澤野弘之プロデュースのシンガーSennaRinとは何者なのか?その魅力を紐解く (2/2)

テーマは、私たちの住んでいる地球

──シングルの2曲目に収録される「透明な惑星」は、ダークなムードをまとっていた「最果て」とはガラッと違う、温かな印象を携えた1曲ですね。

全然雰囲気が違いますよね。デモを聴いたときに、「わ、すごくさわやかだ!」と思って。澤野さんとご一緒してから歌ってきた曲にはなかったタイプだと思います。ただ、歌詞に関してはかなり皮肉な内容になっていて。テーマは、私たちの住んでいる地球。この星にずっと住んでいたいけど、今のままだったらそれは叶わないよねという歌詞になっています。

──この曲で描かれているような危機感は、普段から感じているものですか?

いや、私はけっこうゆるい方だと思うんですよ。だから自らに向けて書いたところもあったとは思いますね。もっと地球のことを考えなきゃダメじゃない?って。とはいえ、この曲の裏テーマというか、私の中での結末として地球は滅亡しちゃってるんですけどね。結局、みんなが本当の意味で危機感を持って「ヤバい!」と思うのって、地球が滅亡する瞬間なんじゃないかなって。

──それをものすごくキャッチーに歌っているという。

そういう部分も含めて、思い切り皮肉ソングになっています(笑)。ずっと繰り返し聴いていられるキャッチーさを持った曲だと思うので、歌詞をいろいろ読み解きながら何度も楽しんでもらえたらうれしいです。

──本当に中毒性の高い曲ですけど、その大きな要因になっているのがサビに出てくる呪文のようなパートじゃないかなと。「え、何を歌ってるんだろう?」って耳が吸い込まれるというか。

それはうれしいです! 最近、中国語を習っているので、途中で「没有(メイヨウ)」ってワードを使ったりもしました(笑)。全体を1個1個読み解いていくと、要は地球温暖化をはじめとするいろんな課題に対して、「君の答えは何?」ということなんですけどね。

SennaRin

──この言語センスはRinさんならではのものですよね。本当に面白い。

メロディ自体がずっと耳に残るものなので、そこは崩さず、さらに耳に残る言葉を乗せていこうと思ったんです。これがこのまま採用されるとは思ってませんでしたけど。さすがに意味わからなすぎるだろって突き返されると思ってたから(笑)。

──あははは。でもしっかりそのまま採用されて。

はい。澤野さんには「カッコいいじゃん!」と言っていただけました。このパートはバシッと歌えるとめちゃくちゃ気持ちいいんですよ。細かいポイントで言うと、「lie」と「PSI」のあとにブレスを入れるとキレイに聞こえます。ぜひこちらもカラオケで歌ってみてください。

──この曲のレコーディングはどうでしたか?

今までの曲とは違った声が出てるなというのは感じました。ただ、自分としては「どう歌おう?」と細かく考えるというよりは、曲に乗っかって感覚で歌ったらこうなったって感じなんですよね。どの曲に関してもそうなんですけど。この曲を自分なりに分析するならば、地球が滅亡しちゃう歌詞ではあるけど、サウンドは切ない感じではないので、ある種、ちょっと俯瞰で眺めながら淡々と歌った感じなのかな。で、「滅亡しちゃったね」って展開になる大サビはちょっと落とした感じで歌った……というのを感覚的にやりました(笑)。

ずっと聴いてきたメロディに自分で歌詞を付けられる日が来るなんて!

──3曲目には「Missing Piece -WwisH-」が収録されています。これは今年4月にYouTube上で公開された、澤野さんとのスタジオライブで披露されていたものですよね。

そうです。あのスタジオライブはもともと昨年末に澤野さんのピアノソロアルバム「scene」発売記念特番で行ったものなんですよ。なので、もうそろそろ1年経つのかな。今聴くと、ちょっと声が変わってるなと自分では思いますね。しかも澤野さんのピアノと一緒に一発録りしたものなので、そこでの緊張感が伝わってくる音源になってると思います。

──Rinさんは「Missing Piece」に強い思い入れがあったそうですね。

はい。そもそも「Missing Piece」は、ドラマ「マルモのおきて」(澤野が音楽を手がけた2011年放送のドラマ)のサントラに収録されていた「ramdom-E」というインスト曲に英詞を乗せたボーカル曲なんですけど、私は澤野さんに出会う前から「ramdom-E」が大好きでめちゃくちゃ聴いていたんですよ。なので、去年の秋くらいにその「Missing Piece」に日本語詞でカバーしてみないか、というお話をいただいたときは本当にうれしくて。「ずっと聴いてきたメロディに自分で歌詞を付けられる日が来るなんて!」と思いながら一生懸命書いたんですよね。

──歌詞は冬の景色にマッチする切ないストーリーになっています。

mpiさんが歌われている英詞バージョンとは別物でいいというお話だったので、曲から受け取ったものを私なりに書いていった感じです。一度書き上げたあとに、澤野さんからのリクエストを受けて、もうちょっと冬要素を入れた仕上がりにしたという流れもありましたね。

──情景が目に浮かぶ素敵な歌詞だと思います。

ありがとうございます! そういえば、この曲にまつわるエピソードが1つありました。私は歌詞を書く際に、コンセプトというか、登場人物の細かい設定を作ったりするんですよ。この曲のときは“26歳で一人暮らしの男性”みたいな設定を付けて。で、歌詞を澤野さんにお見せする際に、その設定をメモしていた部分を消すのを忘れてしまったんです。それをきっかけにいまだに歌詞を提出するときにいじられるんですよ。「前は26歳で一人暮らしだったよね? 今回はそういう設定ないの?」みたいな。それがちょっと恥ずかしいです(笑)。

──さらに澤野さんとのスタジオライブから「Till I」も収録されています。ちょっとがなるような、ハスキーな歌声が印象的ですね。

そこは澤野さんが私の歌声を褒めてくださるポイントで。「サビのときにがなるような感じがめっちゃカッコいいと思うんだよね」ってよく言ってくださるんですが、最初にそう言ってもらえたのがこの曲を録ったときだったと思います。私はがなろうと思って歌ってなかったんですけど、澤野さんのピアノに合わせて歌おうとすると、そういった声が自然と出てきて。その声を「いい」と言ってもらえたので、自分のボーカルの分岐点になった曲ですね。

──デビューEP「Dignified」に続き、本作でもRinさんの新たな表情をたっぷり堪能できました。ここからの活動も楽しみですね。

念願だったワンマンライブも無事に終わり、最高の1stシングルもリリースできたので、ここからが私もすごく楽しみです。ぐいぐいがんばっていきたいと思っています。SennaRinとして目指す“最果て”に向けて!

プロフィール

SennaRin(センナリン)

福岡出身、21世紀生まれのシンガー。高校生の頃からYouTube上で公開してきたカバー動画が5500万回以上の再生回数を記録する。2022年4月には澤野弘之がプロデュースを手がけた1st EP「Dignified」でメジャーデビューを果たした。6月にサウジアラビアで行われたイベント「ジェッダ・シーズン2022」でキャリア初のライブを実施。8月には東京・国立競技場で開催された「東京2020オリンピック・パラリンピック1周年記念セレモニー」で歌唱した。10月に東京・WWW Xでワンマンライブ「SennaRin 1st LIVE “Dignified~最果て”」を開催。11月にテレビアニメ「BLEACH 千年血戦篇」のエンディングテーマ「最果て」を1stシングルとしてリリースした。