澤野弘之プロデュースのシンガーSennaRinとは何者なのか?その魅力を紐解く

SennaRinの1stシングル「最果て」が11月23日にリリースされた。

作曲家・澤野弘之のプロデュースにより今年の4月にEP「Dignified」でメジャーデビューを果たしたSennaRin。その後は国内外さまざまなステージで歌声を届け、多くのリスナーを魅了してきた。そんな彼女がリリースする1stシングルには、現在放送中のテレビアニメ「BLEACH 千年血戦篇」のエンディングテーマ「最果て」と、地球の行く末をシニカルな視点で描き切った「透明な惑星」、澤野と共演したスタジオライブでレコーディングされた「Missing Piece -WwisH-」「Till I」など全5曲を収録。すべての楽曲の作曲・アレンジを澤野弘之が行い、3曲の作詞はSennaRin(作詞の際の名義は茜雫凛)が自ら手がけている。

音楽ナタリーでは10月に初のワンマンライブを終え、アーティストとしての大きな成長を遂げているSennaRinにインタビュー。デビューから約7カ月の歩みを振り返ってもらいつつ、本作に注いだこだわりをじっくりと聞いていく。

取材・文 / もりひでゆき

先に海外でライブをできたのがすごく大きかった

──今年4月のメジャーデビューから約7カ月が経ちました。その歩みを振り返るといかがですか?

6月にサウジアラビアの「ジェッダ・シーズン2022」というイベントでライブをしたり、7月には急遽、国立競技場で歌わせていただいたり(「東京2020オリンピック・パラリンピック1周年記念セレモニー」)、8月にはカナダのアニメフェス「Animethon2022」に出演させてもらったりと、本当にいろんなステージに立つことができて。デビューしてすぐに貴重な経験をたくさんさせていただけていることには感謝の気持ちしかないですね。

──SennaRinという存在が広く浸透し始めていることも実感しているのでは?

そうですね。私はけっこうエゴサするタイプなんですけど、ネット上で私のことをつぶやいてくださる方がだんだん増えている実感はあります。頻繁につぶやいてくださっているファンの方の名前は自然と覚えちゃってますね(笑)。あと、海外でライブしてからは、英語やアラビア語でのコメントもけっこう増えて。言語や国境を越えて、いろんな反応をいただけるのはすごくうれしいなと思っています。

SennaRin

──10月7日には東京・WWW Xで国内初となるワンマンライブ「SennaRin 1st LIVE“Dignified~最果て~”」も開催されましたね(参照:SennaRin、初ワンマンで「BLEACH」EDテーマや[nZk]カバー熱唱)。

めちゃくちゃ緊張しました(笑)。先に経験した海外でのライブはある意味「緊張の仕方がわからない」みたいな感じもあったんですよ。でも、SennaRinとして作り上げる初めてのワンマンでは、「お客さんが来てくれるんだろうか?」「ちゃんと楽しんでもらえるだろうか?」とかいろいろ考えちゃって、変に気負っちゃってたところがあったんだと思います。ただ、お客さん1人ひとりの表情を見ながら歌っていくことで、その緊張はどんどんほぐれていって。「私の歌を聴いてくれている人は実在するんだ!」という、うれしい気持ちの中でライブを最後まで駆け抜けることができました。ワンマンを経て、「ライブって楽しいんだ!」とより強く思えるようにもなりました。

──ワンマンはRinさんのこれまでの歴史を総括する内容でもありましたよね。

そうですね。SennaRinとしてデビューしてからの曲はもちろん、以前YouTubeの「こもれびちゃんねる」(“茜雫凛”として活動していた頃のYouTubeチャンネル)でやっていたカバー曲もメドレーで盛り込ませていただいたりして。ライブを通してこれまでのいろんなことを振り返ることができたので、ここからまたがんばろうという気持ちも改めて大きくなりましたね。

──ライブでの見せ方も固まってきましたか?

少し見えたところはありましたね。それは先に海外でライブができたのがすごく大きかったと思うんですよ。海外ではすでにお客さんも声が出せる状況だし、皆さんの反応がものすごくダイレクトなんです。それによって意識せずともステージ上を動きながら歌うことができるようになったし、曲ごとに「ここではこう動いて盛り上げよう」みたいなイメージも少し湧くようにもなって。それを踏まえてのワンマンだったので、パフォーマンス面ではあまり悩まなかった気がします。緊張はしていたけど、とにかく楽しめたというか。これからもっともっと楽しくなっていくんだろうなと思ってます。

「BLEACH」とは“同い年”

──そんなRinさんから1stシングルが届きました。表題曲はワンマンライブでいち早く披露されていた「最果て」。現在放送中のテレビアニメ「BLEACH 千年血戦篇」のエンディングテーマとして大きな話題を呼んでいます。

「BLEACH」のエンディングテーマが決定したというお話を、デビューの翌週に聞いたんですよ。メジャーデビューできたことに喜んでいたところに、さらに大きなプレゼントをいただけた感じになって(笑)。海外に行ったときにも肌で感じましたけど、「BLEACH」は世界中で愛される作品ですので「ホントにホントにありがとうございます!」という感謝の気持ちでいっぱいでした。

──「BLEACH」には不思議な縁もあるそうですね。

そうなんです! まず「BLEACH」の原作が始まったのが、私の生まれた年なんですよ。だから同い年! さらに、私はYouTubeで茜雫凛という名前で活動していたんですけど、ある日、「茜雫という名前は『BLEACH』のキャラクターから取ったものなんですか?」というコメントをいただいて。

──2006年に公開された「劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODY」に“茜雫”というオリジナルキャラクターが登場しますもんね。

そうなんです。そのキャラクターのことをそのときは知らなかったんですけど、それをきっかけに「BLEACH」のことをより深く掘っていくようになり、今では大好きな作品になっていったんですよね。映画の茜雫ちゃんは今の私と髪の毛の色も似ているし、今回のお話をいただいたときはいろいろな運命を感じちゃいました(笑)。

──楽曲は澤野弘之さんがプロデュースしています。制作は具体的にどんなふうに進んでいったんですか?

まず澤野さんが「BLEACH」用にデモを何曲か作ってくださって。それを全部聴かせていただいたんですけど、ある曲のデモに“シュン”っていう刀の音のような音が入っていることに気付き、「これだ!」と思って歌詞を付けさせてもらいました。それがこの「最果て」になっていきました。

──トラックのセレクトの決め手は刀のような音だったと。

そうです。勢いのあるサウンドがとにかくカッコよかったし、さらにその刀のような音が「BLEACH」の世界に一瞬で連れていってくれたので、もうこれしかないなと。このトラックにはキャッチーさもあるし、すぐに覚えられるメロディになっているので、たくさんの方に愛してもらえる楽曲になるだろうなという確信もありましたね。

──作詞はRinさんが手がけています。どんなイメージで書いていきましたか?

「BLEACH」の原作を読んだとき、一番記憶に刻み込まれたのが劇中で描かれる精神世界だったんですよ。しかも今回のアニメ「千年血戦篇」でもそこが重要なポイントになってくるところだと思ったので、歌詞はそういったイメージを持って書いていきました。サビをはじめとする疾走感のあるパートでは、黒崎一護や内なる虚(ホロウ)と呼ばれる白一護、斬月が引っ張り合いながら勢いよく落ちていくシーンなんかを想像しながら書きました。けっこういろんな捉え方のできる歌詞になっているとは思うんですけど、私の中では「BLEACH」にどっぷり浸りながら書いたので、ファンの方にそれが届いたらうれしいですね。伝われー!(笑)

──主人公の一護のみならず、いろんなキャラが浮かび上がってくる歌詞でもありますよね。

そうですね。2番の「還らない記憶と影」というところは“死神”をイメージしてるんですけど、そこには茜雫の要素もちょっと入れてみたりして。聴いてくれる方ごとに、フレーズから思い浮かぶキャラクターがいたらいいなという思いはありますね。

──同時に、サビの「果ての果てのその先へ攫えばいい 僕等の未来も 僕等の世界も」という部分は、聴き手を鼓舞するメッセージとして機能している気もしました。

そうであったらうれしいですね。サビはキャッチーであることを意識して書いたところもあるので、いろんなふうに受け取っていただけたらありがたいです。

“カッコいいの頂点”を詰め込むことができた

──そんなこだわりの歌詞が乗ったメロディを表現し尽くすボーカルも素晴らしいなと。澤野さんは楽曲について「前半は“静”、後半は“動”というコントラストを強く押し出せればと考えてアレンジした」というコメントを出されていましたが、ボーカルでもそういったメリハリがしっかりつけられていますよね。

そうですね。AメロやBメロには深くまで落ちていくイメージもあるので、ここは呼吸を意識して歌いました。歌詞的にも「埋もれたまま遠く睨んでる」とか、あまり明るくはない内容になっているので、少し不穏な雰囲気を漂わせる感じで。それとは対照的に、サビでは一気にバーンと広がるイメージを持って歌いました。曲に向き合って生まれる感情や熱量のすべてをここに注ぎ込んだというか。今の自分にできる“カッコいいの頂点”を詰め込むことができたと思います。ラストのサビの展開もめちゃくちゃカッコいいんですよ。絶対、誰もが主人公になれる曲だと思うので、これはぜひカラオケでも歌ってみてほしいです。全員、一護になれます!(笑)

SennaRin

──あと、この曲の重要な要素になっているのが、イントロと間奏に入るスキャットだと思います。あれがあるとないとじゃ印象がまた大きく違ったんじゃないかなと。

そうですね! スキャットが入ったことで雰囲気が大きく変わりましたし、イントロからグッと引き込まれる曲になったんじゃないかなと思います。これは澤野さんからのアイデアで、全部の歌を録り終えたあとに、「スキャットを入れてみたいんだよね」と提案があって。

──へえ! 現場で出たアイデアだったんですか。

スキャットの歌い方は澤野さんとかなりこだわりましたね。「ドゥンスパッドゥン」とか「ドゥンスゥトゥットゥン」とか、あれこれ考えて。下手したらそこに一番時間をかけたかもしれないです(笑)。結果、一番いいテイクが採用され、本当にカッコいい仕上がりになりましたね。ワンマンで歌ったときに強く感じたんですけど、この曲はライブで歌うことでさらにカッコよさが増幅されるタイプだと思うんですよ。私自身、生で歌うとより曲の世界に引き込まれるし。なので、今後もいろんなところで歌い重ねていきたいなと思ってます。