ナタリー PowerPush - 柴山一幸×澤部渡(スカート)対談

時代を超えたソングライターの遺伝子

自分でもわからなかった歌い手としての表現力

柴山一幸

澤部 柴山さんはなぜ今回小坂忠さんの曲をカバーしているんですか?

柴山 小坂忠さんのバックをやっているティン・パン・アレーの演奏が好きだし、あの時代の作品の音も好きなんですよ。彼らのバンドアンサンブルが僕の理想だっていうのもあります。中でも「機関車」を選んだ理由っていうのは、あの曲の歌詞なんですよね。「目がつぶれー」みたいな歌詞、今だったら規制されているような言葉じゃないですか。今は簡単に規制とか禁止になっちゃうけど、昔はそういう曲も普通に流れていたし、僕らも70年代とかに自然にそういう言葉や文化を受け入れてきてたと思うんです。

──そうですね。

柴山 もちろん、あの曲を作ったときの小坂さんの思いっていろいろあるとは思うんですけど……僕が思うに“キカンシャ”って、機関車だけじゃなく戦争からの帰還者って意味もあるんじゃないかな?って気がしたんです。僕が小さかった頃はまだ、戦争から帰ってきた人が街角でオルゴールを鳴らしているような風景があった。そういうのを今の時代の若い世代は知らないわけで、伝えていきたいって思いもどこかであったのかもしれないですね。それに「機関車」をライブでやったとき、すごく評判がよかったんです。オリジナルの曲よりはっちゃけてたよ!って感想を言われたりして。自分の曲だとボーカリスト=柴山一幸って部分が外に出にくいんですよね。当然曲のイメージがわかっているから。でも他人の曲だと、表現者としてハミ出す部分が浮き彫りになるんです。自分でもわからなかった歌い手としての表現力ですよね。それを作品の中でも残したいなっていうのがありました。

澤部 僕もティン・パン・アレー周辺の音は大好きですね。特に細野晴臣さんのベースラインはすごいって常々思います。わりと大きなバンドセットでもちゃんと映えるベースラインを弾きますし、小さな規模のアンサンブルでもすごくいいベースを弾かれる。高田渡さんの「FISHIN'ON SUNDAY」とか、小規模の編成なのにそれでもすごいんですよ。

10年かけて1年に1枚ずつアルバムを作りたい

澤部渡

──お2人がソングライターとして好きなのは誰ですか?

柴山 うーん、難しいなあ!

澤部 たった今の気分で選ぶと、馬飼野康二さんですね。

──西城秀樹や小泉今日子など多くのヒット曲を手がけてきた歌謡曲畑の作曲家ですね。SMAPやKinKi Kidsなどジャニーズ系も多く作曲しています。

澤部 西城秀樹の「傷だらけのローラ」とか、大好きなんですよねー(笑)。やっぱり商業作曲家って好きなんですよね。

柴山 CHAGE and ASKAも大好きなんですよね?

澤部 好きですよ。ただ、今日はチャゲアスの気分じゃないですね(笑)。

柴山 僕は小田和正さんですね。音楽を初めに意識したのはオフコースなんですよ。

澤部 僕は人に曲を提供するのに興味があって。制限があるのが楽しい。普段自分で自分の曲を書くのって制限ないじゃないですか。当たり前ですけど。だから「こういう感じの曲で」とかって最初に言われたほうが面白いですね。クライアントから自由に作ってくださいって言われたら、さあどうしたもんか?ってかえって悩んじゃう。最近はたまに依頼されたりしますけどうれしいですね。

柴山 面白いなあ。僕は逆に商業作曲家ってあまり興味ないんですよ。僕はシンガーソングライターのほうが好きで。自分の曲をしっかりと自分で表現している人に憧れがあるからなのかもしれないです。今回の自分のアルバムも、そういう意味ではすごく満足していますね。今、実は10年かけて1年に1枚ずつアルバムを作りたいと思っていて。去年、今年と2作出したからあと8枚ですけど、このあと8年連続で出そうかなと。柴山一幸ってアーティストはあまり曲を作らないのかなって思われてるかもしれないけど、アルバムを出していなかっただけで曲はずっと作ってきたんです。今は自分で言うのも恥ずかしいですけど、この歳で脂が乗ってきていると思うんで、どんどん出していきたいと思っています。

澤部 僕は今のバンドサウンドを磨きながらも、レコーディングは別の表情を見せられるようなことをやってきたいですね。

柴山 何かこれから一緒にやれるといいですね。全然違う感覚を持っているから面白くなりそう。

澤部 ぜひぜひやりましょう!

左から柴山一幸、澤部渡。

ライブ情報

柴山一幸 4thアルバム「君とオンガク」発売記念ライブ

2014年6月28日(土)東京都 代々木Barbara
OPEN 18:30 / START 19:00

料金:予約 3000円 / 当日 3500円(ドリンク代別)
予約受付:代々木Barbara TEL 03-3320-5895 / MAIL yoyogibarbara.info@gmail.com

柴山一幸&スカート ツーマンライブ

2014年8月10日(日)東京都 代々木Barbara
OPEN 18:30 / START 19:00

<出演者>
柴山一幸 / スカート
料金:予約 2500円 / 当日 2800円(ドリンク代別)
予約受付:代々木Barbara TEL 03-3320-5895 / MAIL yoyogibarbara.info@gmail.com

「ポイントカード」PV / 柴山一幸

「君とオンガク」PV / 柴山一幸

スカート "サイダーの庭" 告知映像

柴山一幸 ニューアルバム「君とオンガク」 / 2014年6月4日発売 / 2160円 / GO→ST / DQC-1273
「君とオンガク」
収録曲
  1. Hello!Hello!
  2. 僕は今も信じている
  3. 君とオンガク
  4. ペットサウンド
  5. お願いダーリン
  6. サクカサカナイカ
  7. Cry Wolf
  8. 機関車
  9. 手はおひざ
  10. We are Music-Star
  11. ポイントカード
スカート ニューアルバム「サイダーの庭」/ 2014年6月4日発売 / 1836円 / カチュカ・サウンズ / KCZK-010
スカート ニューアルバム「サイダーの庭」
収録曲
  1. さかさまとガラクタ
  2. アポロ
  3. 都市の呪文
  4. ラジオのように
  5. サイダーの庭
  6. はなればなれ
  7. 古い写真
  8. すみか
柴山一幸(シバヤマイッコウ)
柴山一幸

1969年11月8日、愛知県生まれのシンガーソングライター。2001年に鈴木博文(ムーンライダーズ)主宰のレーベル・メトロトロンレコードよりアルバム「Everything」でデビューを果たした。2008年5月には田辺マモル、徳永憲らをゲストに迎えて制作された2ndアルバム「涙色スケルトン」を発表。自身の作品のみならず、田辺マモルのサウンドプロデュースや声優アーティスト田村ゆかりへの楽曲提供など幅広く活躍する。2013年3月の3rdアルバム「I'll be there」発売以降はライブも精力的に行い、2014年6月にはGO→STレーベルより4thアルバム「君とオンガク」をリリース。

スカート

ソングライター澤部渡が2006年に始動させたソロプロジェクト。2010年12月に自主制作アルバム「エス・オー・エス」を発表し、以降はフルアルバムのみならず展示即売会限定のCD-Rなども含め、コンスタントに作品を発表し続けている。さまざまな変遷を経て、現在は佐久間裕太(Dr / 昆虫キッズ)、清水瑶志郎(B / マンタ・レイ・バレエ)、佐藤優介(Key / カメラ=万年筆)をサポートメンバーに迎えて活動中。2014年6月に最新アルバム「サイダーの庭」を発表する。