「POP YOURS 2026」特集座談会|二木信、松島広人、USB、つやちゃんが今年の注目ラッパーを語り合う

4月3~5日に開催が迫ったヒップホップフェスティバル「POP YOURS 2026」。同フェスは今年で5周年を迎え、初の3DAYS開催となる。会場も幕張メッセの1~6ホールへと拡張され、過去最大規模での実施だ。イベントオリジナル曲「STARLIGHT」に参加したKianna、HARKA、AOTO、Sieroをはじめ、若手ラッパーが例年以上に数多くラインナップされており、新たに導入された「Terminal 6 STAGE」も大きな見どころとなっている。このステージは、DJやパーティ、コレクティブなどに焦点を当て、ライブパフォーマンスにとどまらず、ヒップホップのクラブカルチャーを提示する場として設計された。

国内ヒップホップの現在地を多角的に映し出す構成となった今年の「POP YOURS」について、そのラインナップにどのような意義があるのか、二木信、松島広人(NordOst)、USB、つやちゃんの4名が、主に若手ラッパーに焦点を当てて語り合った。

取材・文 / つやちゃん

公演情報

POP YOURS 2026

2026年4月3日(金)千葉県 幕張メッセ 国際展示場 展示ホール1-6

<出演者>
LANA / Elle Teresa / guca owl / Benjazzy / Bonbero / eyden / ISSUGI / Jinmenusagi / Koshy & Sonsi / kZm / Litty / Peterparker69 / Pxrge Trxxxper / SEEDA / VaVa / WILYWNKA
SPECIAL LIVE:STUTS Orchestra
NEW COMER SHOT LIVE:AOTO / Siero / X 1ark
DJ:nasthug
Terminal 6 STAGE:DJ U-LEE / GRADIS NICE & DJ SCRATCH NICE / I♡WAKA
MC:SAKURA / Isaac Y. Takeu


2026年4月4日(土)千葉県 幕張メッセ 国際展示場 展示ホール1-6

<出演者>
千葉雄喜 / Daichi Yamamoto / Kvi Baba / BIM / DADA / DJ CHARI & DJ TATSUKI / Jin Dogg / JUMADIBA / KM / Manaka / Masato Hayashi / 7 / ralph / SALU / SPARTA / Worldwide Skippa / Yvng Patra
SPECIAL ACT:Tohji
NEW COMER SHOT LIVE:Rama Pantera / Sad Kid Yaz / YELLASOMA
DJ:eijin
Terminal 6 STAGE:MARZY / SEEDA × DJ ISSO × she's rough presents CONCRETE GREEN / Tohji Presents u-ha neo stage
MC:SAKURA / Isaac Y. Takeu


2026年4月5日(日)千葉県 幕張メッセ 国際展示場 展示ホール1-6

<出演者>
KEIJU / Kohjiya / NENE / ACE COOL / ANARCHY / C.O.S.A. / G-k.i.d / Jellyyabashi / Kaneee / lilbesh ramko / MIKADO / OZworld / ピーナッツくん / 柊人 / Tete / Watson / Yvngboi P
SPECIAL LIVE:PUNPEE
NEW COMER SHOT LIVE:11 / HARKA / Kianna
DJ:uin
Terminal 6 STAGE:AMAPINIGHT / MASATO & Minnesotah / YeYan
MC:SAKURA / Isaac Y. Takeu

公式サイト

Jellyyabashiがいるのがヤバい

つやちゃん 初の3DAYS開催となり、若手のラインナップがとても充実している今年の「POP YOURS」ですが、皆さんどこに注目していますか。

USB まず注目ポイントは、初出演の若手なのにNEW COMER SHOT LIVEを飛び越して、いきなりメイン枠に出る人たちですよね。

二木 Litty、Manaka、Worldwide Skippa、Jellyyabashiの4人。

USB そこって、運営側のキュレーション的にも「ここは絶対にメインで出したい」「お客さんに聴かせたい」っていう意思が出るところじゃないですか。

つやちゃん そう考えると、ここにコアなJellyyabashiが並ぶのがヤバい。めちゃくちゃ強い意思を感じる(笑)。

USB 思うに、これはやっぱり横須賀のアンダーグラウンド枠を入れたいということですよね。YOKOSQUADだと2024年にCFN Malikが「POP YOURS」に出たじゃないですか。だからその枠を今回はJellyyabashiでいく感じなのかな。

二木 去年インデペンデントストリートカルチャーマガジン「DAWN」とCLUB QUATTOの共催イベントにYOKOSQUADからJellyyabashi、CFN Malik、JuggrixhSentanaの3人が出ていて(参照:CFN Malik、Jellyyabashi、JuggrixhSentana、DABら集結「DAWN」開催)。そこで初めて、これだけクルー感がある人たちなんだってびっくりしたんですよね。あまり積極的にメディアに出ないし、そういう人たちは最近だとけっこう珍しいので。

USB 「DAWN」編集の二宮(慶介)さんに聞いたら、やっぱりメディアにはあまり出たくないって言ってるらしいです。

二木 だからこそ、よく口説いたなと。「DAWN」のイベントでは、クルーの人がめちゃめちゃステージに上がっていて、自分の記憶が正しければ、特にJellyyabashiの「IMAKA(IN MY CUP)」って曲の盛り上がりが強烈でした。「POP YOURS」では、どのくらいの人数がステージに上がるのかも注目ですね。

つやちゃん 24年のCFN Malikを経て、またYOKOSQUADから出すのは熱いなって。運営にとっても「とにかく観てください」ってことでしょ。

松島広人(NordOst) この2年ほどでお客さんもだいぶ成熟したとは思うんですよね。ある程度は、もう伝わるだろうという確信もあるのかもしれない。

USB 幅を見せてるってことなんでしょうね。ポップになりすぎることの弊害ももちろん考えてるだろうから。

つやちゃん YOKOSQUADは今のUSの先進的な部分をちゃんと持って来つつ、オリジナルの解釈もしてるから、そういう人たちが出ることでフェスに1本太い背骨が通る感じがしますよね。

松島 本場感のあるストリートのラッパーという点では、福岡のYvngboi Pの初出演も楽しみですね。

USB Yvngboi Pは絶叫できる曲が多く、フェス向きだと思います。福岡のこの界隈はストリート系のラップで今一番勢いがあると思うので、もし仲間がゲストで出ることがあるならそれも楽しみです。

Skippaは立ち回りがうまいし、ヒット曲がある

二木 Jellyyabashiの抜擢に驚く一方で、Worldwide Skippaがメイン枠で出るのは、むしろもう納得というか。彼の面白さって、コンシャスラップとナードなノリとのバランス感にありますよね。彼みたいなラッパーって、いるようでいなかった。「俺をミソジニストネットラッパーと一緒にしないで」(「Motion Talk」)とラップする一方で、さり気なく下ネタも入れたりするじゃないですか。ポリティカルで、今風に言うとリベラル的な価値観を持ちつつ、ナードであり、ストリートのマインドも持っていて。「Take Back Orange」のような素晴らしいメッセージの曲を歌いつつも、コンシャスラップばかり期待する大人にちゃんと牽制球を投げる。僕はそのあたりが信頼できるなって感じます。

つやちゃん SNSミーム的なワードも入れるし、流れを読むのがうまい。でも、なんかそれだけでもないという感じね。

USB めちゃくちゃネットを見てる人だと思います。ネット界隈を知り尽くしているから、立ち回りがうまい。「こういう感じで言ったらこういう反応が来るだろう」というのがわかってる。

松島 以前小さいビーフもありましたけどあれも「ハイクオリティな曲で殴り倒す価値もないよ」っていうポーズを取るために、めちゃくちゃ適当にアンサー曲を作ってサラッと返していたのが痛快でしたね。ビーフの土俵にも上げないよ、っていう。メディアに出たがらないJellyyabashiみたいな人がいる一方で、SkippaとかTee Shyneのようにマーケティング精神みたいなものがあるラッパーが新世代に特に顕著だと思います。少し前まではマーケティングへの抵抗があった気がしますが、今はむしろ「なんでやらないの?」みたいな感じで。よくも悪くも、そういう動き方に対して違和感もためらいもない世代が台頭してる感じがあるような。

USB 最近のヒップホップを押さえるうえでは「ラップスタア」と「Red Bull RASEN」と「03- Performance」はマストだと思うけど、Skippaは全部出てるじゃないですか。押さえるところを押さえる、という立ち回りがやっぱりうまい。「メタナイト」とか「don't stop freestyle」とか曲もちゃんとヒットさせてるから、セトリが組める。Littyもそうですよね。ヒット曲があるから、ライブの場でちゃんとセトリが組めるのが大きい。

Manakaのラップの本物感

つやちゃん あとManaka。トラックがめちゃくちゃいい。

二木 いいですよね。デビューEP「Pretty Machine Gun」の冒頭曲「Tapping」のMVのファッションと映像の質感は、Sweet Robots Against The Machine(テイ・トウワの変名プロジェクト)の「FREE」っぽいおしゃれさがある一方で、メンフィスラップ由来のような、ざらついたテクスチャーのトラックでもやってるし。

松島 ラッパーとしては、ハスキーな声質で大人っぽいから、そこを生かしたビート選びをしているのかな?と思いました。

USB  今って例えばXGとかHANAとか、そういうラップのグループがあるじゃないですか。ああいうグループってみんなバキバキにラップするけど、Manakaは全然違うアプローチで。例えば「Agari」って曲は、すごくオフビートっぽい感じで普通はやらないようなことをやってる。

松島 あの曲、めちゃくちゃカッコよかったですよね。

USB 本当にラッパーのアプローチ。「03- Performance」のRommy(Montana)さんもあれを聴いてすぐ出演をオファーしたって言ってました。

つやちゃん Manakaはメンフィスめっちゃ好きみたいですね。Three 6 Mafiaが好きって言ってた。

松島 ライブ力もすごくありますよね。そういう意味でも強いな、と。Skippaくんもライブが半年くらいで死ぬほどうまくなってて、今年1月のリリパのときに度肝を抜かれましたね。

LittyとC.O.S.A.のコラボの意義

二木 大きいステージでラップのうまさをどれだけ出せるのかということで言うと、C.O.S.A.がトップクラスにうまいと思うけど、そのC.O.S.A.がLittyと一緒に曲をやってるのも面白い。

USB Littyの立ち回りもうまかったですね。C.O.S.A.みたいな人たちに自分のことを認めさせていかないといけないってタイミングでコラボしたから、もうみんな何も言えない感じになってる(笑)。

二木 かつては、LittyとC.O.S.A.がこの曲でやったようなフィーチャリング文化ってもっとあったじゃないですか。LittyはスキルフルなラッパーでR&Bシンガーじゃないから喩えが雑かもしれないけど、安室奈美恵とZeebraがやったりしたような。そういう、ちょっと夢のある組み合わせでラグジュアリーなパーティチューンをやる醍醐味を思い出しましたね。同時に、「BOUNCE」には、レミー・マーとファット・ジョーのコラボ曲のようなハーコーさもあって。

USB 最近はそういう大きな存在のR&B歌手がいないから。日本の場合、今はもうラッパーがR&Bシンガーの役割も担ってるんですよね。

松島 NENEさんも、年明けに出した「INDIANA JONES」とかはしっとりした感じのバラードで。素晴らしい曲でした。

つやちゃん それこそ、今回NEW COMER SHOT LIVEで出る11は初期のNENEっぽい印象ですよね。

USB 11はちょっと海外ノリを感じる。日本のR&Bに欠けてるものを持ってるかもしれない。MIYACHIと一緒にやってるけど、彼はどうやって見つけたんですかね。

キャリアを経てスタイルを確立したAOTO、Sad Kid Yaz

つやちゃん ニューカマーだとAOTOの最新アルバム「Kiss My Life」がよかったんですよね。トラックをSATOHのLinna Figgも手がけていて、Linnaの中でも新境地のビートだと思った。それこそAOTOはSATOHのパーティ「FLAG」に出たりと、昔から一緒にやってきた仲ですよね。この前アパレルブランド「sage」主宰のパーティに行ったらAOTOが「自分は初めてのライブをsageのSota Moriくんにブッキングしてもらって、そこから歴史が始まった」みたいなことをMCで言ってて。コロナ前後に生まれたコミュニティがこうやって何年か経って大きくなってきてるのは熱いですね。

USB 自分の中では、AOTOとかは「POP YOURS」のど真ん中になってきてる感じ。「POP YOURS」に来る人がみんな好きそうな音楽ですよね。ちょっとおしゃれで、ちょっとストリートでイケてるみたいな今風の感じがすごいあるじゃないですか。

つやちゃん AOTOはかなりメインストリームラップになってきた。それで風格が増したと思う。

松島 AOTOくんにもデジコア的な出自があるんですよね。Sad Kid Yazくんも今のスタイルを確立する前はそういう感じのシーンと近くて。

つやちゃん Sad Kid Yazは1st EP「21世紀革命」が衝撃的で、ギャル男リバイバルの文脈で出てきた感じでしたよね。valknee周りのコミュニティが当時すごく反応していて。定期的にライブを観てますけど、最初からすごく華があった。今考えると、このあたりはやっぱりデジコア / ハイパーとヒップホップのブリッジになってきた人たち。

松島 僕も初期からYazくんのことを観ていますが、サーフとかハワイっぽい感じのスタイルを確立してから一変しましたよね。気のいい青年が急にスターダムに駆け上がった感じで、夢がある。今の現場って、すごく熱心なオタクっぽいヘッズだけのものになりがちなんですけど、そこをちょっとチャラい感じにちゃんと戻してるところがあるのもよくて。「クラブって本来こういうものだよね」というか。それと、Yaz君もそのお客さんも含めて、チャラいけど不良ではないっていうのも今の空気なのかな?と。