SEVENTEENが紡ぐ音楽の魅力、13人が贈り続けたCARATへのプレゼント

SEVENTEENの日本初となるベストアルバム「SEVENTEEN JAPAN BEST ALBUM『ALWAYS YOURS』」が8月23日にリリースされる。

SEVENTEENは2015年に韓国でデビューした13人組グループ。2018年5月30日に日本デビューを果たしてから、今年で5周年を迎えた。2022年発表の日本1st EP「DREAM」や今年4月リリースの10thミニアルバム「FML」は2023年7月には累積620万枚を売り上げ、K-POPのアルバム最多販売枚数で新記録を樹立、日本でも2023年8月にミリオンセラーを記録した。今年9月からは全国5都市でSEVENTEEN史上最大規模のドームツアーの開催を控えるなど、グローバルで活躍するトップアーティストとしての地位を確立しつつある。本特集では、楽曲制作から振付までにメンバーが携わっていることでも知られるSEVENTEENの“音楽”の側面にフォーカス。SEVENTEENがCARAT(SEVENTEENファンの呼称)とともに歩んだ軌跡をたどりながら、彼らが紡ぐ楽曲の魅力を深掘りする。

文 / 岸野恵加

13人組グループ・SEVENTEEN

SEVENTEENのことを知れば知るほど、「こんなグループを応援できるCARATは幸せ者だ」という思いが強まる。そして率直な思いを記してしまうと、日本に暮らしていてSEVENTEENというグループと彼らの音楽に触れないのはあまりにももったいない、という思いまで抱いてしまうほどだ。

そう感じる理由を詳しくつづっていく前に、SEVENTEENというグループについて紹介したい。

SEVENTEEN は2015年5月に韓国で1stミニアルバム「17CARAT」をリリースしてデビューした13人組グループ。「13人なのにSEVENTEEN?」と疑問に思うかもしれないが、メンバーはVOCAL TEAM、HIPHOP TEAM、PERFORMANCE TEAMの3つのユニットにそれぞれ属していて、「13人のメンバー+3つのユニット+1つのチーム=17」という意味が込められている。

SEVENTEENの大きな特徴は、セルフプロデュースグループであること。楽曲制作から振付、ライブのセットリスト構成に至るまでメンバーが手がけており、楽曲プロデュースはWOOZI、振付創作はHOSHIが中心的存在を担っている。3つのユニットがそれぞれの強みを生かして多彩な表現を模索することで、さまざまな音楽性を消化できることが唯一無二の魅力だ。

デビュー後に多数の新人賞を獲得するなどヒットを飛ばし続けてきたSEVENTEENだが、2022年以降は世界的な人気をさらに高めている。2022年に初の全編英語のデジタルシングル「Darl+ing」をリリースし、4thアルバム「Face the Sun」がBillboard 200にて初登場7位にランクイン。また同年7月にリリースされた4thアルバムのリパッケージ「SECTOR17」では、Billboard 200でSEVENTEENの歴代最高位(2022年当時)となる4位を記録し、7作連続ミリオンセラーの記録も打ち立てた。同年にはコロナ禍を経て2年4カ月ぶりとなった 「SEVENTEEN WORLD TOUR[BE THE SUN]」を開催し、世界中のCARATを熱狂の渦に誘った。

日本でも2作連続でミリオン記録

このようにグローバルな活躍を見せているSEVENTEENは、日本での活動も精力的に行い続けている。2016年には初の来日公演を大阪と東京で行うことを告知すると、日本デビュー前にもかかわらず、5公演計1万2000人のキャパシティに対してなんと35万通の応募が殺到した。2018年2月には神奈川・横浜アリーナ、大阪・大阪城ホール、愛知・日本ガイシホールでアリーナツアーを開催し、5月に日本1stミニアルバム「WE MAKE YOU」で日本デビュー。同年9月には埼玉・さいたまスーパーアリーナでの5日間にわたる公演を盛況に収めた。その後も定期的に日本オリジナル楽曲を発表し続けている。2022年11月にリリースされた日本1st EP「DREAM」は総出荷数100万枚を突破し、2023年1月に初のミリオン認定を受けた。日本における海外アーティストのミリオン達成は、2021年6月のBTS以来の快挙だ。

続いて2023年4月に発売された10thミニアルバム「FML」は韓国で初日に約399万枚を売り上げ、K-POP史上初動売上1位を記録(2023年4月当時)。リード曲の1つ「Super」は200人のダンサーを従えた迫力満点のミュージックビデオも話題を呼び、SEVENTEENの止まらない進化と、グループが次なるフェーズに入ったことを感じさせた。そして「FML」は日本でも7月にミリオンを達成。2作連続でミリオンを記録するという偉業を目の当たりにすると、SEVENTEENが日本国内でも圧倒的な支持を得ていることをひしひしと実感できる。

楽曲を通して伝える「君」=CARATへの思い

ほかにも華々しい数字を並べていけばキリがないが、ここからはSEVENTEENが日本で残してきた楽曲の魅力と、その意義について考えていきたい。

日本デビュー5周年を迎え、2023年8月23日に初の日本ベストアルバム「SEVENTEEN JAPAN BEST ALBUM『ALWAYS YOURS』」がリリースされる。そこにはSEVENTEENが日本で発表してきた楽曲が詰め込まれており、彼らの集大成とも言える内容になっている。アルバムは2枚組で、DISC 1には新曲「今 -明日 世界が終わっても-」「Sara Sara」を含む日本オリジナル楽曲9曲を収録。そしてDISC 2には韓国で発表された楽曲の日本語バージョンが18曲収められており、計27曲のボリュームとなっている。

K-POPアーティストが日本オリジナル楽曲を発表する場合は、日本の作家が制作を手がけるケースが多い。しかしSEVENTEENは、メンバーのWOOZIが音楽プロデューサーのBUMZUと手を組み、韓国で発表する楽曲と同じ体制で制作している。歌詞はまずWOOZIが韓国語で書いた内容をもとに、丁寧に日本語に置き換えていくという。そのため、彼らの楽曲を聴いていると、メンバーの思いがダイレクトに伝わってくる感覚を覚える。

SEVENTEENの日本語歌詞には「僕」「君」という言葉がたびたび登場する。ラブソングの形を取り物語を紡いでいる曲もあるが、どの曲でもSEVENTEENは「君」=CARATへの思いを、楽曲を通して伝えている(あるいは、CARATと自分たちの関係性を楽曲で表現している)。

ライブでも最高潮の盛り上がりを見せるパワフルな日本デビュー曲「CALL CALL CALL!」には、「いつどこにいても電話してくれたら駆けつけるよ」という、メンバーからCARATへの頼もしいメッセージが込められている。そんな中、コロナ禍の2020年春には、予定されていた初の日本ドームツアーが全公演中止に。海外公演を行えない状況の最中に発表された楽曲群には、なかなか会えないCARATへの思いが充満している。2021年に発表した楽曲「ひとりじゃない」では、「心配しないで やがて夜が明け 必ず きっと会えるはずさ」とCARATとの再会を約束。その約束を果たすかのように、2022年11月リリースの楽曲「DREAM」では、「やっと出会えたSo 夢で 夢で 夢で 見た全部 Oh, oh So 夢で 夢で 夢ではない」と、2年半の時を経て念願のドームツアーを実施する万感の思いを歌で表現した。同月、夢にまで見た東京ドームの舞台に立った13人がこの曲を披露する際に、そろって感極まったような表情を浮かべていたことを今も鮮明に覚えている。

「ALWAYS YOURS」に収録される新曲2曲も、SEVENTEENの現在地を示しつつ、CARATへの思いを乗せた楽曲になっている。「今 -明日 世界が終わっても-」ではオルタナティブ・ツーステップ・ロックジャンルの音楽で未来へと向かっていくような胸中が歌われていく。

“今”は永遠ではないから

思えば、SEVENTEENは何より「今」を大事にしてきたグループだ。13人という大人数、また多国籍なメンバー構成であるため、時には全員そろわず活動せねばならない局面ももちろんある。13人そろった“完全体”で過ごせることが当たり前ではないと実感している彼らは、たびたび「今を大事にしよう」と発言する。花をモチーフとした儚げな世界観と美しいフォーメーションダンスで人気を博す日本オリジナル曲「舞い落ちる花びら(Fallin' Flower)」にも、「僕らは最初で最後の今を生きているんだよ」という歌詞があった。

「“今”は永遠ではない」と感じている13人は、常に全力でパフォーマンスをし、魂を燃やし続けている。そんな面も多くの人を惹きつけ続けるのだろう。

また「ALWAYS YOURS」収録のもう1つの新曲「Sara Sara」は流れる様子を表現する日本語から出発して作られたポップジャンルの楽曲。こちらもSEVENTEENがCARATに向ける切なる思いが表現された必聴の1曲で、8月16日から先行配信されている。

1つのグループのライブとは思えない充実感

DISC 1を聴くだけで、母国語ではない言語で思いを込めた数々の楽曲を、5年間届け続けてくれたことに改めて感謝したくなるが、DISC 2にも幅広いジャンルの名曲がそろっている。「HIGHLIGHT」「247」はPERFORMANCE TEAM、「Lean On Me」「Chilli」はHIPHOP TEAM、「20」「Pinwheel」はVOCAL TEAMと、それぞれのユニットの楽曲も収録されており、すべて日本語バージョンで楽しむことができる。ほかにもバンドサウンドが鋭く響くロックチューン「Run to You」や、ミュージカルのように華やかな世界観の「HOME;RUN」、心温まるバラード「Home」など、実に彩り豊かだ。

DISC 2収録曲でMVやパフォーマンス映像が存在するものは、ぜひ1曲目の「HIGHLIGHT」から最後の「All My Love」まで、発表順に並べて再生してみてほしい。「Love Letter」「Healing」の頃はまさに初期のSEVENTEENらしく、清涼感が際立っているが、2019年発表の「Good to Me」あたりから徐々に色気を帯びていき、「Rock with you」ではダイナミックなシンクロダンスと、大人びた13人の迫力に圧倒される。もちろんメンバーが重ねてきたさまざまな鍛錬と経験の賜物なのだが、5年という月日はこんなにも人を変えるのかと、全員の顔つきの変化を見ているだけで感動すら覚えてしまう。昔からのCARATにとっても、新たにグループに興味を持った人にも、彼らの活動を振り返るにはうってつけの1枚となるだろう。

2023年9月には日本でのドームツアー「SEVENTEEN TOUR 'FOLLOW' TO JAPAN」が始まり、5都市で12公演が行われる。彼らのコンサートではVOCAL TEAM、HIPHOP TEAM、PERFORMANCE TEAMそれぞれのパフォーマンスが盛り込まれることもあり、1つのグループのライブとは思えない、まるでロックフェスに1日中滞在したかのような充実感が味わえる。最後に何十分にもわたり「VERY NICE」のパフォーマンスがハイテンションに繰り返されるお約束の“無限アジュナ”に象徴されるように、ライブでの彼らはいつでも全力だ。今回もおそらく、そのような振れ幅の広さや全力感を実感できる内容が用意されているのではないだろうか。そして日本のライブでは、日本オリジナル曲が何曲もセットリストに組み込まれ、全員が心を込めてじっくりと話す最後のMCでも、流暢な日本語で思いを伝えてくれるメンバーが多い。特に日本語を熱心に勉強しているJEONGHANはネイティブ話者かと思ってしまうほどに豊富な語彙を交えながらコメントするので、初見の人は驚くだろう。全編を通し、形式的ではなく、観客1人ひとりとしっかりコミュニケーションを取ろうとしてくれる親密さと誠実さが、彼らのライブには常にある。

ここまで与えてもらっていいのかと思うくらい、私たちはいつもSEVENTEENから、楽曲と愛情のプレゼントを受け取り続けている。その集大成となるベストアルバムのタイトルは「ALWAYS YOURS=いつでも君のもの」。まるで熱烈なラブレターだ。今作をじっくりと聴き込んでグループの歴史に思いを馳せたあとは、ぜひ“今”のSEVENTEENの魅力を全力で堪能してほしい。

プロフィール

SEVENTEEN(セブンティーン)

2015年5月に韓国でデビューした13人組グループ。WOOZI、JEONGHAN、JOSHUA、DK、SEUNGKWANからなるVOCAL TEAM、S.COUPS、WONWOO、MINGYU、VERNONからなるHIPHOP TEAM、HOSHI、JUN、THE 8、DINOからなるPERFORMANCE TEAMの3チーム、計13人が1つのグループを構成していることから17を意味するSEVENTEENと命名された。楽曲制作から振付に至るまでメンバーが携わっており、2015年5月に韓国で1stミニアルバム「17 CARAT」でデビュー。2018年5月には日本1stミニアルバム「WE MAKE YOU」で日本でのCDデビューを果たした。2023年4月に発表した10thミニアルバム「FML」は7月に累積620万枚の売上を記録し、K-POPのアルバム最多販売枚数における新記録を樹立。8月23日に日本ベストアルバム「ALWAYS YOURS」をリリースし、9月から12月にかけて全国5都市を巡る日本ドームツアーを開催する。