ナタリー PowerPush - スチャダラパー
「3000」と「2011」に込めた思い
スチャダラパーが新作ミニアルバム「3000」をリリースした。このCDは3000枚限定、かつ彼らが主催する特定のライブ会場でしか購入できないというユニークなアイテムだ。
このアルバムは7月3日に日比谷野外大音楽堂で開催された「スチャダラ2011『オール電化フェア』」で初登場。9月19日に行われる大阪城音楽堂のイベント「スチャダラ2011~それぞれの秋~」でも販売される。
今回ナタリーではそんなスチャダラパーの3人にインタビューを実施。独自のスタイルで20年以上にわたって活動を続ける彼らの“現在”について話を訊いた。
取材・文 / 大山卓也 撮影 / 中西求
僕らなぜかメジャー感だけはキープしてるから
──インタビューって最近やってます?
Bose 最近あんまりやんないですね。リリースもそんなにないし。
──ですよね。
Bose てかインタビューってまだあるの? 雑誌とかで?
──あると思いますけど。前作リリースのときはやりました?
SHINCO けっこうやった。一応それなりに。
──今は「余談」(※スチャダラパーが編集人を務めるインディーズ雑誌)もあるし、自分たちでいろいろなことを発信できるから、スチャダラパーはメディアによるインタビューを以前ほど必要としてないのかな、と思ったんです。スチャダラパー自身がメディアになっているというか。
Bose あー、ある種そうかも。例えば以前「ワープトンネル」を配信で出したときは、インタビューを事務所内で勝手にやって自分ちのホームページで載っけて「これでいいんじゃない?」みたいなことやってたしね。これ以上何があるんだって思うもんね。イベントとかも自分らでやって、好きな人たちが出てて、みんな楽しいっていう。
──そういうところも含め、スチャダラパーの最近の活動からはインディペンデントな印象を強く受けるんですよね。昨年の20周年のときは、エイベックスからベスト盤を出したりしていたのに。
Bose やりましたね。カエラちゃんとやったりね。メジャー感あったよね。僕ら元々はかなり小さい範囲でやってる雰囲気があると思うんですけど、なぜかメジャー感だけはキープしてるから(笑)。
メーカー名に「さん付け」すれば大丈夫だった
SHINCO 音源作るってことで言えば、メジャーでやってるかどうかは全く関係ないんだよね。あるとしたら、そのあとの検閲みたいなとこだけ。
──そういうのあるんですか?
Bose 全然あるよね。
──スチャダラパーはそのへんあまり関係ないもんだと思ってました。だって「殺せ!」って歌うわけじゃないし。
Bose 引っかかるのはそういうとこじゃなくてね(笑)。例えばさ、「キヤノンのカメラ」がダメって言われたりするわけ。「ニコンのカメラ」もダメ。そこは「ニコン」って言いたいんだけど。
ANI 「ニコン」具合がいいんだけどねー。
Bose そうそう、そういうの意外とあるよ、メジャーレーベルだと。
──そういうときはどうするんですか?
Bose そういうのを逆手に取ることはよくあるよね。前作った曲で例えば「Under the Sun」って曲は、メーカー名に「さん付け」すれば大丈夫なのかっていうことをテーマに作ってみたら、大丈夫だったっていう(笑)。
──あはは(笑)。そういうもんなんですね。
Bose そういう遊びですよね。メジャーでやってなかったらそういう曲は作ってないかもしれない。
アニメの主題歌やりたかったらメジャーでやってたほうがいいけど
──今はまだエイベックスとの契約はあるんですか?
Bose ないないない。ないから自由に反原発とかも言えるんですけど(笑)。
──じゃあメジャーでやるメリットはもうあまり感じないですか?
Bose 場合によるんじゃない? 例えば木村カエラちゃんとやるっていうのはなかなかインディーズでは難しいと思うし。あとアニメの主題歌とか。「NARUTO」の主題歌やりたかったらメジャーでやってたほうがいい。
──(笑)。「NARUTO」の主題歌、やりたいんですか?
Bose 来ればもちろんやりますけど(笑)。でも今はメジャーってそういうことでしょう、要は。
──じゃあ別にアンチメジャーというわけでもなく?
Bose うん、ずっと僕らメジャーレーベルでやってますし。どっちだろうと良いとこと悪いとこがあるよね。
ANI うちらくらいだったらどっちでもあんまし変わんない的な。
Bose 変わんないっていうか、例えば僕らが次に契約しようってなったときに提示される単純なお金とかね、シビアに計算すると「そんなんでやりたくねえわ」みたいな話ですよ(笑)。そんなくらいに思われてるんだったら結構ですって。
──スチャダラパーは制作費もあまりかからないし、って思われてるんでしょうか。
Bose まあね、でっかいスタジオ使うわけでもないし、僕らほんとコストパフォーマンスは高いですからね(笑)。
CD収録曲
- Bakananova
- ワープトンネル(Feat. ロボ宙 & かせきさいだぁ)
- MURDER MUZIK / THE HELLO WORKS
- A.K.A ETC
- カミングスーン(HIP HOP MIX) / オリジナル・ラブ featuring スチャダラパー
- Shadows Of The Empire(Takkyu Ishino REMIX)
- 41 Is The Number
スチャダラ2011~それぞれの秋~
2011年9月19日(月・祝) 大阪府 大阪城音楽堂
OPEN 13:00 / START 14:00
<出演>
千鳥(総合司会) / スチャダラパー / 田島貴男(オリジナル・ラブ) / TOKYO No.1 SOUL SET / 二階堂和美 / 脱線3 / マキタスポーツ / DODDODO with DJ MIGHTY MARS / and more
スチャダラパー
Bose、ANI、SHINCOによって1988年に結成されたヒップホップチーム。1990年にアルバム「スチャダラ大作戦」でメジャーデビューし、1994年に発表した小沢健二とのコラボシングル「今夜はブギー・バック」が大ヒットを記録する。デビュー20周年を迎えた2010年にはベストアルバム「THE BEST OF スチャダラパー 1990~2010」をリリース。日本のヒップホップシーンを牽引する存在として、多くのアーティストからリスペクトされている。