抜けのいい牛舎はマジ自慢

──今回はShiboriさんのリアルな日常を見せていただくべく、牧場までお邪魔しました。

遠いところわざわざどうもね。なんか、だんだん牛乳の素晴らしさがわかってきてもらえてるみたいで、俺としてもうれしいですよ。ここは俺のホームグラウンド的牧場のひとつなんだけど、ぶっちゃけヤバいでしょ。特に抜けのいい牛舎はマジで自慢できるんで、あとでぜひ見てってくださいよ。写真とかもバンバン撮ってってもらって。これ、インターネットに載るんでしょ？

──載ります。えー、今回は新曲「デリバリー」の歌詞にちなみ、搾乳してから店頭に牛乳が並ぶまで、一連の様子を見学させていただきました。短い時間でしたが、Shiboriさんの酪農に対する真摯な姿勢を感じました。

一緒に体験してもらってわかってもらえたと思うけど、牛乳1本届けるのにもあれだけの苦労がある。前回は酪農全般をモチーフにした、いわば「牛乳革命がこれから始まんぜ」っていう、「今、火ぶたが切って落とされたぜ」っていう曲だったんだけど、「デリバリー」は牧場と消費者をつなぐ部分にフォーカスを当ててみたんだよね。やっぱサンイチイチの件で、物流のこととか、いろいろ考えていたというのもあったしね。

── なるほど。一連の作業を軽々とこなしているように見えましたが、どのあたりが一番大変なんでしょうか？

まあひとつひとつが真剣勝負みたいなところあるんで、どの作業が、というのはむずいっすね、正直バナシ。ただ、牛と一口に言ってもホントそれぞれに個性があって、穏やかなヤツもいれば、明るいヤツもいるし、気性の荒いのもいる。中には老いてなお盛んなロッケンローラーみたいなのもいたりするからね。同じように接すると痛い目にあうこともありますよ。

──牛に語りかけているように見える場面もありましたが、あれはどのような話を？

ん？ どこを見られたのかわからないけど、さっきは牛同士がマジの口論になりかけてたんで、仲裁してただけだよ。中には某歌舞伎界のプリンスみたいなのもいるんすよ。困っちゃいますよねこればっかりは。

酪農 Like I Know. You know？

──新曲「デリバリー」の歌詞は、前作「酪農」以上に牧場でのリアルな日常がストレートに反影されていますよね。まさに「日々の暮らしに根差したスタイル / 誰かにきっと届けるマイライム」。Shiboriさんならではのスタイルです。

リアル……。リアルなんですよね、俺が追求しているのは。誰かに借りてきたような、どこかで見て覚えてきたような言葉でラップして、それって楽しいか？ って。それのどこがメッセージですか？ メッセージなんですか？ ってことなわけですよ。自分の生活とか体験とか境遇から出てくるものこそが、「メッセージ」でしょ。例えば俺の場合はそれが牛乳であり牛であり酪農。Like I Know. You know？ってな具合でござんすよ。

──Shiboriさんの静かに燃えるようなラップとメロウなトラックが絶妙に絡み付く、とんでもない名曲が完成しました。ご自身としてもかなり大きな手応えを感じているのでは？

そりゃ、それ相応の自信がなきゃ発表なんてしないよね。前回の「酪農」が思った以上に好意的に大衆に受け入れられて、それだけにハードルも上がってるのはわかってる。だけど俺としてはやらなきゃいけないし、やらないでいることは俺にとってのリアルじゃないんだよね。リアルじゃなきゃ俺じゃないし、ミルクラッパーとしてはそれじゃダメなんだよ。何を言ってるかよくわからないと思うけど、俺自身もわかってない。とにかく牛乳は美味いってこと。