子。(Photo by Masamichi Kawada)
松田聖子のライブの様子。(Photo by Masamichi Kawada)

デビュー45周年記念日の2025年4月1日に配信リリースされた「Shapes Of Happiness」は槇原敬之が作詞作曲およびプロデュースを手がけた新曲で、テーマは「人それぞれの“幸せの形”」。誰もが自分なりの幸せを見つける力を持ち、互いにそれを認め合える世界になってほしいという願いが込められた。この曲からたくさんの元気をもらったという松田はMVのプロデュースも自ら担当。彼女発案の「ニュー・サイケ」が映像のコンセプトになっている。2021年に音楽番組「関ジャム 完全燃SHOW」(現「EIGHT-JAM」)に出演した際、今後について松田は「皆さんに助けてもらいながらずっと続けていけたら幸せだし、その中で新しいことをトライできたらいいですね」とコメントした。「Shapes Of Happiness」は、ファンへの感謝の気持ちを込めたメッセージソング「大切なあなた」や、財津と37年ぶりタッグを組んだ「風に向かう一輪の花」ともども、笑顔と元気を与え続ける1曲に育っていきそうだ。

“永遠のアイドル”のステージを心ゆくまで

昨年11月には、松田とともに80年代のアイドルシーンを牽引した中森明菜をはじめ、椎名林檎、FRUITS ZIPPERといったアーティストたちが参加したデビュー45周年記念トリビュートアルバム「永遠の青春、あなたがそこにいたから。~45th Anniversary Tribute to SEIKO MATSUDA~」がリリースされた。椎名編曲によるDaokoの「渚のバルコニー」をはじめ、参加アーティストごとの解釈も興味深く、ぜひとも原曲と聴き比べながら楽しみたいところだ。

WOWOWでは松田が昨年行った活動45周年を記念した全国アリーナツアーより、初日となった6月7日の埼玉・さいたまスーパーアリーナ公演の模様をオンエア。アニバーサリー公演とあって、誰もが口ずさめるヒット曲の数々を中心に、アコースティックコーナーあり、自身によるドラム&ギター演奏あり、という豪華な内容となったライブパフォーマンスは必見だ。明るく、上品で、かわいらしい“永遠のアイドル”のステージを極上のカメラワークで心ゆくまで堪能しよう。

松田聖子のライブの様子。(Photo by Masamichi Kawada)

プロフィール

松田聖子(マツダセイコ)

日本を代表する女性アイドル歌手。1978年に「ミス・セブンティーンコンテスト」の九州地区大会で優勝し、上京。1980年にシングル「裸足の季節」でデビューを果たす。3rdシングル「風は秋色」からは、24曲連続でオリコンシングルチャート1位という偉業を達成。高い音楽性と個性的な歌声により、国民的ポップス歌手の地位を不動のものとした。90年には全米デビューも果たし、早くから海外での活動を行っている。また女優としても積極的に活動しており、2004年に主演したドラマ「たったひとつのたからもの」は、関東地区で30.1%の高視聴率を記録。「聖子ちゃんカット」など、さまざまなブームの火付け役でもあり、常にその動向が注目されている。